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唯一変わったのは、その厚み。不恰好なiPhone 6s用純正バッテリーケース発売で迷走するApple

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iPhone 6s用の純正バッテリー増設ケースがAppleから発売されて話題を呼んでいます。


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画像はAppleが新しく発売した「iPhone 6s Smart Battery Case」というバッテリーを内蔵したケース。Apple Online Storeで既に販売開始しており、カラバリはチャコールグレーとホワイトの2色展開。価格は税別11,800円で、製品のポイントは「Appleによるデザイン」「インターネット利用:LTEで最大18時間」「ビデオ再生:最大20時間」となっており、iPhone 6s単体でのインターネット利用10時間という公称値の1.8倍の電池持ちを実現できる製品となっています。

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しかし見てのとおり、背面にバッテリーを搭載した部分がもっこりと膨れ上がっているのが特徴で、Appleにしてはデザインが酷すぎると話題になっています。


Magic Mouse 2の充電用Lightningポートが底面にあったり、iPad Pro用のApple PencilをそのままLightningポートに挿入して充電する状態が不恰好だったりという画像に今回のバッテリー内蔵ケースが添えられ、2015年にリリースされた最近のAppleのプロダクトに対する皮肉のツイートが数多くリツイートされています。世間のAppleの近年のセンスに対する冷たい視線を感じさせられる反響となっています。

意匠は従来のシリコンケースと変わらず

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Appleは以前から「iPhone 6sシリコーンケース」という純正のケースを販売しています。このケースと今回のSmart Battery Caseを横に並べると、デザインにおける意匠はそう遠くない、同じデザインチームが作ったであろう事が伺えます。このシリコンケースはデザインにこれといった奇抜さは無いものの、実際に持ってみると純正品ならではの心地よさがあり、更に背面のカメラ部分の出っ張りにより卓上でガタつく事も無くなるため、実際の使い勝手としては良くなるアクセサリ。今回のバッテリー内蔵ケースもそういった使いやすさを念頭に置いて作られている事が伺えるデザインで、全体的にふっくらさせるよりかはミニマルに必要な部分だけ盛り上がらせる事でスリムさを確保しつつ、卓上に置いた際の安定感のためバッテリー部分がフラットなデザインになっていると思われます。実際触ってみるまで確信は無いですが、恐らくAppleの考える使いやすさは実現している製品に見えます。

アンテナ問題をケースで克服した過去

もう既に5年も前の話になりますが、AppleはかつてiPhone 4にて初めて金属フレームを採用し、更にそれでアンテナを兼ねるという設計を行ったため、特定の方法でiPhoneを握ると電波感度が悪化するという問題が発生していました。その際問題が大きくなった事からAppleは純正のバンパーケースを発売し、ユーザーに無償で配布していました。ケースは何も付けずにありのままの状態で使うのが一種の美徳主義としてある中で(少なくとも当時のCEOであるスティーブ・ジョブズはケースを推奨するような人間とは思えなかった)、Apple自らがバンパーケースを推奨したことはある意味衝撃的でした。今回の件も製品単体でのユーザー体験が劣っている分アクセサリで補うという意味では通じる物があり、Appleらしからぬ敗北感のある処置に思えます。

iPhone 6sではバッテリー容量が微減している

iPhone 6sは実はiPhone 6から新たにTaptic Engineを搭載してバッテリーの実装面積が減った事から、バッテリー容量が微減している事が分解したメディアによって明らかになっています。ただでさえ他社の競合機種と比べてバッテリーが少ないiPhoneが、更に容量が削減されてしまっている形となっています。その容量は数字にして1715mAhとのことで、3000mAh越えのバッテリー容量が当たり前の近年のAndroidスマートフォンと比較すると半分程度の容量しかありません。iPhone自体バッテリー持ちに関しては容量の割に長持ちする「燃費の良い」機種なものの、やはり物理的にここまで差をつけられていると差は歴然。競合他社のAndroidスマートフォンに対するバッテリー持ちにおける敗北を認めつつ、それに対する答えのひとつが「自社でバッテリー内蔵ケースを出す」事だったのかもしれません。また、iPhone 6s Plusに関しては発売していない事から、バッテリー容量の比較的多いiPhone 6s Plusにはそういった処置は必要ないと判断したのでしょう。

サードパーティと比較したメリット

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仮にiPhone 6s用にバッテリー内蔵ケースを買うとして、他社の製品と比較してみました。税抜価格11,800円、税込価格にして12,744円もするAppleの純正バッテリー内蔵ケースですが、サードパーティからはモバイルバッテリーで有名なcheeroからcheero Power Case for iPhone 6 / 6sが2,620円(2015年12月9日時点)で販売されており、コストパフォーマンスの点では大きく劣っています。また、容量に関しても1715mAhを8割増しにする程度のため1400mAh弱のスリムな物が内蔵されていると予想される純正バッテリーケースですが、cheeroの物は3000mAhの大容量を搭載。単純にコストパフォーマンスの点で見れば、何倍もの大きな格差があります。

そんな中でApple純正品を選ぶメリットは何なのかと考えると、やはり製品説明にあるとおり「Appleによるデザイン」しか無いのではないでしょうか。サードパーティーの5倍ほどの価格で半分しか容量の無い純正バッテリー内蔵ケースですが、容量が少ないという事はつまりスリムに設計されており、持ちやすさに直結します。毎日使うものなので、やはり持ってみて使いやすければ選択肢になるのではないでしょうか。安いサードパーティの大容量バッテリーをむやみにケースとして装着したところで、使いづらくなってしまってはそもそもの高級品のiPhone 6sが台無しですから。

また、純正品ならではのメリットとしてiPhone 6s本体と同じLightningケーブルで充電できること、純正卓上ホルダのLightning Dockと互換性がある事、及びOSレベルでの連携が挙げられます。最近はLightningケーブルで充電できるモバイルバッテリーもサードパーティから発売されたりしているものの、やはり主流はmicroUSB。今回のcheeroのバッテリーケースもmicroUSBのため、普段iPhone用に使っているLightningケーブルでは充電できず、Lightning Dockも使えないということになります。純正のドックは毎日本体を充電するにあたって非常に便利なため、どうしても純正ドックで統一したいといった場合はこれしか選択肢が無さそうです。またiPhone 6s Smart Battery CaseはOSレベルでの連携が組み込まれており、製品説明ページによると「Smart Battery Caseを装着すると、バッテリーの状態を示すインテリジェントな表示がiPhoneのロック画面上と通知センターに現れるので、バッテリー残量が正確にわかります。」とのことで、Apple WatchやApple Pencilのように通知センターでバッテリー残量がわかるのもサードパーティーにはないメリットとなっています。

クールさを捨てて実用性を提供し始めたApple

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オチの画像でiPhone 6sの「唯一変わったのは、そのすべて」のキャッチコピーをもじって合成してみたところ中々それっぽく見えてしまって悔しいのですが、充電式の利便性を取って不恰好な形での充電になってしまったMagic Mouse 2やApple Pencilしかり、今回のバッテリー容量不足を補うための純正ケースしかり、Appleは完全主義を捨てて妥協点を見つけた補助的な製品を出していく方向に舵を切ったように見えます。そういった方向性を歓迎するユーザーを一人でも引き込めるのであれば成功ですし、こういった妥協アクセサリが気に入らないのであれば買わなければ良いだけの話、なのですが、怖いのはこういった製品ありきのラインナップになってしまうのではないかというところ。実際既にiPhone 6以降のiPhoneはケースを付けなければ卓上にフラットに置けない補助輪ありきの自転車になりつつあり、今後もその方向性が強化されていくとは考えたくないですね。

Apple製品の純正アクセサリとしてはiPadシリーズの風呂蓋ことSmart Coverが非常に気に入っており、iPadの魅力を引き立てつつ損ねない、iPadに添える最高のアクセサリだと思っています。今後もAppleはそのような魅力的な、最適解を考え抜いた、クールなアクセサリを設計してほしいものです。

追記:The Vergeから早速動画レビューが公開されています。

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