2022年5月28〜29日に湘南T-SITEで開催された電動車イベント「e-Mobility WORLD 2022」にてBEV「IONIQ 5」を試乗する機会があったので、実際に乗ってみたところかなり印象的だったのでレポートしていきます。
IONIQ 5(アイオニックファイブ)は日本市場に再上陸したHyundai(ヒョンデ、旧ヒュンダイ)が展開するEVブランド「IONIQ」シリーズの第一弾となる車。5月2日より販売開始されており、テスラのようにオンラインで購入可能。価格は479万円からとなっており、クリーンエネルギー車両導入事業補助金85万円を入れた実質価格は400万を切る格好となっています。
車両のサイズは4,635 x 1,890 x 1,645mmとなっており、サイズ感としてはトヨタのハリアーに近くハリアーを10.5cm短く、4.5cm太く、1.5cm低くしたもの。ただしホイールベースは3,000mmと非常に長く、EV専用プラットフォームならではの広々とした室内空間を実現しています。
公式のプロモーション動画は以下の通り。
今回は短い間ですがこのIONIQ 5を実際に体験して運転することができたので、その体験を書いていきます。
「パラメトリックピクセル」が散りばめられた独特な外観
IONIQ 5のエクステリアは初見では「ちょっと変わったハッチバック」という印象でしたが、細部を見ていくとアイオニックブランドのデザインコンセプトである「パラメトリックピクセル」が至る所に見られるのがとても特徴的で、存在感がありました。
テールは四角形のピクセルが散りばめられたコンセプトカーをそのまま市販化したかのような外観となっており、近未来的なルックス。
余談、IONIQ 5の外観はなんとなく最初に見た時から「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場するタイムマシンで有名な「デロリアン DMC-12」を彷彿とさせる外観だと感じていました。その理由は順当に近未来感のある前後の四角いライト形状によるものだと思っていましたが、調べてみると実はIONIQ 5のデザインは1974年発表のジョルジェット・ジウジアーロ氏の「ヒュンダイ・ポニー・クーペ・コンセプト」のオマージュ。1981年のデロリアンも同じくポニー・クーペにインスピレーションを受けたジウジアーロの代表作。40年の月日を挟んで同じルーツを共有する2台という事でした。
BTTFのタイムマシン=デロリアンの近未来イメージに寄せているのが意図した物かは定かではありませんが、少なくとも受ける印象としては有名SF映画のタイムマシンのイメージが重なる所があり、電気自動車の近未来感と上手くマッチしていると感じました。
サイドビューは直線的な線で構成されており、Z字にキャラクターラインが入っていて特徴的。ホイールアーチの周りには螺旋状のラインが入っていて線が多いかなと思っていましたが、実車で全体を見てみると思いのほか馴染んでいると感じられました。
インテリアは広々とくつろげる快適空間
EV専用プラットフォーム「E-GMP」を採用して車内空間を広くとっており、居住性は非常に快適。フロントは2つのディスプレイを並べたパネルで、すっきりとしたインテリアに仕上がっています。中央のドリンクホルダー部分は前後にスライドして運転席・助手席間の移動ができるほか、助手席側のグローブボックスはスライド式となっており、開け閉めがとても楽なのも印象的。
運転席・助手席は左右ともに電動で作動し、停車時には足置きが展開してリラックスできるモードを起動可能。試乗時は運転席に座ってすぐにこの機能を体験させてもらえましたが、充電中の仮眠や休憩が驚くほど快適にできそうでした。
天井はグレードによっては「ビジョンルーフ」が備わっており、開閉して自然光を取り入れることが可能。IONIQ 5の車内空間の広さとの相性は抜群。明るい色の内装と合わさると自動車の中に居る閉塞感を忘れさせてくれる機構でした。
後席に関しても前後に電動で動かして荷室を広く取れる上にリクライニングも可能。レイアウトの自由度が高い上、実際に座ってみるとかなり広々としていて足元も余裕があり快適。ハッチバックのような外観から想像する以上に中は快適で、大型ミニバンの1列目・2列目のような空間。この辺りはEVならではの3000mmの長いホイールベースが効いている感じがします。
走行性能は軽快でスポーツカーのようなブレーキのタッチ
今回運転する機会があったのは上位グレード「IONIQ 5 Lounge」で、後輪駆動(RR)モデルで、最高出力は217PS。最上位の305PSのAWDモデル「IONIQ 5 Lownge AWD」と比べると控えめなものの、性能としては十分に感じました。
実際に走り始めてみると約2トンある車重を感じさせない軽快な走り出しで、バッテリーを底面に敷き詰めた低重心らしい動きで旋回も想像以上に軽快。
「EVっぽい荒削り感」は全く感じられず、加減速から旋回まで動きは滑らか。特にブレーキのタッチはスポーツカーのようなフィーリングで、出だしから効きが強めに感じるものの細かいコントロールもしやすく、2トンの車重を回生ブレーキ込みで制御しつつこういった操作性を実現しているのは素直に感心しました。
回生ブレーキの効き具合はパドルシフトで1/2/3段階調整できる他、オフにして惰性で転がすモード・ワンペダルで走行できるi-PEDALのモードにも変更可能。i-PEDALは0km/hの静止状態まで自動で減速でき、その減速の制御は極めて丁重でした。
ウィンカーは日本市場に配慮して本来左側のところ右側に配置されているほか、ウィンカーを作動させると連動して該当する方向の斜め後ろ後方の映像がメーター内に映し出されるのも非常に便利。最近増えているフードデリバリー系サービスの自転車の巻き込み確認がより確実に行えるようになるのは安心感があります。
走行中の後部座席も体験しましたが乗り心地はとても良く、広々とした空間で圧迫感も無く、エンジンの無い電気自動車かつ遮音性が高いお陰で静粛性も高く、快適に移動できる乗り物という印象でした。
短時間の試乗のため運転支援機能や自動駐車機能などは試す事ができませんでしたが、IONIQ 5の持つポテンシャルは十分に感じる事ができる試乗でした。
初めて「欲しい」と思わせてくれた電気自動車
普段は趣味性の高いガソリン車を乗り分けており、実際にテスラ含め何台か運転する機会があっても「電気自動車はまだ早いかなぁ」と思い今までのEVには物欲をそそられませんでしたが、今回のIONIQ 5は実際に体験してみて電気自動車が欲しくなるまでに心を動かす至れり尽くせりな出来だと感じました。
移動手段として快適な広々とした空間を持ちながら、停車時にもしっかり休憩でき、前後のシートは用途に応じて柔軟に使い分けることが可能。そういった利便性を持ちながらも走行性能の面でも運転が心地良く、車としても移動手段としてもレベルの高い製品だと感じました。
正直実車を見るまではそこまで期待値は高くなかったものの、補助金込みで400万円を切る価格で、ここまで購入後のライフスタイルのQOL向上が想像できる体験をしてしまうと流石にワクワクせざるを得ませんでした。日本市場で韓国メーカーが受け入れられにくいのは一度撤退を経験しているHyundaiは百も承知のはずでありながら、こういった形で再参入するのは商品力の自信の現れなのは間違いないでしょう。
当面はガソリン車を乗り続ける気満々で、自宅にEVの充電設備は要らないと思っていましたが、こういった製品を一度体験すると自宅でEVが充電できる家に引っ越すのも選択肢に入ってくるなと思わせてくれる一台でした。正直、だいぶ欲しいです。
IONIQ 5はクルマ定額サービス「SOMPOで乗ーる(そんぽでのーる)」で取扱予定となっており、初期費用0円の月額制で乗る事も可能。車両価格のリセールバリューが予想しにくい国内マイナーメーカーの電気自動車でも乗りやすい方法になります。