2023年6月14日に発売予定のASUSのポータブルゲーミングPC「ROG Ally(エイライ)」を発売前に店頭で触ってみたので、感じたことをレビューしていきます。
この記事の目次
ROG Ally(アールオージー・エイライ)とは
ROG AllyはASUSがゲーミングブランド「ROG」から2023年6月14日に発売予定のポータブルゲーミングPC。Windowsパソコンのため、SteamなどWindows向けに展開しているプラットフォームのゲームを持ち出してプレイできるのが特徴。
ゲームパッドの間に画面を置いた筐体の中にはCPUに最新のRyzen Z1 Extremeを採用し、ディスプレイは7インチ・1920×1080・120Hzと、ゲーミングPCをそのまま持ち運び可能にしたようなパッケージングとなっています。
Steam Deck、GPD WIN4といった別のポータブルゲーミング機との詳細なスペックの比較は「ROG Ally・GPD WIN4・Steam Deckを比較してみた」の記事にて公開しています。
今回は店頭にて実際に発売前のROG Allyの展示機を触った感想をメモがてら公開していきます。
ROG Allyの実機を触った感想
今回ROG Allyに触る事ができたのは短い時間で、新規にゲームのインストールなども行なっておらず、簡易的にデバイス内のプリインストールアプリを触った上での感想となります。
1. サイズの割に軽く感じる
ROG Allyの重量は608gとなっていますが、実際に持ってみるとカタログスペックよりも軽く感じました。数字だけ見ると11インチiPad Proの重量が468gとなっているので、それよりも140gも重いのは比較的重めのモバイルデバイスに思えますが、横に細長い筐体とプラスチックの丸みを帯びたグリップのお陰か重さはそれほど感じないデバイスとなっています。
2. 120Hzの画面は普通の操作も滑らかで気持ち良い
120HzのディスプレイはFPSのような対人ゲームをやらなければそれほど恩恵は無いものかと思っていましたが、実際に実機を触ってみるとスタートメニューを操作したりウィンドウを最小化したりといったアニメーションが全て普段見慣れたWindowsの60fpsの2倍で動いているのが大変心地良く、普通に普段使いするだけでも気持ち良さそうな部分に感じました。
3. スピーカーは十分にステレオ感あり
ROG AllyのスピーカーはLRのステレオで左右に付いていますが、動画再生を行った感じでは音質は十分にゲーミングPCとして使えそうだと感じました。対人ゲームでは音を頼りに接近を検知したりといった点が重要になる場合がありますが、ROG Allyは低音などマルチメディア鑑賞の迫力はサイズ相応な物の音の出方は悪くなく、ヘッドホンを使わずリラックスしたスタイルでプレイできつつも内蔵スピーカーで十分に遊べそうです。
4. ROG XG Mobileは使い所が限られそう
ROG Allyの上部に搭載されているROG XG Mobileの専用端子ですが、外部GPU+外部モニターでヘビーにグラフィックを駆使するタイトルが遊べる拡張性は面白いものの、実際に使うとなると気になる点もありそうだなと感じました。
まず、専用のROG XG Mobileのボックスはケーブルが非常に短く、また汎用のケーブルのように気軽に延長できる物でもないため、ROG Allyとの組み合わせだと設置方法にやや悩みそうだと感じました。
またROG XG Mobileは定価で下位モデルでも約15万円、上位モデルは約40万円となっており、ROG Ally本体よりも高額。更に内蔵されているのはデスクトップ用ではなくモバイル用グラフィックという事もあり、コストパフォーマンスの高さで話題のROG Allyとは対照的に、かなりロマンにお金を掛ける機材となっています。
コスパ良くカジュアルに使えるROG Allyは比較的広いターゲットに刺さりそうですが、一方のROG XG Mobileのパイはかなり狭そうに見えます。
ただ、ROG XG Mobileのボックス側は豊富なUSB端子、HDMI端子、DisplayPort端子、LAN端子が一通り揃っているのは個人的に惹かれたポイント。ROG AllyのUSB-C単一ポートという弱点をカバーしてくれるデバイスなので、腰を据えてデスクで使うのであれば予算が許せば欲しいアクセサリだと感じました。
5. Windowsとして使うならキーボード、追加端子は欲しい
実際に触ってみて感じたのは、やはりOSがWindowsのデバイスなんだなという事。マウス操作はスティックやボタンなどゲームパッド部分に割り振ってカバーできる部分でしたが、キーボードショートカットが使えない、文字入力がオンスクリーンキーボードのみとなるのはWindowsとしてどうしても物足りなさを感じてしまう部分でした。
この辺りはGPD WIN4との比較でも書きましたが、やはりUMPC(ウルトラモバイルPC)的な魅力をこの手の小型デバイスに感じてしまうギークは充実した端子類や物理キーボード付きの機種の方が幸せになれそうという感じがします。
逆にそういった部分が不要なゲームが主目的なメインターゲットのユーザーにとってはそういった無駄なハードウェアを省いた事でコスト・重量ともに削れているのは喜ばしいポイントとも言えます。
Nintendo Switchからのステップアップに最適
ROG Allyを一通り触ってみて感じたのは、持ち運びのゲーム機としてNintendo Switchからのステップアップ先としておすすめしやすいという事です。
Nintendo Switchは本体だけでカジュアルにプレイできる良いゲーム機ですが、プレイするゲームのジャンルやタイトルによっては満足な体験が得られない場合もあります。
例えばApex LegendsはSwitch版は配信こそされているものの、画質やフレームレートはモバイル版をも下回る最低限のもの。また、原神に至っては予告動画から3年以上経過した今でもリリースにすら漕ぎ着けていない状態となっています。このようなクロスプラットフォームのタイトルでの体験差はPCやPlayStation系が羨ましく感じた経験はSwitchオンリーのユーザーであればあるのではないでしょうか。
ROG AllyであればSwitchやSwitch Liteと同じようなスタイルで持ち運んでゲームがプレイできるオールインワンのデバイスでありながら、120Hzのディスプレイに十分なRyzen Z1 Extremeの処理性能を兼ね備えています。
また、OSにWindowsを採用しており内蔵マイク・ヘッドセット用の端子もあるため、Discordで通話しながら協力プレイしたいといった場合でもROG Ally一つでゲームのプレイ&通話を全てこなすことが可能です。
といった辺りから、ROG Allyは「Switchよりも快適にプレイしたい」「通話も同時に1台で済ませたい」といった願望はあるものの、デスクトップ型の本格的なゲーミングPCを設置する場所が無いカジュアルゲーマーにとってのSwitchからのステップアップ先として非常に良いポジションに居る製品だと感じました。
置き場所に困らない、ゲーミングPC入門機
ROG AllyはWindows用のゲームが快適にプレイできるスペックでありながら、Nintendo Switchのように持ち運べて置き場所にも困らないコンパクトな筐体で、パッケージングとしてはかなり良いとこ取り。
2023年夏に発売予定のROG Gaming Charger DockといったUSB-C接続のアクセサリを使えばテレビに映像出力して無線のコントローラーでプレイするといった据え置きSwitchライクなスタイルも可能なため、自分の遊びたいタイトルがWindows向けに配信さえされていればほぼSwitchの上位互換としてステップアップできるでしょう。
画面付き・ゲームパッド付きで、特に難しいことを考えず、これさえ買えばゲームがプレイできる機種といったオールインワンの性能・内容で109,800円というのは、やはりバーゲンプライスかつ比較的広い層におすすめしやすく感じます。
先駆けのSteam Deckは既にゲーミングPCを持っている人が外にゲームを持ち出すモバイル用サブ機といった印象を受けましたが、このROG AllyはゲーミングPCを持っていない人の一台目のポジションにもハマりそうです。
入門機、と言うには少し贅沢な気もしますが、これからPCゲームを始めたい人には良い機種が出てきたなと感じる製品でした。