360度カメラの「Insta360 X3」「GoPro MAX」を実際の作例を交えて画質・音質・使い勝手を比較

360度カメラのInsta360 X3GoPro MAX、両方しばらく使ってみたので実際の作例や使用感を元に2つのカメラの比較しつつ、それぞれのおすすめポイントを紹介していきます。


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2つのレンズで全方位撮影できる360度カメラ

Insta360 X3とGoPro MAXはどちらも2つの前後のレンズで360度撮影可能なカメラ。どちらも基本的な原理は全く一緒で、2つの超広角の映像を継ぎ合わせる事で全方位の映像が作れるため、PC・スマートフォンの編集アプリから撮影後に好きな部分を切り出してカメラの方向・画角の広さを決定できるのが特徴。

360度カメラは撮影後にカメラワークを自由に編集できることから従来は難しかった表現が簡単に実現できるようになったのはもちろんのこと、三脚などのアクセサリを組み合わせる事でカメラマンの居ない一人旅でもカメラマンの撮影したかのようなカメラワークの映像を撮る事が可能です。

従来はバイク映像などモータースポーツ、ウィンタースポーツなどで使われるイメージが強かった360度カメラですが、最近では星街すいせいの「ビビデバ」のミュージックビデオでも360度カメラが使われたりと、活躍の場が広がっているのを感じるジャンルの製品です。

今回は個人用360度カメラとして知名度の高い「Insta360 X3」と「GoPro MAX」の2台をGoProは2019年から、Insta360は2023年から一定期間使ってみたので、実際の使用感などを踏まえて2台を比較していきます。

Insta360 X3とは

Insta360 X3は、Arashi Vision社のInsta360ブランドで2022年9月から販売されている360度カメラ。

Insta360はブランドに360と入っているとおり2014年創業の後発メーカーながら360度カメラで名を馳せたブランドで、2016年発売のiPhoneのLightning端子に取り付けるInsta360 Nano、2018年発売の縦型アクションカメラ形状のInsta360 ONE Xと着実に進化を遂げて現在の製品に至っています。

Insta360 X3はInsta360 ONE X、ONE X2、X3とシリーズ3代目となる製品で、センサーサイズ向上・最大ビットレート向上・マイクの音質改善・バッテリー容量増量などがブラッシュアップされています。

映像に関しては伸縮可能な「見えない自撮り棒」を1/4インチネジの穴に装着する事で自撮り棒を2つの映像の狭間に消し去って360度映像を撮影できるのが特徴で、純正・サードパーティから用意されている各種アクセサリも映像に映らないよう配慮されているものが多く、外部マイクを映像から隠しながら増設できるマウントなども用意されています。

多くのアクションカメラのように輪状のプレートを挟む2プロングマウントで固定するのではなく1/4インチネジ穴で固定するため、変換アダプタを噛ませる事なく三脚や一脚などスチルカメラ用の撮影アクセサリが使えるのも特徴的。

360度動画は最大5.7K(5760×2880)30fps、4K(3840×1920)60fps、3K(3008×1504)100fpsでの撮影が可能で、Insta360 Studioから任意の解像度で切り出して書き出しが可能。

シングルレンズでも4K(3840×2160)30fpsでの撮影が可能で、解像度を3.6K(3584×2016)まで下げれば60fpsでの撮影にも対応。360度映像だけでなく、通常のアクションカメラとしてもオールラウンドに使える性能です。

価格は2024年4月から価格改定され、68,000円から60,520円となりました。

GoPro MAXとは

GoPro MAXは2019年に発売されたGoProの360度アクションカメラ。

言わずと知れた2002年創業のアクションカメラの代名詞「GoPro」から2017年に登場・2018年に日本で発売された初代360度カメラ「GoPro Fusion」の後継機で、小型化・高性能化に加えてFusionでは前後レンズの映像を2枚のmicroSDカード別々に保存する仕組みで面倒だった点が解消され、実用的に使える360度カメラとなっています。

2019年10月の発売以来後継モデルが登場する事なく継続販売されており、2024年の4月現在も現行ラインナップとしてGoPro HERO12 Blackなどのシングルレンズのアクションカメラと共に販売され続けています。

Insta360 Xシリーズのようなこまめな新モデル展開は無いものの、発売時点でほぼ一通りの機能が揃っており、マイクの収音性能は発売から4年半経った現在でも優秀。

シングルレンズでの撮影は最大1440pとなっており、360度映像に関しては2019年の発売当初は5.6Kで撮影された全体の映像から最大FullHD(1920×1080)までの書き出しにしか対応しなかったものの、発売後に配信されたアップデートにて4K(3840×2160)へアップスケールした映像の書き出しにも対応しています。

価格は2024年4月現在、61,000円で販売されています。

画質・マイクの音質を比較

まず、Insta360 X3とGoPro MAXの2台を撮影の品質の面から比較していきます。

映像スティッチングはInsta360 X3の方が高精度

2つの映像を継ぎ合わせて360度の映像にするスティッチング処理を2つのカメラで比較してみました。

2台のカメラを車載した車両のボディの継ぎ目がInsta360 X3では綺麗に一つの映像として合成されていますが、GoPro MAXは継ぎ目がズレていることが分かります。遠くの景色の場合は気になる事はほぼ無いものの、近くの被写体が前後のカメラの境界線を跨ぐと映像が不自然になりやすい傾向にあります。

この点は前後のカメラの軸がオフセットされているGoPro MAXに対し、完全に前後カメラの軸が揃っているInsta360 X3に分がありそうです。

マイク音質はGoPro MAXの方が臨場感のある音

一方、マイクに関してはGoPro MAXが6つ、Insta360 X3は4つ搭載。

上記の音質比較の動画ではInsta360 X3が方向性強調設定、GoPro MAXが360度+ステレオ収録かつウィンド低減を自動に設定して撮影していますが、GoPro MAXの方がザクザクと雪を踏む音が臨場感あるサウンドになっていると感じます。

Insta360 X3はUSB端子から外部マイクを入力するためのアクセサリが別売で用意されていたり、AirPodsなどのワイヤレスイヤホンを音声入力デバイスとして使ったりといった拡張性は備えているものの、本体のマイクからの収録音質の迫力を求めるのであればGoPro MAXの方が適していると言えそうです。

写真撮影はInsta360 X3が圧勝

こちらはGoPro MAXの360度写真からGoPro Playerを使ってエクスポートした写真。後述するInsta360 X3の作例と比べると細部が潰れており、空の階調の段が見え、精細感に欠ける印象です。

こちらがInsta360で72MPモードで撮影した360度写真から同じ画角を切り出したもの。360度写真から切り抜いた写真であるにも関わらずディテール感が高く、最近のスマートフォンで撮影した写真と言っても疑われなさそうな自然な写真と言えるでしょう。

写真を撮るのであれば、Insta360 X3の方がおすすめできそうです。

画質はInsta360 X3がディテール感があるものの、GoPro MAXの表現も魅力

画質の比較のため、Insta360 X3とGoPro MAXを並行して撮影した作例が以下のとおり。それぞれ自動の360度動画から近い画角を切り抜いてエクスポートしたものです。

こちらがInsta360 X3。

そしてこちらがGoPro MAX。

Insta360 X3の方がディテールがやや細かくは見えるものの、GoPro MAXは青空の階調表現がナチュラルで、撮りたい映像によって好みが分かれそうな写りとなっています。

画角を狭く切り抜いたカメラワークをしたい場合はInsta360 X3の方がより実用的なクロップ耐性があるのでおすすめになってくるものの、広範囲を映すのであればGoPro MAXの表現力も魅力的に感じます。

実際の使い勝手を比較

続いて、Insta360 X3とGoPro MAXの実際の使い勝手の面を見ていきます。

アプリはInsta360が圧倒的にお手軽

アプリ連携に関してはInsta360 X3・GoPro MAXともにスマホ向けに配信されているアプリでカメラの撮影操作やリフレーミング編集での画角の切り出しなどは可能ですが、利便性で言えばInsta360が圧倒的に便利だと感じています。

GoProからiOS/Android用に配信されている「GoPro Quik」アプリは設計として撮影データを一旦アプリにダウンロードしてから編集する事を前提にしており、カメラ内に保存されているデータのプレビューは可能なものの、編集に進むためには一旦アプリ側へダウンロードが必要です。

一方「Insta360」アプリはInsta360 X3のカメラ内に保存されているデータを直接編集・リフレーミング・書き出しが可能で、撮影したデータ全体をスマホにダウンロードする必要無く、切り出したい部分だけをエクスポートしてすぐシェアする事ができます。

GoPro MAXはWiFiの転送待ちが長くスマホ本体側にも同期用に大容量のストレージが必要な事から、スマホでの利用は腰が重くなってしまいがち。一方のInsta360はスマホ側に全データのダウンロードは不要で、かつWiFi接続でもサクサク操作できる事から、撮影してすぐにSNSにシェアしたりといった事が手軽にできます。

例えるならば、音楽を追加するために都度PCとケーブル接続してライブラリの同期が必要なiPodと、全音楽がストリーミングですぐ再生可能なApple Musicと同じぐらいの利便性の差を感じます。

出先で手軽にスマホから書き出しを行いたいのであれば断然Insta360がおすすめです。

PCアプリもInsta360が高機能

Insta360、GoProはそれぞれWindows/Mac向けに「Insta360 Studio」「GoPro Player」を配信しておりどちらもPCの大画面でリフレーミング編集を行う事ができますが、使用感は全く異なります。

GoPro PlayerはMacのQuickTime Playerのようなスタイルでシングルウィンドウで360度動画を開いて編集できるアプリで、一通りのトリミング・リフレーミングがウィンドウひとつで完結するシンプルなアプリケーション。

一方Insta360 Studioは複数の撮影ファイル・フォルダを一括で取り込んで編集できる仕組みで、更に2024年3月に配信開始されたバージョン5.0.0からは編集機能が大幅強化。BGM・テキスト・トランジションを追加してタイムライン上で一つの動画として繋ぎ合わせる事ができるようになり、単体で動画編集ソフトとして完結するようになりました。

360度カメラならではのトランジションもワンクリックで追加する事ができ、従来は手動の手の込んだリフレーミング作業が必要だった2つの360度映像のカメラワークを合わせて滑らかに繋ぐエフェクトが初心者でも簡単に使えるようになりました。

またAIによる被写体の自動トラッキング機能も搭載しているため、特定の被写体を常に追いかけるような映像であれば非常に少ない手間でカメラワークを追加する事が可能です。

PCでの編集の利便性もInsta360が大きくリードしていると感じました。

すぐ撮影できるのはGoPro MAX

実際に撮影でInsta360 X3とGoPro MAXを並べて使ってみると、撮影ボタンのレスポンスは圧倒的にGoPro MAXが速く感じました。

撮影開始・終了ともにGoPro MAXはすぐに反応するものの、Insta360 X3は処理が重いのかワンテンポ遅れて反応しており、電源オンの状態でも撮り始めるまでに3秒ほどかかります。GoPro MAXは1秒かからない程度で撮影開始されるので、並べて使うと全くレスポンスが違うのが分かります。

基本的に回しっぱなしで使う事が多いであろうカメラではあるものの、突発的に撮りたい被写体が出てきた時にシャッターチャンスを逃しにくいのはGoPro MAXと言えます。

画面のプレビューはGoProがやや有利

360度カメラは後からリフレーミングで画角はいかようにも編集できるのでプレビューで画角を確認する重要性は下がっているものの、やはり映像のイメージを掴むためには重要なポイント。

GoPro MAXは横長画面のため横長動画の仕上がりがイメージしやすく、逆にInsta360 X3はInstagramやTikTokなどに向けた縦長動画のイメージが掴みやすい縦長の画面。この辺りは使い方や好みによるところではあるものの、個人的には横長ディスプレイを搭載するGoPro MAXの方が分かりやすいと感じました。

またInsta360 X3はタイムラプス撮影中のプレビューが表示されない仕様ですが、GoPro MAXは撮影中も確認が可能といった具合に細かい違いもあります。

用途にも左右されてくるものの、プレビューはGoPro MAXが個人的に使いやすく感じました。

GoPro MAXは着脱可能なレンズカバー・レンズキャップが付属

360度カメラを使っていて気を使うのが、レンズの保護。表裏の両面に飛び出したレンズが配置されているためダメージを受けやすく、傷付けてしまうと映像に直接影響が出てしまうためしっかり保護したいところ。

GoPro MAXは標準で保管用のレンズキャップ、および撮影にも使える透明のレンズカバーが付属し、いつでも着脱が可能。カバーは強い光が当たると映像に影響が出やすいため不要な時は極力外して使いたいですが、着脱可能な構造になっているため手軽に外せるのが嬉しいところです。

Insta360 X3は純正のレンズガードが別売されているものの、粘着シートで装着する形となるため付属の3セット限りの着脱しかできず、撮影の都度着脱するには向きません。

形状的にもGoPro MAXはレンズを接地させずに置きやすい形な一方で、Insta360 X3はレンズが接地面に当たりやすいため取り扱いには注意が必要。

総合的にGoPro MAXはInsta360 X3よりもレンズのケアがしやすいカメラとなっています。

Insta360 X3・GoPro MAXの比較表

最後に、Insta360 X3とGoPro MAXのスペック的な違いも比較表にまとめます。


Insta360 X3

GoPro MAX
発売 2022年9月 2019年10月
マウント方法 1/4インチネジ 2プロング
360度動画 最大5.7K/30fps
120Mbps/80Mbps
最大5.6K/30fps
60Mbps
通常動画 最大4K/30fps 最大1440p/30fps
HDR アクティブHDR ×
360度写真 72MP 16.6MP
重量 180g 154g
マイク 4つ 6つ
バッテリー 1800mAh 1600mAh
防水 水深10mまで 水深5mまで
価格 60,520円 61,000円

発売時期が約3年離れているという事もあり、Insta360 X3はGoPro MAXと比べてスペックシートを見比べても強力。360度動画は解像度こそ大きく変わらないものの、Insta360 X3はGoPro MAXの2倍の余裕のあるビットレートで保存ができるためクロップ前提の360度カメラとしてはより実用的になっています。

シングルレンズモードで普通のアクションカメラとして撮影する場合もGoPro MAXは1440p上限のところ、Insta360 X3は4K撮影が可能。個人的にこの点に関しては数年前にGoPro MAXをメインで使っていた頃は4K撮影のために別のシングルレンズのGoProを使っていましたが、Insta360 X3を使い始めてからは1台で完結できるようになったのが嬉しいところでした。

Insta360 X3はアクティブHDRにも対応しているので、たとえば車載映像を撮影する際に車内と車外で明暗差が非常に大きい車内からの撮影などでは大きな差が出る機能となっています。

Insta360 X3とGoPro MAX、どちらがおすすめか

最後に、総括としてInsta360 X3とGoPro MAXそれぞれのおすすめポイントをまとめていきます。

Insta360 X3は旅好きやSNS好きには特におすすめ

Insta360 X3は360度カメラとして成熟しており、スマホ・PCアプリの使い勝手も良いため、万人におすすめしやすい360度カメラです。

撮影方法も「見えない自撮り棒」を伸ばして録画するだけでインパクトのある映像が撮れるため初心者にも最適で、スマホアプリから素早く簡単に切り出してSNSにシェアできるのでとにかく投稿までのハードルが低いのが特徴。InstagramやXなどのSNSへのシェアが好きな方には使い勝手は抜群に良いカメラです。

モータースポーツやウィンタースポーツなどの本格的なアクションシーンに投入する機会が無い方であっても、カジュアルに旅行の思い出を360度で保存するのに使い勝手が良く非常に適しています。動画だけでなく写真にも強いので、旅先の景色を360度で残すのにもおすすめ。

なお、Insta360 X3は公式サイトで購入すれば特典として必需品の純正アクセサリ「見えない自撮り棒」が手に入るので、おすすめの購入先となっています。

GoPro MAXは臨場感あるハードなアクションを撮りたい方におすすめ

GoPro MAXは発売から年数が経っているため今買うのであれば基本的にInsta360 X3がおすすめではあるものの、マイクの収音性能やレンズ保護といった点は未だリードしており、これらに魅力を感じるのであればあえてGoProを選ぶ理由になるでしょう。

特にレンズ部分の破損リスクが高くなる2輪・4輪などの乗り物への車載や、排気音・環境音の臨場感のある収録といった用途ではGoPro MAXは最適。GoPro Premiumのサブスクリプションに加入しておけば年2台までの本体交換ができ4枚1,250円(1枚あたり312.5円)の低価格で保護レンズを買い足す事もできるので、ハードに酷使するシーンに投入する場合のサポートも充実しているのが魅力です。

Insta360 X3のようにカジュアルに撮って出しでシェアする機能は弱いものの、既にアクションカメラや動画編集に慣れていて、360度カメラでしか撮れない撮影のバリエーションを広げる機材を探している方であればこちらを検討しても良いのではないでしょうか。

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キリカ

ガジェットショットを作った人。本業はUI/UXデザイナー。趣味は理想のデスク環境作り、愛車「エリーゼ」「ジュリエッタ」でのドライブ、車旅を動画・写真に残す事。