紙の書籍の湾曲を自動で認識して補正する事で非破壊・未裁断でデータとして取り込む事ができるスキャナー「CZUR ET24 Pro」をMakuakeでのクラウドファンディングに先駆けてレビュー用にサンプルとして製品提供頂いたので実際の使い勝手を試していきます。
この記事の目次
CZUR ET24 Proとは
CZURは2013年創業のスキャン技術専門のメーカー。ポータブルなブックスキャナー「Shine Ultraシリーズ」やプロフェッショナル向けのドキュメントスキャナー「ETシリーズ」などをラインナップしており、いずれもAI画像認識による補正技術によって書籍を裁断する事なく非破壊で取り込む事ができるのが特徴となっています。
今回ご提供いただいたCZUR ET24 Proはそれらのラインナップの中でも最も高性能なモデルとなっており、厚みのある本(A3は35mm、A4は50mmまで)に対応。レーザー照射とAI補正によってページの曲がりを検知して補正でき、搭載するカメラは2,400万画素・320dpiとCZUR最高クラス。HDMI出力にも対応するほか、取込用のソフトウェアはWindows・macOSに加えLinuxにも対応しています。
パッケージ内容
こちらがCZUR ET24 Proのパッケージ。
冊子類の入ったスリーブの下には撮影用リモートボタン、電源アダプタ、撮影用フットペダル、USBケーブル、ページ固定用の器具などが箱分けして収められており、点数が多いながらに必要なものが一目でわかりやすいパッケージングになっています。
スリーブにはマニュアルのほか、ソフトウェアのダウンロード手順書とインストールディスクが付属。
同梱物を並べたところ。
左の電源アダプタは地域ごとのプラグ形状のアタッチメントが付属しており、日本以外の国でも同じ電源でそのまま利用可能。
中央のカメラアイコンのプリントされたリモコンは右側のフットペダルと排他利用で、どちらかを使う形となっています。
黄色い器具(指サック)は指に嵌めて書籍のスキャン時にページの端を素早く押さえるためのもので、バーコード状のプリントを認識してスキャナーが画像処理時に画像から取り除いてくれます。
ET24 Proの外観
こちらがET24 Proの外観。卓上ライトのような形状をしており、台座に操作ボタン、上部にカメラやインジケーター類が集約されています。
上部にはカメラ映像を確認できる小型のプレビュー画面が備えられており、PCなど外部出力無しに画角を確認できるようになっています。
台座には銀色の操作ボタンが右側に並んでいます。
背面にはHDMI出力端子、リセットボタン、外部リモコン用(フットペダル含む)のUSB端子、PC接続用のUSB端子、電源入力端子、電源オン・オフスイッチが配置されています。
上部からまっすぐ照らすと反射が映り込んでしまうため、CZUR ET24 Proには斜めから照らせる補助ライト(サイドライト)が付属。
首の背面にはライト装着用の溝が設けられています。
サイドライトを装着したところ。背面の電源ボタンでオン・オフができます
付属の作業マットを設置したところ。この上に書類や書籍を設置する事で自動で認識して取り込むことができます。
アシストカバー(オプション)
厚い本を取り込む際に表紙部分を隠してスキャンを補助してくれる、オプションのアシストカバー(一般販売予定価格6,000円)も今回試す事ができました。
アシストカバーの実体は、端に面ファスナーと耳のついたロール状の2つのレザーシート。これで本の表紙部分を挟む事で、スキャナーに映らなくすることができます。
実際にアシストカバーで本の表紙をカバーしているところ。ティッシュ箱の口のように中央から中身のページ部分だけ出す事ができるため、スキャンの際に表紙が写り込みやすい厚みのある本では特に効果を発揮します。
スタジオボックス(オプション)
スキャンの際に均一に照明を当て、反射・影の映り込みを防ぐスタジオボックスもオプションとしてラインナップ。こちらは一般販売価格は13,000円となっています。
機材一式は持ち運べるトートバッグ状のケースに収納されています。
こちらが中身。ボックスの布部分のほか、骨組みとして8つのジョイントと12本のポール(上下連結式)が含まれています。
ポールは上下を連結して組み上げます。説明書ではポールと連結パーツで立方体を組み上げてから布部分を被せるように説明されていますが、かなりタイトに設計されているため内側に組み込みながらポールを連結すると楽でした。
また12本のポールを上下連結、隅の連結パーツで結合、カバーを被せて面ファスナーで各辺を固定するといった手順が多いため、取り込みのために都度セットアップするには手間が掛かりすぎると感じました。
背面側にはケーブル類を通せる穴が設けられており、CZUR ET24 Proを中央に設置して裏からケーブルを繋ぐ事ができます。
CZUR ET24 Proを中央に設置したところ。内側は反射板となっており均一に照明を照らせるため、スキャンの仕上がりを求める方には重宝するでしょう。
ただしサイズが約60×60×60cmの立方体と大型で、設置にはかなりのスペースが必要かつ組み立て・解体も一般的な撮影ボックスよりも手間が掛かるため、都度片付けるには不向き。60×60cmの専用の撮影場所が確保できる方向けのオプション製品だと感じました。
ET24 Proの実際の使用感
続いて、実際にET24 ProをMacBook Proに接続して書籍を取り込んでみた使用感を紹介していきます。
ハンドボタン/フットペダルを使った取り込みは高効率
ET24 Proは背面のUSBポートに接続することで、ハンドボタンやフットペダルを接続して撮影を行うことが可能。これによって書籍のような取り込みにあたってページめくりが必要なスキャン対象でも、左右の手でページめくりとページ保持をしつつ撮影も並行して操作できて便利。
特にフットペダルに関しては足で撮影操作を行う事で左右の手が自由に使えるようになるため、かなり高効率に取り込みを行うことができると感じました。
一般的なカメラやスマートフォンを使った取り込みと、ET24 Proのような専用機器を分けるのはやはりこういった効率化のための操作方の部分でしょう。
ソフトウェアの本の四隅認識の精度はまずまず
実際に書籍を取り込んでいて感じたのが、やはり四隅の認識精度はまずまずというところ。指サックや指などを完全に除去して四隅認識し切れていないケースが時折あり、結果ページを押さえている手まで撮影に入ってしまい手動でトリミングするか撮影し直しになるケースが何度かありました。
またページめくりのたびに自動で撮影するモードも搭載されていますが、こちらは手動に比べて失敗率が上がりやすいため、使いこなせば高速に取り込む事ができそうなもののスムーズに取り込むにはかなりコツが必要な印象です。
そのため公称の取り込みスピードの「見開き2ページを1〜2秒」を達成できるのは条件が整っている時に限り、実際160ページの本を取り込むのには失敗分の修正も含めて約17分掛かりました。慣れれば操作の熟練度により何割かは速くなりそうに感じましたが、見開き2ページを2秒で取り込めても、安定して100ページを100秒で取り込むのは難しいでしょう。
本になっていない1枚の紙をスキャンする場合は傾いていたりしても綺麗に回転・トリミングして仕上げてくれますが、見開きの本を取り込む場合は切り抜きの精度がもう一歩欲しいシーンが多かったため、精度向上のためにもオプションのアシストカバーは必須アイテムと言えそうです。
撮影画質・画像フィルターは改善の余地あり
スキャン時の認識精度の次に気になったのが画質面。自動調整で文字のコントラストをはっきりさせてくれるのは活字の書類を取り込むには妥当な処理と感じますが、白飛び気味に写ってしまう事も多く、特に写真の入ったドキュメントの取り込み時には顕著。フィルターの種類をモノクロなどいくつかの種類から選択できますが、どのモードでも同じ傾向にありました。
上記は付属の書類のうちの一枚を比較的綺麗に取り込めた際のデータと元の書類をカメラで撮影したものと並べたものですが、薄い色や細い線などの処理は苦手な様子です。
暗い色の面積が多い物も非常に苦手なようで、挙動が分かりやすい例としては先日レビューしたMX Anyhere 3Sのパッケージを取り込むとこのように大きく露出オーバーで明るさを持ち上げて撮影してしまいます。塗りの面積が大きいページの場合露出オーバー気味な写りになりやすい傾向にあるため、この辺りのソフトウェアの制御は改善に期待したいところ。
実際に色々と取り込んでみた総評としては「線は得意、塗りは苦手」といったところ。はっきりとした白黒の活字やはっきりとした線だけで描かれた挿絵の取り込みは得意な一方で、細い線やコントラストの低い色、黒の面積の多いもの、写真などの含まれる書類の取り込みは苦手なようです。
USB接続でもWebカメラとして認識、HDMI接続時はズーム操作も対応で汎用性あり
ET24 ProはUSB接続時は専用ソフトへの接続だけでなく、汎用のWebカメラとしても認識される仕様。ZoomやDiscordなどのツールを介してインターネット越しに紙資料を共有したり、配信に活用したりといったことが可能です。
またHDMI接続時はボタン操作によるズームイン・ズームアウトに対応するため、プロジェクターやテレビなどに出力して書画カメラとしても活用可能です。どちらもデバイスとしての汎用性があり、単に専用ソフトを用いたスキャンツールにとどまらず幅広く活用できるのは嬉しいところ。
ビジネスシーンでデータの資料を紙に印刷して対面の会議に持ち込むシーンは一般的かと思いますが、この製品は逆に紙の資料をオンライン会議に持ち込むといった使い方ができるのが面白いところです。
OCRで検索できるPDF出力は便利、ただし処理は重め
取り込みソフトのCZUR Scannerは取り込んだデータをPDFや画像としてエクスポートできるほか、OCRを用いて文字起こしをし、検索できるサーチャブルPDFやWordなどのフォーマットでも保存が可能です。
ただしこのOCRを用いたOCRは重たい画像認識の処理を行うため、エクスポートに掛かる時間は動画並。家庭用PCとしては処理性能は非常に高いM1 Maxチップ・64GBのRAMを搭載したMacBook Proであっても160ページの書籍をサーチャブルPDFとしてエクスポートしてみたところ、所要時間は9分以上でした。
実際にこの機能で取り込んだ書籍を検索してみたところ日本語の検出精度も実用的で、紙媒体の書籍をテキストで検索できるサーチャブルPDF自体は非常に有用性が高く便利ではありますが、通常のPDF出力と比べると所要時間は長い点は注意です。
総評:ハードウェアの効率は抜群、ソフトウェアの精度と画質が課題
実際にCZUR ET24 Proを使ってみた総括としては、やはり非裁断で書籍を取り込むカメラとして特化しているだけあり、フットペダルを用いてシームレスにページを次々とめくって取り込むフローは専用機器ならではの効率性が実現されていると感じました。
一方で、認識精度を含むソフトウェアの完成度や、カメラ自体の画質の低さは使っていて気になったところ。実際に取り込み作業をしていると認識に失敗してやり直しが発生したりといった事があったので、ここの精度を高めればハードウェア的な効率の良さを最大限活かせると感じました。また画質に関しても活字の取り込みには十分ですが、挿絵や写真などが含まれる書籍を取り込む際は画質の低さが気になるところです。
オプションのアシストカバーやスタジオボックスは確実に取り込みのクオリティを高めてくれるアイテムですが、スタジオボックスに関しては60×60×60cmのスペースを確保する必要がある上、素早く組み立て・解体が出来ない機構のため、基本的に設置したままにできる広いスペースがある方向け。構造的に外周を覆うだけの機能で照明などの重量物が上に乗るわけでもなく耐荷重は不要なので、他社の一般的な撮影ボックスのように骨組み無しで簡単に組み立て出来る折り畳み式のものを採用してほしかったところです。
CZUR ET24 Proの特性を総括すると、フラッグシップモデルといえど画質の性質からイラスト・写真中心の書籍を電子化して鑑賞を楽しむには向いていないと感じた一方で、活字の書類を高効率に取り込んでPDF化・OCRで検索可能にするといった紙媒体の情報の電子化には力を発揮するデバイスだと感じました。
Makuakeで最大35%オフの応援購入が8月3日より開始
CZUR ET24 Proの一般販売予定価格は94,500円の予定。また、一般販売に先駆けてMakuakeにて本日2023年8月3日の11時から10月4日18時まで最大35%オフで応援購入が可能となっています。
Makuake公開時点での最安の応援購入プランの価格は以下のとおり。
- アシストカバー 6,000円→3,900円
- スタジオボックス 13,000円→8,450円
- CZUR ET24 Pro×1台 94,500円→61,430円
A4サイズで50mmまでの厚みの書籍の非裁断での電子化、複数認識・フットペダルといった仕組みによる効率的な書類の大量取り込み、サイドライトを含むオールインワンの撮影セットによる照明の映り込みを抑えた取り込みなどはET24 Proのユニークなポイントとなっており、それらを活用して紙媒体の原本を保持したまま高効率な電子化・検索を行いたい方は是非Makuakeでチェックしてみてはいかがでしょうか。