iPad Pro専用Magic Keyboardレビュー。本体以上の重量と引き換えに、抜群の剛性感と実用性を実現した重装備品

先日Appleから販売開始されたiPad Pro(2018/2020年モデル)専用のMagic Keyboardが手元に届いたので、実際に使ってみました。


Magic Keyboardは2018年・2020年モデルのiPad Pro専用に設計されたキーボード&トラックパッド内蔵ケース。iPad Pro本体を組み込んで持ち運ぶ事ができ、キーボードに加えトラックパッドも内蔵。ヒンジにはUSB type Cポートが搭載されており、iPad Pro本体を充電しながらiPad ProのUSBポートは充電ケーブルとは別の周辺機器用に使う事ができます。

2020年モデルの新型iPad Proを引き立てる形で登場したiPadOS 13.4のアップデートによってトラックパッド&キーボードのサポートが強化され、ソフトウェア的に「MacBookのように使えるようになったiPadOS」に対して、ハードウェア的に「MacBookのような形状でiPad Proを使うための拡張ケース」がこのMagic Keyboard、といった格好です。

2020年モデルの12.9インチiPad Pro、2018年モデルの11インチiPad Proが手元にあったので、今回11インチ用12.9インチ用を両方を買って比較してみました。先日16日、Apple公式サイトで販売開始された際に予約し、4月21日到着予定のところ1日前倒しの本日4月20日に到着。

実際に使ってみた結論としては総合的に気に入ったMagic Keyboardですが、今回は気になるポイントとして発売日前から話題になっている「重さ」や「価格」などを中心にチェックしていきます。

Magic Keyboardのパッケージ&開封動画

まずはパッケージから。Appleらしいミニマルな白い箱+製品画像の箱となっています。

今回11インチ用モデルの開封の様子を撮影した動画は以下のとおり。

続いて写真でもチェックしていきます。

白い外箱のサイズがMagic Keyboard本体のサイズぎりぎりに設計されているのはApple純正品らしい雰囲気。

Magic Keyboardの間の本来iPad本体が入るスペースには白い紙のスペーサーが入っており、中央に書類がまとまっているギミック。

簡易的なマニュアルが付属しますが、要するにiPad Proを装着でき、iPad本体部分を少しだけ角度調整できるという2点が説明されています。なお、Appleロゴのシールは付属せず。

Magic Keyboardのデザイン

Magic KeyboardはiPad Proの両面をコの字に挟むカバーのような形状をしており、一見カバー型のケースに見える外観をしています。

カメラ部分は2020年モデルのサイズに合わせて切り抜かれており、2020年・2018年どちらのモデルのiPad Proでも使えるようになっております。

ヒンジを最大まで開いたところ。

iPad Pro本体とは背面の電子接点で接続される仕組みで、多くの社外キーボードにありがちなBluetoothやバッテリーなどは非搭載。本体と別途充電が必要無いのは便利なところ。

「Magic Keyboard」という事でMacのMagic Keyboard同様シザー式を採用。しっかりとした打鍵感でタイピングする事ができます。

2018年モデルのシングルカメラのiPad Proに装着するとカメラ穴はこういった感じ。後方互換としては悪く無いのではないかと思います。

Magic Keyboardの重さはiPad Pro本体重量以上

先月の新型iPad Proの発表の時点では公式にはMagic Keyboardの重量はスペックの数字としては公開されていませんでしたが、触ったメディアの人間の評判としてはiPad Pro用のMagic Keyboardは重いと言われていました。

今回実際に到着したそれぞれの11インチ用・12.9インチ用のモデルの重量を計測してみたので、参考までに表にまとめていきます(いずれもWiFi+Cellularモデル)。

モデル 11インチ用 12.9インチ用
Magic Keyboard重量 597g 687g
iPad Pro本体重量 473g 643g
合計 1,070g 1,330g

Magic Keyboardは11インチ用、12.9インチ用ともにiPad Pro本体よりも重いという結果に。

どちらのモデルも本体に装着した状態で1kgを超える総重量になる重さで、最大1000g対応の測りでは計測不能に。12.9インチ版に至っては本体装着時に合計1.3kgを超える重量となっています。

実際に数字として並べてみるとノートパソコン並みには重いのですが、実際の使い勝手としては良い方向に寄与しており、総合的には重量増によるデメリットより、それによって得られているメリットが上回っていると感じました。

シンプルに、Magic Keyboardの方が上に乗るiPad Proより重いので、重心が安定しています。膝上で使う製品だけに、地味に重要なポイント。もしMagic KeyboardがiPad Proよりも軽かったらこの安定感は無かったでしょう。

また、ただ重いだけでなく剛性感も抜群。キーボードをタイピング中にボディがたわむといった事が無いのは勿論のこと、iPad Pro本体の画面をタッチしても安定感があり、重量増に匹敵する剛性を獲得しています。

低重心・高剛性のため操作のひとつひとつに安定感があり、しっかり腰を据えて操作する拡張デバイスとして重量に対する納得感を兼ね備えていると感じました。

トラックパッドは小さいが、チューニングが優秀

iPad用Magic Keyboardに搭載されている内蔵トラックパッドはMacBookシリーズに搭載されているトラックパッドと比べるとかなりサイズ的には小さめ。

特に縦幅が狭く見えるため、実際に触る前は「小さすぎるのでは?」という印象がありました。

実物を見てみた感想としてもかなり小さい印象で、サイズ感としては旧型iPhone SEの画面に近いサイズ感。本当にこれで操作できるのかとやや不安がありましたが、実際は不満無く使うことができました

トラックパッド上部から下に向けてゆっくり指を動かすと12.9インチiPad Proの画面を一番上から下まで縦断することができませんが、素早く動かせば最上部から最下部まで問題なく移動することができます

ポインタの精度的にも不満無く使えるレベルで、ソフト・ハードの組み合わせが十分にチューニングされているためこのサイズでも問題が無いのだと感じました。

キーボード側のUSB-C電源入力は地味に便利

Magic Keyboardがヒンジの左端にUSB type Cポートを搭載しており、iPad Pro本体のポートを使わずに本体を充電することができます。これによって右側にくるUSB type Cポートが充電しながらでも使えるため、USB type Cの充電対応のハブを使わずともスマートにSDカードリーダーなどの周辺機器が接続できます。

これによって充電しながら別のUSB機器がそのまま使えるのは勿論のこと、ケーブルマネージメント的にもメリットがあります。電源が後ろから出るので、腰を据えて卓上で給電しながら使いたい場合は本体横から宙に浮いたケーブルが無くなって見た目がすっきりすると感じました。

ヒンジの可動域は想像よりかなり狭め

Magic Keyboardを取り出して一番強く違和感を感じるのは可動域の狭さなのではないかと思います。まず閉じた状態から開くと、付け根のヒンジはこの位置で止まります。

続いて第二のヒンジを曲げると、この位置で止まります。ここが限界。少し低めの卓上に置いて使う場合、もう少し上を向いてほしいと思う角度かもしれません。

ただ、先述した重心の問題もあり、膝上で更に後ろ向きに角度がつく事を想定してこの角度が安定利用できる限界なため、ここで制限しているものがと思います。

全体的に使うポジションがカッチリ決め打ちされており、自由度は無いものの狭い範囲で安定して使える製品として設計されていると感じました。

11インチ・12.9インチのキー配列を比較

11インチ・12.9インチのiPad Proはそれぞれ幅が異なりますが、どちらのMagic Keyboardも幅いっぱいにキーが配列されています。そのため、11インチモデルは12.9インチと比べて狭い幅に収まるよう調整されています。

11インチモデルは両端のキーが小さくなっており、初めてタイピングした時はエンターキーや一部の記号キー、左のTabキーなどの小ささなどが気になりました。ただ、中央のメインの文字キーはキーピッチが確保されており、文章は打ちやすく感じました。

一方12.9インチモデルはMac用のMagic KeyboardやMacBookシリーズの内蔵キーボードを普段からメインのキーボードとして使っている身としては全く違和感無くタイピングでき、満足。タイピング体験を重視するのであれば断然12.9インチiPad Pro+Magic Keyboardのセットがおすすめです。

価格は31,800円と高額なものの、キーボード・トラックパッド・ケースを別々に揃えても31,100円

Magic Keyboardの公式税別価格は11インチ用が31,800円、12.9インチ用が37,800円と、iPad用のキーボード単体として見るとかなり高額な部類。ただ、iPad用Magic Keyboardにはキーボードの他にトラックパッド・カバーの機能も内包されています。

Appleからは従来Mac用に発売され、今は現行iPadOSではiPadでも使える従来型の「Magic Keyboard」「Magic Trackpad 2」や、iPad Proを挟んで保護したりスタンドとしても使える「Smart Folio」がラインナップされています。

iPad Pro専用のMagic Keyboardのように「iPad Proを立てて」「キーボードを繋ぎ」「トラックパッドも繋ぐ」環境を揃えるとなると、純正アクセサリでは従来この3つが必要でした。比較のため、これら3点のアイテムを11インチiPad Pro用に揃えた場合にかかる合計費用を計算していきます。

Smart Folio 8,500円
Magic Keyboard 9,800円
Magic Trackpad 2 12,800円
合計 31,100円

こうして改めて足し算してみると「31,100円」となり、iPad用Magic Keyboardの31,800円にかなり近い数字になります。差額は700円ありますが、USB充電しながらアクセサリも使えるようにするハブを別途購入すれば逆転する程度の差額。

Mac用Magic Keyboard」「Magic Trackpad 2」「Smart Folio」の機能をオールインワンの拡張ケースとしてまとめた製品と思えば、31,800円はApple製品として見れば順当な価格なのではないかと思いました。

ひっくり返して裏に畳めないのはデメリット

Appleの他のiPad Pro用のアクセサリSmart FolioSmart Keyboard Folioのように、カバーをiPadの裏にひっくり返してタブレットとして使えないのはデメリット。Magic Keyboardは完全にノートPCライクなスタイルで使う前提なので、iPad本体を板状で使いたい場合はMagic Keyboardから本体を外す必要があります。

救いとしてはiPad Pro本体を必要に応じて着脱しやすいデザインになっている事ですが、付けたまま複数の変形して使う、といった使い方はこの製品では不可能。また、外した状態では本体がケース無しの裸のiPadになってしまうため、ゲームをプレイするために卓上にしっかり固定して使うといった用途にも不向き

やはり、今までのiPad系のアクセサリで当然のようにできた事が出来なくなったのは惜しいところ。PCライクな作業が得意な一方で、タブレットとしての振る舞いは不得意です。

Magic Keyboard×iPad Proは得意な作業と苦手な作業が極端に分かれているデバイスと言えます。

まとめ:重量、価格ともに「使えば納得」のフル装備

発表直後は「価格が高い」と話題になり、更に購入者の手に行き渡り始めてからは「重い」と話題になっていたMagic Keyboardですが、実際使ってみればどちらも納得の完成度に感じました。キーボード+トラックパッド+USB-C充電端子+ケースで価格に相応しいフル装備になり、重量や狭い可動域は実際に使ってみれば膝上で安定して使うための設計である事が納得できる作りでした。

確かに高くて重いのですが、その代償を払う価値は感じられる内容でした。その中で、12.9インチと11インチはそれぞれ少しずつ異なる性格のパッケージに仕上がっていると感じたので、それぞれ総括すると以下のとおり。

12.9インチ用は「キーも打ちやすい、フル装備の生産性マシン」

12.9インチiPad Pro用Magic KeyboardはキーピッチがMac級のフルサイズで文字が打ちやすく、iPad Proの生産性を上げられるオールインワンの拡張。Macのキー入力に劣らないタイピング性能、十分な性能のトラックパッドを兼ね備えており、12.9インチiPad Proでしっかり腰を据えて作業する環境が手に入るアイテムです。

価格は税別37,800円と高めですが、iPad Proの作業環境としてはこれだけで一通り揃うのはメリット。セットの総重量1.33kgと重量級なため1.37kgの13インチMacBook Proにも迫る重さではあるのですが、iPadの中でAppleの提供する最上級のラップトップ作業環境として申し分無いと感じました。

11インチ用は「Apple最小のラップトップPC」

11インチiPad Pro+Magic KeyboardはAppleのラップトップの中では、2015年〜2019年に販売された12インチMacBookをも下回るコンパクトなサイズ。左右両端の一部キーは圧縮されているものの、アルファベットはしっかりキーピッチが確保されており中心的なキーに関しては十分に実用的。

勿論12.9インチモデルは十分なスペースにキーを配置しているため当然使いやすいのですが、11インチは限られたスペース内に取捨選択してキーを配置しており、小型機としてのロマンに溢れていて個人的に好きです。

iPadOSの進化により操作感もMacBookシリーズに近くなったことで、重さこそは1kgを超えてくるものの、11インチPro+Magic Keyboardは「Apple最小のラップトップPC環境」として考えると唯一無二の環境。12インチMacBookがラインナップから消えた今、iPadのアプリで完結できる作業であればコンパクトなAppleのノートパソコンとして有力な選択肢が登場したと感じます。

価格は税別31,800円。Amazonビックカメラで購入すれば5%にあたる1,749円分のポイント還元がありお得です。

いずれも今まで普通に触っていたはずのiPad Proが全く別物の操作形態のマシンに変身するので、2018年モデル・2020年モデルのiPad Proを持っているのであれば購入して面白い周辺機器ガジェットとしてNo1だと思います。

次の記事
前の記事
アバター画像

キリカ

ガジェットショットを作った人。本業はUI/UXデザイナー。趣味は理想のデスク環境作り、愛車「エリーゼ」「ジュリエッタ」でのドライブ、車旅を動画・写真に残す事。