Appleが日本時間2023年6月6日の朝2時から開催したWWDC 2023で発表された内容をまとめていきます。
この記事の目次
WWDC 2023
WWDCはWorldwide Developers Conferenceの略称で、Appleが実施している開発者向けイベント。約2時間のイベントのアーカイブは上記YouTubeにて確認可能です。
発表内容
1. 15インチMacBook Air
M2チップを搭載したMacBook Airが、従来の13インチモデルに加えて15インチモデルも追加された2サイズ展開に。世界でもっとも薄い15インチノートブックとしています。
ディスプレイ部分は15.3インチのLiquid Retina Displayで、解像度は2,880×1,864。
筐体サイズは1.15cm×34.04cm×23.76cmで、1.13cmの13インチモデルよりも僅かに厚くなっています。重量は1.51kgで、13インチモデルの1.24kgと比べると270gの増量。
予約は本日からApple Storeで受付開始されており、発売は6月13日を予定。価格は198,800円からとなっています。
2. Mac StudioがM2 Max/M2 Ultra搭載に
2022年に登場した省スペースデスクトップPCのMac Studioはチップセットが刷新され、M2 MaxとM2 Ultraから選択可能に。M2 MaxはM1 Maxと比べてAdobe After Effectsのレンダリングが最大50%高速化されています。
M2 Maxモデルは最大96GB、M2 Ultraモデルは最大192GBのメモリが搭載可能になりました。
Mac Studioは298,800円からとなっており、本日から予約受付開始。発売は6月13日から。
3. Mac ProがM2 UltraでAppleシリコンに移行
ハイエンドのデスクトップPCであるMac Proがリニューアルされ、IntelのCPUからAppleシリコンに移行してM2 Ultra搭載に。これでAppleのMacのラインナップに残されていたIntelモデルが全てAppleシリコンに移行完了した事になります。
M2 UltraはMac Studio同様、最大192GBまでのメモリを搭載可能。
7つのPCIe拡張スロットを備え、そのうち6つはgen 4の高速スロット。Thunderbolt 4ポートを8つ、USB-Aポートを3つ、HDMIポートを2つ、10Gb Ethernetポートを2つ搭載。優れた拡張性を持ったモデルとなっています。
Mac Proは1,048,800円から本日予約受付開始しており、6月13日に発売予定。
4. iOS 17
iPhoneに搭載されるiOSの最新バージョン「iOS 17」が発表されました。
電話の体験が大幅アップグレードされ、着信時の連絡先ポスターが設定可能に。連絡先ポスターはCallKit経由でのアクセスが可能で、サードパーティのVoIPアプリでも利用できます。
留守番電話はリアルタイムで文字起こしされるようになり、相手がメッセージを残している間に電話に出たり、着信拒否したりといった事が可能になります。
FaceTimeは相手が電話に出られない時にはビデオメッセージを残す事が可能になりました。
メッセージアプリも強化され、検索フィルターの搭載、リアルタイムの位置情報の共有、オーディオメッセージも文字起こしに対応。安否確認機能も搭載され、目的地に無事に到着したことを確認できるように。一時的に位置やバッテリー残量などを共有することができるようになっています。
AirDrop機能も強化され、連絡先を交換できるNameDropという共有方法が追加。iPhone同士やiPhoneとApple Watchを近づけるだけで連絡先を共有することができます。また、多数のファイルをAirDropで受け取っている際に離れてもインターネット越しに転送を継続したり、SharePlayで同じコンテンツを楽しんだりといった機能強化が図られています。
スタンバイ機能が導入され、充電時にフルスクリーンで情報を確認できるように。ウィジェットなどを設置して表示をカスタマイズすることができます。
MagSafe充電時にはユーザーの好みの表示を記憶し、画面をタップで表示が可能。常時表示ディスプレイを搭載したiPhone 14 Proでは常に利用できます。
新たに「ジャーナル」アプリが登場し、ユーザーは様々なヒントを用いて日記を書くことができます。
撮った写真、位置情報、ワークアウト、聴いた音楽などの情報からその日の活動がサジェストされ、そこから選びながら記録するといったことが可能になります。
Siriを呼び出す際のワードが「Siri」に短縮されます。
iOS 17のデベロッパー向けベータは本日、パブリックベータは来月中に提供予定。アップデートは秋にiPhone Xs以降に配信予定。
5. iPadOS 17
iPadOS 17はロック画面のカスタマイズに対応。時計やウィジェットのカスタマイズができるほか、壁紙にLive Photoを設定してスリープ解除のたびにスローモーションのエフェクトで表示させることができます。
メモアプリが強化され、PDFを取り込んで注釈を加えたり、リアルタイムで共同作業したりすることができるようになりました。
6. macOS Sonoma
次期バージョンのmacOSの名称はmacOS Sonomaとなりました。
美しい映像のスクリーンセーバーが追加され、ログイン関連の項目が画面下部に移動。ロック解除の際にはシームレスにデスクトップに切り替わるようになっています。
ウィジェットがデスクトップに設置可能になり、iPhone上のウィジェットをそのままMac上に設置して使うことができるようになりました。
ゲームモードが導入され、CPU/GPUの優先度を確保。更にBluetoothのサンプリングレートを2倍にすることでAirPodsの音声の遅延やゲームコントローラーの入力の遅延を著しく低減させることができます。
ビデオ会議向けの機能も強化され、画面共有の上にWebカメラの映像から切り抜いた自分の映像をオーバーレイしながら共有することが可能に。このmacOS側の機能はZoomやTeamsといったサードパーティのアプリケーションでも利用可能となっています。
パスワードをグループで共有することが可能になり、家族で共有しているサービスのパスワードなどを同期して使うことが可能になりました。
Safariが強化され、Webアプリケーションをネイティブアプリとしてショートカットを追加できる機能が追加。通常のアプリのようにSafariから独立して使うことができ、プッシュ通知もネイティブアプリ風に表示されます。また、プロファイル機能が追加され用途ごとにSafariのプロファイルを分けてクッキー・履歴・拡張機能・お気に入りなどを保存することが可能になりました。
macOS Sonomaのデベロッパ向けベータ版は本日より、パブリックベータ版は来月より提供予定。リリースは今年の秋となっています。
7. AirPodsがソフトウェアアップデートで強化
AirPods Pro(第2世代)はアップデートで適応型オーディオ、パーソナライズされた音量、会話感知の3つの機能を新しく追加します。
適応型オーディオは周囲の状況に基づいて外部音取り込みとノイズキャンセリングを動的に組み合わせる新しいモードです。
パーソナライズされた音量は機械学習を活用して長期にわたって周囲の状況と好みに合ったリスニングを理解して自動的に音量を微調整します。
会話検知はすぐ位近くにいる人と会話する時、ただ話し始めるだけで背景のノイズを抑えながら音量を下げて目の前にいる人の声を大きくして聞くことができます。
また自動切り替え機能が改善され、Appleデバイス間の切り替えが大幅に高速化します。
AirPods Pro、AirPods(第3世代)、AirPods Maxはミュート機能を搭載し、自分の声をミュートする操作が可能になります。
アップデートはこの秋に無料で配信予定。
8. watchOS 10
watchOS 10はデザイン言語のメジャーアップデートとなっています。
どの文字盤からでもDigital Crownを回すことで直接ウィジェットを表示することができるように。これにより情報量の少ない文字盤でも機能面を両立することが可能になりました。
サイクリングのワークアウトとiPhoneが連動するようになり、自転車にマウントしたiPhoneで速度など様々な情報を大きな画面でモニタリングできるように。
またコンパスアプリは「モバイル通信に接続できる最後の地点のウェイポイント」と「緊急電話に発信できる最後の地点のウェイポイント」を自動的に記録するようになり、通信環境の悪いエリアでのアクティビティでの利便性が向上しています。
watchOS 10は本日よりデベロッパー向け向けベータ版が配信開始され、来月中にはパブリックベータが配信開始。リリースは秋となっており、対象デバイスはiPhone Xs以降にペアリングされたApple Watch Series 4以降となっています。
9. Apple Vision Pro
最後に「One morething…」
Appleが新たに発表した、空間コンピュータ「Apple Vision Pro」のお披露目。
Vision Proは空間上にアプリケーションを投影するARデバイスで、頭に被ることで前方の視界に画面をオーバーレイ表示します。
画面サイズの制約無く、複数のアプリケーションを空間上に自由に配置して操作することが可能。
空間上の操作は視線で座標の移動、手のジェスチャー操作で選択といった組み合わせ。操作に別途コントローラーは使用しない仕組み。
UIは実際にそこにあるかのような質感を持っており、環境光が反映されたり、UIの影が実空間上に落ちたりと、空間との融合を試みています。
本人だけでなく、同じ空間上に居る人間への情報としてEyeSightという外側のディスプレイに使用者の視線を投影する仕組みを導入。
アプリに集中していて本人に周りが見えない場合は、周りからもそれが分かる表示になっています。
また使用者が視界全体を覆うようなコンテンツを出している場合でも、現実空間に人が来ると画面上にオーバーレイされ現れるようになっています。
こちらはSafari。アドレスバーの部分がコンテンツから独立したバーとして浮いたUIとなっています。
コンテンツは2Dだけでなく、メッセージで受け取った3Dのデータをそのままプレビューするといった使い方もできます。
Bluetoothアクセサリとの連携も可能で、Magic KeyboardやMagic Trackpadと組み合わせて使うことができます。
Macとの連携も可能で、4Kディスプレイをそのまま空間上に好きなサイズで設置可能。
Macの画面とVision Pro内蔵アプリを並べて使うこともできます。
空間オーディオと組み合わせたFaceTime通話が利用でき、空間上に通話相手の映像を並べて同じコンテンツをSharePlayで共有したりすることができます。
パノラマ写真を空間上に展開し、臨場感のある鑑賞をすることができます。
空間上で3D映像の再生ができます。
3D映像の撮影はVision Pro本体のカメラを使って出来ます。
仮想的に貸し切りの映画館のような環境を構築して映画鑑賞ができます。
AirPods Proと組み合わせれば飛行機の移動時間も映画館に。
2Dだけでなく、3D映画の鑑賞にも対応。
PS5用DualSenseコントローラーを繋いでApple Arcadeのゲームを大画面でプレイするといった使い方にも対応。
Vision Pro上に最適化されたコンテンツとして、ディズニープラスが発売時から提供されます。
実際に舞台の中で鑑賞するような映画鑑賞コンテンツや、スポーツの試合会場を3Dで手元で確認しながら試合を見ることができるデモなどがお披露目されました。
Vision Proの筐体は可能な限り軽量な素材を採用。
前面は一つの立体形状のガラスで覆われています。
Macのようなユニボディで構成された筐体の下部は冷却用の穴が配置されています。
側面には空間オーディオに対応したスピーカーが埋め込まれています。
眼鏡を使っているユーザーに対してはZEISSとの協業で補正レンズを用意。
バッテリーは電源を繋いで一日中使う事もできるほか、外付けのバッテリーで2時間まで使うことも可能。本体側にバッテリーを内蔵していないため、長時間バッテリー重量を首で支える必要のない設計となっています。
左右の目にはそれぞれ4Kテレビ以上、合計2300万画素のピクセルが割り振られています。
LiDARスキャナーやTrueDepthカメラをはじめセンサー類を敷き詰めており、これによってハンズフリーの操作体験を実現しています。
Vision Pro用に開発されたR1チップは、こういったセンサーのリアルタイム情報処理に特化。入力された映像を12msで出力するので、ラグを感じにくいデバイスとなっています。
Vision Proは使用者の顔をスキャンして3Dのペルソナを作成する事ができます。
作成したペルソナはFaceTime通話などで使う事ができ、ヘッドセットをつけていても対面コミュニケーションを実現しています。
アルファロメオのF1レーシングカーのモデリングのデモ。
空間上で操作できるDJアプリも。
Microsoft Word、Excel、Teamsといった仕事のアプリケーションも用意。TeamsやZoomではVision Proで作成したペルソナを通話に使うことも可能です。
専用アプリだけでなくiPad、iPhone向けのアプリも使用可能。これはiPad向けのAdobe Lightroomを操作している様子。
Vision Pro専用の生体認証として虹彩認証のOptic IDを採用しています。
Apple Vision Proの発売は米国で2024年初旬、その他の国や地域では2024年の後半を予定。価格は3,499ドルとなっています。
以上、WWDC 2023のまとめでした。完全新製品のApple Vision Proをはじめ、ボリュームの大きな発表会だったように感じます。Vision Proはかなり面白そうなデバイスなので、2024年後半の発売に向けて今からお金を貯めておいても良さそうです。