CarPlay対応車でAndroidアプリが快適に使える「Ottocast NanoAI」レビュー

公開:2025.6.27 / 最終更新日:2025.06.27

CarPlay対応の車にUSB接続する事でAndroidアプリや音声アシスタントを利用できるようになるデバイス「Ottocast NanoAI」を評価用にメーカーから頂いたので、使用感を紹介していきます。


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Ottocast NanoAIとは

NanoAIはOttocastから2025年に新登場した新製品。先日紹介したOttoAibox P3と同様にAndroidを内蔵し、CarPlay規格を使って車のディスプレイに映像・音声を出力しタッチ操作できる仕組みの製品。8GBのメモリ・128GBの内蔵ストレージを搭載しており、マルチメディアをローカルに保存して持ち出すにも便利な性能となっています。

CarPlayに対応した車のカーナビ・ディスプレイオーディオにUSB接続する事でそのまま使う事ができ、大掛かりな取り付け作業不要でAndroid版GoogleマップやGoogle Chromeブラウザ、YouTube・AmazonプライムビデオなどのCarPlay非対応の動画サービスを含む様々なAndroidアプリが画面上で使えるようになります。

P3から変わったポイントとしてはSnapdragon 665からSnapdragon 680になり処理性能が底上げされた他、後部座席モニター用のHDMI出力が無くなった代わりにコンパクトな画面が本体に搭載され、各種情報の表示や音声アシスタント機能が追加されています。「NanoAI」の名前のとおりAIアシスタント機能も組み込まれており、GPT-4を用いた生成AIも音声で呼び出す事ができます。

Android 13ベースのOttoDrive 2.5のUIだけでなく、ワイヤレスCarPlay・ワイヤレスAndroid Autoのレシーバーとしても機能するため有線CarPlayにのみ対応した車両の利便性の幅を広げる事ができるデバイスとなっています。

Nano AIの同梱品・本体外観

こちらがNanoAIのパッケージに含まれるもの。NanoAI本体のほか、エアコンのフィンにNanoAIをマウントできるボールマウントのクリップ、CarPlay接続用のUSBケーブル、電源入力用のUSB分岐ケーブル、配線用のクリップが付属します。

USB type Cで給電できる車両であればケーブル1本の配線で利用可能で、USB type Aで接続する車両は分岐ケーブルを使う事で別のUSB type Aの充電器を用いて電源を取る事ができます。

こちらがNano AI本体。従来のOttocast製品はUSB接続して車のディスプレイ上で完結するデバイスでしたが、Nano AIはデバイス本体にもディスプレイが搭載された事でベースは同じAndroidデバイスでも印象は全く異なる形となりました。

背面は多くのスマホホルダーなどと同じボールマウント方式を採用。OttoAiBox P3は車内のどこかに置く必要がありましたが、NanoAIはエアコン部にマウントする事で居場所ができたのは大きな違いです。

下部にはUSB type C端子を搭載。

側面にはmicroSDスロット、SIMスロット、物理ボタンを搭載。SIMは物理nanoSIMのほか、本体内蔵SIMによってそのまま通信も可能となっています。

側面の物理ボタンはNanoAIの画面上の表示をトグルできるボタンとなっており、NanoAIを象徴する「顔」の表示から時計や再生中の楽曲情報などに変更する事ができます。

NanoAIは通電するとデフォルトで顔がディスプレイに表示されます。

音声アシスタントを2種類搭載

NanoAI独自の新機能として2種類の音声アシスタントを搭載しており、タッチ操作をせず声のみによる操作が可能になっています。

1つ目のアシスタントは「Nano」で、「ヘイ ナノ」のコマンドの後にプリセットの音声コマンドを読み上げる事によってマルチメディアの操作やナビゲーションの操作が可能。

2つ目は「GPT」で、その名の通りOpenAIのGPT-4を用いたAIとチャットする事が可能です。こちらは「ヘイGPT」のコマンドで起動可能です。

Nanoのコマンドは固定となっており、「ナビを起動して」「東京まで案内して」のように用意されたコマンドの通りに読み上げる事によって音楽の再生操作やナビゲーションの目的地設定などができます。

コマンド一覧はNanoAIにインストールされているスマートセンターから確認可能。

一方GPTは個別コマンドは用意されておらず、様々な入力に対してのAIの返答を得る事が可能。なおGPTはインターネット検索などの機能は与えられていないため、最新情報を得る事には利用不可。画面表示上にも「参考用のAI生成コンテンツ」と表示されており、確実な情報収集には使えないので注意が必要です。

NanoAIの画面のカスタマイズ

NanoAIは標準で表情が表示され、操作に対して反応するようになっています。ここから側面のボタンで他のモードにトグルできるほか、出力先のディスプレイのタッチ操作で詳細にカスタマイズも可能。

顔ではなく時計も表示が可能で、時計の表示もスマートウォッチのように複数の文字盤から選択できるようになっています。顔の表示と比べると車のインテリアにも馴染みやすく、おすすめの設定です。

再生中の音楽の曲名・アーティスト名の表示にも対応しており、出力先の画面にはナビゲーション、NanoAI本体には再生情報を表示するといった具合に2画面で活用する事も可能です。

「OTTOCAST エアマウスリモコン 2」でリモコン操作もOK

NanoAIは別売アクセサリの「OTTOCAST エアマウスリモコン 2」にも対応しており、タッチパネルまで手を伸ばさずに操作する事が可能。

カーソル移動による操作のほか、リモコンの向きに応じてマウスカーソルを移動してPC的に操作する事も可能。後部座席から操作できるだけでなく、タッチパネルの手前で手を浮かせたままタッチ操作する必要が無くなるので操作の多いAndroidアプリを使いたい場合にもおすすめのアクセサリです。

CarPlayでは不可能な動画再生も可能

Apple CarPlayに対応したiOSアプリは動画の再生には対応しておらず、CarPlayの車両では通常は動画再生は不可。対してNanoAIは通常のAndroidアプリを使う事ができるので、AmazonプライムビデオやYouTubeといった動画再生アプリを使う事ができます。

走行中に運転者が動画再生画面を注視・操作する事は道路交通法により禁止されていますが、停車中の待ち時間などに車両の画面・オーディオ環境を使って動画を含むマルチメディアが楽しめるのはNanoAI導入の大きなメリットとなっています。

物理SIM&クラウドSIMに対応

NanoAIはnanoSIMスロットを搭載しているほか、ドコモ・au・ソフトバンクの3キャリアに接続可能なクラウドSIMを内蔵。物理SIM不要で3キャリアを使う事ができ、公式ストアで5GB〜120GBのプリペイドのクレジットを購入する事も可能です。

この手のデバイスで郊外でナビゲーションを使いたい場合はエリアのカバー率的にどのキャリアを選択するかは悩ましい点ですが、クラウドSIMにより3キャリア全て利用できるのは心強い機能。通常は物理SIMでシングルキャリアを維持費の安いSIMで運用し、いざという圏外時にクラウドSIMで3キャリアの通信網を使うといった使い分けも便利そうです。

また本体はOTAのアップデートにも対応しているので、インターネット通信機能を持たないデバイスよりも最新状態に保つハードルが低いのもメリット。

Androidの画面分割にも対応

NanoAIはAndroid 13ベースのため、他のAndroidデバイスのように画面分割が利用可能。音楽プレイヤー+ナビゲーションといった構成で使ったり、Googleマップ+Yahoo!カーナビのように複数のルート案内を参考に道を選ぶといった使い方も可能です。

NanoAIを実際に使ってみた使用感

続いて、実際にNanoAIを実際にしばらく使ってみた使用感を紹介していきます。

1. 動作の快適性や操作性はP3から劇的に改善

以前同社のOttoAibox P3をレビューしていますが、P3と比べるとNanoAIは操作性が劇的に改善していると感じました。スペック的には8GBのメモリはP3と同じですが、プロセッサがSnapdragon 665からSnapdragon 680にアップデートされており、2年ほど新しいものに刷新されています。

OttoAibox P3は車載デバイスとして見るとそれほど気にならないものの、Android端末として見ると引っかかりのあるローエンド端末並みの動きだという印象でした。一方今回のNano AIはP3と比べると引っかかりが激減しており、ミドルレンジAndroid端末レベルの動きに改善されたという感覚です。

特に画面分割で複数のアプリを使いたい方であればNanoAIの性能アップは非常に嬉しいポイントとなっています。

2. ケーブルは下に垂れない仕様だと嬉しい

デスク周りの配線をしっかり整えるような方であれば共感するポイントかもしれませんが、今回NanoAIがエアコンのフィン上にマウントして見える位置に置くデバイスとなった事で、ケーブルが下からそのまま垂れている仕様が個人的に気になるところでした。

取り急ぎ手元にあったL字のUSB変換アダプタを使って以前のU字ケーブルの配線記事同様に背面に配線を回して設置しましたが、背面などもう少し目立たない位置にUSB端子を置くか、ケーブルをL字にするなど何かしらの配慮が欲しいなと思ったところ。

3. 音声操作は便利なものの、「AI」部分は限定的

今回製品名にもなっている「NanoAI」ですが、率直な感想としてはAI部分は非常に限定的と言わざるを得ない内容でした。

「ヘイナノ」コマンドを使った音声操作はハンドルを握ったまま操作ができて非常に便利な一方で、ナノに関しては固定の音声コマンドにしか対応できず、ここにAI要素はありません。

そのため「東京駅まで案内して」というコマンドでGoogleマップの行き先を設定する事はできますが、「東京駅に案内して」では設定できず、ナノは表現の揺れを一切許容してくれません。もし柔軟に文脈を理解してくれるAI機能がここに入れば、実用性は大幅にアップするでしょう。

また、もう一つのアシスタント「GPT」はナノと違い本物のAIを採用していますが、こちらもいくつかの問題を抱えています。第一にモデルが「GPT-4」を採用しており、2023年3月の旧世代モデルで性能が現代の最新モデルと比べて劣り、API提供元の本家ChatGPTからも4月に提供が完全に終了しているものとなっています(公式サイトにはChatGPT4.0搭載と記載されていますがChatGPT公式アプリは利用不可で、GPT-4のAPIを利用した独自アプリとなっています)。

前提としてChatGPTをはじめとするAIの言語モデルで情報の調べごとをする際には何らかのドキュメント参照やインターネットアクセスが不可欠で、AI自体から情報を引き出す行為は事実に基づかないハルシネーションのリスクがあるので実用性はありません。

NanoAIに搭載されているGPTは「2023年以前の古い学習データ」「インターネットで最新情報の取得も不可」「NanoAI自体の操作も不可」といった具合でツールとしての実用性は無く、ドライブ中の雑談相手以上の使い方は難しいでしょう。

もしNanoAIを実用的なAIツールにするのであれば、最低でも以下の2つの要素が必要でしょう。

  • 固定音声コマンドだけではなく、AIによるNanoAI自体の操作
  • AIによるインターネットアクセス

現時点ではナノはAIではなく、「GPT」も単なる音声認識・音声読み上げを組み込んだGPT-4チャットボットに過ぎず、実質的なAI機能の開発はゼロに近い状態だと言えます。

製品名はOttocast NanoAIではなくOttocast Nanoが適切かもしれません。

AIを除いた車載Androidとしては非常に良い製品

NanoAIは「CarPlay規格にAndroidの映像出力を乗せて車の画面でタッチ操作できるようにする」というOttocastの先代モデルからのイノベーションは健在で、CarPlayという制約の枠を越えて素のAndroidアプリを車の画面上で使えるのは変わらず非常に便利。

車の画面でAndroidがそのまま動く事には様々なメリットがあり、有線CarPlayと比較すると接続の手間が無く、ワイヤレスCarPlayと比べるとiPhone側の電池消費の心配も無く、CarPlay上のGoogleマップと比べると制約が少ないため操作がしやすく、行き先設定に関しても音声操作に加えて直前にPCやスマートフォンのGoogleマップで調べた箇所がそのまま履歴に表示されるためタッチ操作で入力する機会も少なく、車載端末として高い利便性が手に入る製品です。

動作も先代モデルから劇的に良くなっており、普通のAndroid端末が車にインストールされたかのように違和感無く使えるようになったのは大きな改善ポイント。この点だけでもP3と比較して買う価値のあるデバイスで、P3からアップグレードしても満足度は高いでしょう。

一方でAI機能に関しては先述したとおりGPT-4のチャットボットが入っているに留まっており、現時点では利便性に繋がる部分は限定的。AI機能を活用したい場合は別途Androidアプリを入れるなどで機能拡張するのがおすすめです(なおChatGPTはデバイスが要件を満たさないため利用できません)。

AI機能こそは限定的ではあるものの、それ以外の部分に関しての使用感は快適。音声操作に対応した事でハンズフリーで目的地設定ができ、デバイス自体の起動がスムーズになった事で車のエンジンをかけてから目的地設定するまでのタイムラグがかなり短縮されて使い勝手が向上しています。

今回紹介したNanoAIは公式サイトにて定価60,799円となっていますが、そこから本記事の読者向けクーポンコード「nano5000」を入力する事で5,000円オフで購入が可能。定価48,799円だった先代のP3から値上がりした分以上のスペックアップは体感できる性能で、車にAndroidを手軽に導入できるデバイスとしておすすめの一台となっています。

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キリカ

ガジェットショットを作った人。本業はAI業界で働くUI/UXデザイナー。英国育ち。東京、湘南の生活を経て北海道へ移住し、理想の住環境を整えつつ乗り物趣味を満喫するべく試行錯誤中。