AndroidとeSIM/物理SIMスロットを内蔵し、CarPlay規格を経由して車の画面上で操作できるデバイス「OttoAibox P3」を評価用にメーカーのOttocast(オットキャスト)から無償提供いただいたので、使用感を紹介していきます。
この記事の目次
OttoAibox P3とは

このOttoAibox P3という製品の「CarPlay経由でAndroidが使える」というのは一見何なのか分かりにくい概念ですが、その体験としては「車のタッチパネルをAndroidタブレット的に使える」というもの。特徴をまとめると以下のとおり。
- 本体にAndroidを内蔵
- CarPlay規格を通して車に接続し、映像出力&操作が可能
- eSIM/物理SIMスロットを搭載し、データ通信が可能
一言で言うと、CarPlay出力を搭載した画面無しAndroid端末です。そのため、Apple CarPlayやAndroid Autoに縛られず通常のAndroid端末同様にAndroidアプリが自由に使えるのが特徴。
Android端末の映像出力&タッチ操作を実現するためにCarPlayの接続規格を利用しているだけなので、車のカーナビ・ディスプレイオーディオがCarPlay接続に対応していればiPhoneは不要。言い換えると、大掛かりな取り付け作業無しでAndroid内蔵ナビと同等の事をUSB端子へのポン付けで実現できるとも言えるでしょう。
最近の車はUSB接続によるCarPlayに対応しているものがほとんどになってきているので、それらにOttoAIbox P3をUSBケーブルで接続すればそのまま画面上でAndroidが使えるという格好になります。
そのままAndroidタブレットを車載したかのような使用感が得られるので、左右画面分割をしたり、任意のAndroidアプリを使ったりといった事が可能。左にApple Music、右にGoogleマップといった画面分割も可能になり、CarPlayと比べると出来る事の幅が大幅に広がります。
本記事では、実際にこれを取り付けて使ってみた使用感を紹介していきます。
また今回レビューにあたって読者用の割引コード「AFB10」を頂いており10%割引の43,919円で購入が可能となっていますので、購入の際は是非ご活用ください。
パッケージ内容

こちらがOttoAibox P3のパッケージ。コンパクトな箱にまとまっています。

パッケージ内容はシンプル。Androidが内蔵された本体のほか、CarPlay接続用のUSBケーブル、および電源確保用のUSB分岐ケーブルが付属。CarPlay接続端子がUSB type Cの車であればケーブル1本の直結で電源まで完結する場合がありますが、端子がUSB type Aの場合は別のUSB充電端子から電源を取れるようケーブルが付属します。
またHDMI出力用のアダプタも付属しており、後部座席にモニターの設置されている車であれば後部座席でYouTubeやNetflixを楽しむといった使い方もできるようになっています。
OttoAIbox P3のスペック
まず、今回紹介するOttoAIbox P3のスペックをエントリーモデルのOttoAIbox P3 liteと比較しつつ見ていきます。
![]() OttoAibox P3 | ![]() OttoAibox P3 Lite | |
---|---|---|
OS | Android 12 | Android 12 |
CPU | Snapdragon 665 | Snapdragon 665 |
RAM | 8GB | 4GB |
ストレージ | 128GB | 64GB |
microSD | 最大256GB | 最大256GB |
SIMカード | nano SIM | nano SIM |
eSIM機能 | あり | あり |
HDMI出力 | あり | なし |
価格 | 60,999円 | 36,999円 |
OttoAibox P3はエントリーモデルのOttoAibox P3 Liteと比べてRAMとストレージが2倍になっており、HDMI出力にも対応しています。
P3の上位モデルとしてのメリットは余裕のあるRAMで複数のアプリの同時使用が快適になる他、ストレージも大きくなりHDMI出力にも対応するため音楽・動画などのマルチメディアファイルをオフラインにダウンロードして後部座席で楽しむといった使い方にも最適となっています。
OttoAIbox P3の外観

こちらがOttoAIbox P3の本体。コンパクトな円形の筐体となっっており、質感は高め。

側面には外部ストレージ用のmicroSDスロット・nano SIMスロット、給電&CarPlay接続用のUSB type Cポート、追加の映像出力用のminiHDMI端子が搭載されています。

microSD・SIMスロットにはカバーが搭載されており紛失リスクは少なそうです。

背面は通気性・放熱性の良さそうな形状をしています。

CarPlay搭載車への取り付け

OttoAIbox P3はCarPlay規格を経由して繋がるため、基本的にCarPlay対応のナビ・ディスプレイオーディオにUSBケーブルで接続するだけで取り付けは完了します。
標準でUSB type C接続のナビ・ディスプレイオーディオであればそのままケーブル1本での給電が可能なので、別途給電は不要。USB type A接続のものであれば、付属の分岐ケーブルを使って片方をナビ・ディスプレイオーディオ、片方をUSBカーチャージャーなどに接続して電源を取る必要があります。

今回はアルファロメオジュリエッタに昨年取り付けた2DINディスプレイオーディオのALPINE DA7ZのCarPlay用のUSB端子に取り付けてみました。
OttoAIbox P3自体はUSB接続するだけで問題なく使えますが、CarPlay接続用・給電用の2本のケーブルが車内に常時垂れていると気になるので、今回はヒューズボックスからのUSB給電・ディスプレイオーディオへのCarPlayのUSB接続を全てパネルの裏に隠して取り付けてみました。
OttoAIbox P3は本体に物理ボタンが無く、操作は全て出力先の画面のタッチパネルで完結できるため、このように車の中に取り込んでしまっても問題なく使用可能。またCarPlay接続でエンジン始動時に自動で立ち上がるため、あたかも標準で車にAndroidが搭載されているかのような挙動になるのでDIYに抵抗のない方であればおすすめです。
また今回はワイヤレスCarPlay対応のハイエンドモデルのDA7Zを使用しましたが、OttoAIbox P3は有線によるCarPlayで接続するため、接続側のディスプレイオーディオはベーシックなもので問題無し。むしろOttoAIbox P3自体にワイヤレスCarPlay・ワイヤレスAndroid Autoのレシーバーアプリが内蔵されているので、同じALPINEの「DA7」などワイヤレスCarPlay非対応のエントリーモデルと組み合わせたほうが本領を発揮します。
使用感はAndroidそのもの

デフォルトでのホーム画面はこういった状態。ナビゲーションバーと各種ピクトが右側(設定で左右変更可能)に集約されている事を除けば、普通のAndroidスマートフォン・Androidタブレットと同様の操作感で使う事ができます。
ホーム画面は一般的なAndroid端末と同様にカスタマイズ可能で、任意のウィジェットやショートカットを設定する事が可能。データ通信機能も内蔵されているため、天気情報をウィジェットで確認しつつお出掛けするといった事がアプリを起動せずとも実現できます。
GoogleマップはAndroid版のUIで使えて便利

OttoAIbox P3はAndroidアプリそのままのUIでアプリが使えるため、GoogleマップなどもCarPlay版やAndroid Auto版と比べると制限の少ないUIで利用可能。
特に一度設定したルートを別ルートに切り替える際などはCarPlayでは候補のリストから選ぶ必要があるのに対し、OttoAIbox P3上のAndroid版はワンタップで切り替える事ができるため、操作性としてはCarPlay版よりかなり便利に感じます。
またCarPlayを使う場合は助手席の人間がCarPlay接続して行き先を設定してしまうとiPhone側のGoogleマップアプリの画面は道順のリストに固定されてしまい行き先周辺の地図を調べられませんが、OttoAIbox P3を使えばiPhoneが自由に使えるようになるため調べごとの際の使い勝手も良くなりました。
Amazonプライムビデオなどの動画サービスも対応

自動車に最適化されたApple CarPlayやAndroid Autoは実行できるアプリに大きな制約があり、対応しているアプリと行える操作は非常に限られています。例えばAmazonプライムビデオやYouTubeなどの動画アプリはiPhoneにインストールされていてもCarPlay上には表示されず、動画再生はできません。
実際、自動車の走行中にAV機器に表示された画像や動画を運転者が注視したり、ナビ操作を行うことは道路交通法により禁止されています。そのため停車中に操作するか、走行中は同乗者が操作する必要があります。CarPlay/Android Autoはこのような規制に強く影響を受けた内容となっています。
一方のOttoAibox P3は通常のAndroidアプリをそのまま使えるため、停車中にYouTubeを再生したり、長旅で走行中に同乗者がAmazonプライムビデオの映画を楽しんだりといった事が可能です。
またHDMI出力機能も搭載されているので、ミニバンなどのファミリーカーであれば走行中に助手席の操作で後部座席のモニターで子供向け動画コンテンツを再生するといった使い方にも対応できます。
内蔵ストレージも128GBと余裕を持って搭載されているので、長時間の動画ストリーミングによる通信量が気になる方であれば家のWiFiでOttoAibox P3に映画・動画を何本もダウンロードしておき、移動中や出先でオフライン再生して楽しむといった使い方も可能です。
ワイヤレスのCarPlay/Android Autoレシーバーも搭載
OttoAibox P3は「MultiPlay」というアプリをプリインストールしており、CarPlayやAndroid Autoをワイヤレスで受信できるレシーバーとして使う事ができます。そのためAndroidアプリでなくCarPlay/Android Autoを使いたい場合はこのMultiPlayアプリを使えばどちらのメリットも良いとこ取りが可能。
また多くの車種はUSB接続による有線のCarPlay/Android Autoにしか対応していませんが、OttoAibox P3を経由する事によってワイヤレスCarPlay・ワイヤレスAndroid Auto接続が可能になります。
日常的なナビゲーションや音楽再生はスマホで操作できるワイヤレスCarPlay/Android Autoで行い、それらでは使えないアプリを使う時だけOttoAibox P3のAndroidアプリを使うといった使い分けも便利。
またMultiPlayの他「BT Audio」というBluetoothオーディオレシーバーアプリも内蔵されており、こちらを使うとiPhoneやAndroid、他の音楽プレイヤーからの音楽の出力を車のオーディオで再生する事も可能。ナビゲーション機能はAndroidに任せ、裏のカーオーディオはスマホから再生するといった併用もできるのが面白いところです。
左右の画面分割も可能

通常のAndroid端末と同様、戻るボタンを長押しで左右別々のアプリを使う事が可能。Apple MusicやSpotifyなどの音楽プレイヤーとGoogleマップをサイドバイサイドで使ったりと、CarPlay/Android Autoでは実現できない画面構成が可能になります。
また、私は固定式オービスが道内1箇所しか無い北海道に引っ越してしまったため滅多に使わなくなりましたが、本州であればオービス警報やオービスガイドといった速度取り締まり地点のガイドアプリをナビアプリと並行して常時出しておけるようになるのも便利。慣れない土地への遠出では地元民の車の流れと制限速度に乖離が大きい地域もあるので、そういった場所で道案内と速度規制情報を同時に出しておけると安全に旅できて心強いです。
他にもマップを出したままPerplexityのAI検索の音声アシスタントを同時表示してルート案内中に音声で話しかけて調べごとをしてもらったりと、様々な活用ができます。
nanoSIM/eSIM対応でデータ通信がテザリング無しで可能

OttoAibox P3はnanoSIM・クラウドSIMによる4G/3Gデータ通信機能を内蔵。
ウィジェットからはnano SIM・内蔵のクラウドSIMを切り替える事ができる他、WiFiホットスポット機能の切り替えも可能。スマホのテザリングを使う事も可能ですが、データ通信方法を設定しておけば単独でデータ通信ができるのは非常に使い勝手が良いポイントです。
OttoAIbox P3をWiFiルーターとして使い、車内で家族がインターネットを使って楽しむといった使い方も可能。WiFi専用のタブレットやノートPCを車内の同乗者が使うには便利な機能です。
挿入する物理nanoSIMカードとしては車での移動に適した広域なドコモ回線に対応し、月額198円スタートで使用量に応じて段階課金で使えるHISモバイルがおすすめ。各種音楽サービスやGoogleマップのオフラインマップ機能を駆使すれば月々のデータ通信量は最小限に抑えられます。
またクラウドSIMは購入時に6GB無料で付属するほか、追加でOttoCast公式ストアで容量が購入可能で、購入容量によっては1GBあたり100円以下で購入可能。こちらはドコモ・au・ソフトバンクの3キャリアに対応して自動で切り替えてくれるのも大きなメリットです。
購入したデータ容量の使用期限が気になる方は物理SIMの段階制プラン、移動範囲が都心から郊外まで広く3キャリアを自動切り替えして使いたい方はクラウドSIMがおすすめです。
OttoAibox P3を導入して良かったこと
今回OttoAibox P3を導入して良かったと思った点をまとめると以下のとおり。
- CarPlayを使うスマホが助手席で自由に使える
- 都度スマホを繋ぐ必要が無くなる
- 使えるアプリの幅が広がる
- 音楽ストリーミングを無線を介さず使える
まず我が家の普段の移動スタイルとしては目的地を一旦ナビで設定し、向かいながら周辺の飲食店などを助手席で妻が検索するといった利用シーンが多いです。CarPlay接続の場合はGoogleマップでルート案内をしている間はiPhoneのGoogleマップで周辺検索ができなかったので、OttoAibox P3でルート案内、iPhoneは周辺の検索といった使い分けが出来るようになってかなり便利になりました。
また、OttoAibox P3は単独でAndroidとして動作するため、誰のiPhoneをCarPlayで繋ぐかといった悩みが都度発生しなくなりました。シンプルに画面に表示されたAndroidで目的地を入力すれば完結する上、事前に私がスマホのGoogleマップで目的地を調べておけばモバイルデータ通信経由でOttoAibox P3のGoogleマップの履歴に同期されてワンタップで入力する事ができます。
そして使えるアプリの幅が格段に広がったのは最も面白いところ。単純にAndroid版Googleマップや各種音楽ストリーミングサービスが使えるだけでなくPerplexityのようなAI検索アプリが移動中に使えたり、IFTTTのようなアプリを動かしておいて出発・帰宅に合わせてスマートホーム連動したりといった自動化を車に組み込む事も実現できます。
車に据え置きのAndroidな事を考えるとOBD2アダプタと繋いで車両の情報を取得し、追加メーターを表示しておくといった使い方などもできそうです。
とにかくAndroidアプリが自由に使えるという点は可能性が幅広く、まだ試しきれていない活用法が無限に広がっているのは非常にわくわくするところ。
また導入時に予想していなかったメリットとしては、Bluetoothなどを経由せず音楽を再生できるため音楽プレイヤーとして音質に優れているところ。有線によるCarPlayと同等の音質で再生できるため、OttoAibox P3にインストールしたApple Musicから音楽を再生すると音質が良くなったのを感じました。
OttoAibox P3の気になったところ
逆にOttoAibox P3を使っていて気になっていた点も見ていきます。
- タッチ操作が増えるため画面が汚れやすい
- 起動に30秒ほど時間が掛かる
- スペックはもう少し上げてほしい
まず、DA7Z標準のワイヤレスCarPlayで使っていた頃と比べるとAndroidベースのため格段に画面に直接触れるタッチ操作が増え、画面を拭く頻度が増えたのは明確に感じました。CarPlayは極力画面をタッチして操作しない設計になっているため、Androidベースのシステムと比べるとタッチ数に大きな差がある事が分かりました。また、カーナビの取り付け位置でタッチ操作を行うのは腕が疲れるので、ヘビーにAndroidタブレット的に使うには向いていないと感じました。
また、車のエンジンを掛けてからOttoAibox P3が使えるようになるまで少なくとも30秒ほどは掛かるため、すぐに使えないのも少し気になりました。Androidシステムが立ち上がってCarPlay接続が完了するまで待つ必要があり、接続後もAndroidの起動完了を待たなければスムーズにアプリも使えないため、この辺りはCarPlayと比べると不利なポイントに感じました。
上記の事もあり、起動速度や操作の快適性のためにOttoAibox P3はスペックを底上げしてほしいと感じました。RAMに関しては8GB、ストレージは128GBと潤沢に搭載されていますが、搭載プロセッサであるSnapdragon 665は他のスペックに対してややボトルネックになっている印象です。シンプルにナビゲーションを行わせるには十分ですが、画面を左右分割したマルチタスクなどをより活用していくのであればもう少し余裕のあるスペックが欲しいと感じました。
「車にAndroidをインストール」できる面白いデバイス

今回OttoAibox P3を導入して使ってみましたが、感覚としては「車にAndroidをインストールする」という説明が一番適切なのではないかと思いました。裏の技術的にはUSB電源で動くAndroidがCarPlay規格経由で画面に出力しているのですが、実際の体験としては「車のエンジンを掛けたらAndroidが起動する」といった物になっているので、実質的に車にAndroidがインストールされた感覚と言って差し支えないでしょう。
それによって使えるアプリが格段に増え、画面分割が利用可能になり、スマホが接続不要になり、車にWiFiルーターが内蔵され、ワイヤレスCarPlay・ワイヤレスAndroid Autoに対応し、車の画面部分の活用方法の幅が大きく拡張されます。
今回は2DIN規格のコンパクトな7型のディスプレイオーディオで試しましたが、より大きなディスプレイオーディオや最近の車の横長ワイドなディスプレイオーディオに出力できればより画面分割による活用がしやすくなりそうです。
デバイスの処理性能的には限界を感じる部分はあるものの、出来る事の幅としてはナビ or ディスプレイオーディオ+CarPlayで実現できる範囲を格段に超えたものになるため、これがAndroid搭載ナビへの換装などの大掛かりな作業無しにUSB接続だけで実現できるのは改めて便利な製品だと感じました。
USB接続だけで手軽に使えるため、例えばレンタカーや代車などでもCarPlayさえ対応していればいつもの車の環境をそのまま持ち込む事も可能です。
車をAndroidガジェット化できるという意味では非常に面白いデバイスなので、日頃車に乗る機会があり、ガジェットの活用が好きな方は満足できる一台だと思います。
OttoAiBox P3の価格は定価で60,999円となっていますが、現在Ottocast公式ストアではセールにて48,799円に値下げ中。
更に今回のレビューにあたって頂いている読者用の割引コード「AFB10」を入力すると更に10%割引が適用されるので、43,919円で購入が可能。価格帯としてはミドルレンジのAndroidタブレットと並ぶような金額感なので、それをそのまま車に搭載できるデバイスと考えるとイメージが付きやすいのではないではないでしょうか。購入は以下のリンクから。