3月31日に発売された9.7インチiPad Proを、同じサイズのiPad Air 2との比較を交えてファーストインプレッションを紹介していきます。
9.7インチiPad Proは12.9インチのみだったiPad Proシリーズに今回新たに追加されたラインナップ。iPad Air 2とほぼ同じサイズ感となっています。なお、アクセサリ装着用マグネットの配置変更によって従来のSmart Coverなどのアクセサリは利用できなくなっているので注意。Pro用のものが別途販売されているので、そちらを買い直す必要があります。
今回入手したのはセルラー版。9.7インチモデルのiPad ProはSIMスロットに挿入するSIMカードだけでなく、12.9インチモデルに無かった内蔵型Apple SIMを搭載。いわゆるSIMカードではなく本体に契約情報を書き込む「ROM機」としての側面を持つ端末となっており、通常のSIMカードに加えて別途Apple SIMで国内外のキャリアとプリペイド契約を行い通信することができます。iPad本体をリーダー・ライターとして利用して読み書きするSIM型のApple SIMは以前レビューしていますが、今回9.7インチiPad Proは通常のSIMカードと併用して切り替えて使うことができるようになっている点が特徴。国内契約のSIMカードを入れたままSIM交換すること無く海外現地の回線をOTAで契約して使ったり、国内でドコモやソフトバンクの回線をSIMカードで使いつつ、電波の悪いエリアでは内蔵型Apple SIMでauのプリペイド契約で通信して使い分けるといった事も可能です。
SIMフリーiPad Proの内蔵型Apple SIMは「au」「AlwaysOnline」「GigSky」の3キャリアが表示されました。以前のレビューではGigSkyは国内では3Gで繋がり、AlwaysOnlineは国内の住所では契約できませんでした。
iPhone 6s同等にスペックアップしたカメラ部分。性能とのトレードオフで出っ張ってはいるものの、卓上でのガタガタは本体のフォルムを曲げる事で回避しています。そのため卓上に置いて使う場合もケース無しでもがたつく心配はありません。購入前に気になっているユーザーも多いのではないでしょうか。
iPad Air 2と比較
iPad Air 2では太字だった「iPad」のロゴがついに細字に。iPhoneシリーズが細字になったのは2013年のiPhone 5sだったので、3年遅れでようやくiPadシリーズも細字になった形です。
True Toneディスプレイ
環境光の色温度に合わせて画面の色温度を調整してくれるTrue Toneディスプレイを搭載。今回は暖色系の照明のカフェで開封しましたが、セットアップ時点で青白さが軽減された優しい色になったのが一目でわかりました。一度使いはじめると心地よさが癖になりそうです。
iPhone 6sとローズゴールドの色味を比較
同じローズゴールドのiPhone 6sと色味を比較したところ。iPhoneシリーズのローズゴールドほど派手な桃色ではなく、どちらかというとゴールド寄りのローズゴールドとなっています。
歴代最強の9.7インチiPad
アップルストア店頭では発売日初日は本体の在庫こそは潤沢に残っていたものの、夕方の時点でApple PencilとSmart Keyboardの在庫はゼロ。今回は本体のみのハンズオンとなりましたが、感想としてはiPad AirからiPad Air 2になった際の大幅な体感速度の向上を再度体験できたといったところ。マルチタッチジェスチャーでアプリを切り替える際の引っ掛かりやロード時間がiPad Air 2から大幅に軽減されており、マシンパワーを手で感じ取れるパワフルなiPadとなっています。
内蔵型Apple SIMも非常にマニアックなところでそそる機能。SIM機でありつつROM機でもあるiPad Proは、かつてauから販売されていたMOTOROLA PHOTON ISW11Mを非公式にSIMロック解除し、ROM機としてau(UQ)の回線でWiMAXで通信しつつ、SIMスロットにはドコモのSIMを入れてFOMAで通話するといった変態的回線運用ができた頃の機種を思い出させます。SIMスロットと内蔵型Apple SIMを併用できる本機は是非海外旅行に連れて行きたい一台です。これは是非ともiPhoneにも付けてほしい機能ですね。
上記はiPad Proで撮影した4Kテスト動画。本体を歪めてまで搭載した1200万画素のカメラですが、やはりこのサイズのディスプレイの端末にこのレベルのカメラが搭載されるという高いレベルのバランス感は圧巻。初代Retinaディスプレイ搭載iPadのカメラアプリを初めて触った時はリアルタイムでカメラ映像が9.7インチの2Kディスプレイにプレビューされる迫力に感動しましたが、やはりカメラの性能が良くなかっただけに実用性は感じないものでした。しかし今回iPhone 6s同等の画素数のカメラを搭載したことによって、2Kディスプレイで見るに耐えるレベルになったのは大きな可能性を感じるもので、ようやく来たかといったところ。実際に9.7インチのタブレットで撮影を行うシーンは中々想像できませんが、最大256GBの大容量と本体の高い処理性能による映像編集に、撮影用のカメラと特大ファインダーがオールインワンで詰まっているタブレットというのは夢を感じます。
今回Apple PencilとSmart Keyboard無しで使いましたが、それでもアプリ切り替えの圧倒的スムーズさだけでも感動するレベルの性能向上を感じました。4つの迫力のあるスピーカーと高い処理性能を兼ね備えたマルチメディアマシンとして持つだけでも十分価値のあるデバイスです。卓上で本体がガタつかない事もわかったので、自宅でスピーカーで垂れ流しながら遊ぶ音ゲーマシンとしてもおすすめできます。
12.9インチのiPad Proは「クリエイター向け」という色が強く手が出しにくい機種でしたが、9.7インチ版はより身近なサイズにぎゅっと魅力が凝縮された2016年モデルらしいiPadだと感じました。今iPadが欲しいのであれば、一番オススメできる一台です。