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iPad miniに感じた違和感を解消すべく、1ヶ月使い込んで分析してみた

kirica

発売日にアップルストアに並びiPad miniを一番乗りに手に入れたうちの一人の筆者ですが、感じた数々の違和感からこの機械のレビューは慎重に書く必要があると感じたため、1ヶ月間かけて使った所の感想を満を持して書こうと思います。

なぜiPad miniは7.9インチなのか?

なぜ、iPad miniは7.9インチのサイズで、768×1024ピクセルの解像度という今の形になって発売されたのか、考えてみました。

そもそもAppleのiPad miniのページで真っ先に目に入る、片手で持っているこの写真。あたかもiPad miniが片手で持てるかのような印象を与える写真ですが、多くの日本人の手のサイズではこんな持ち方はできません。7.9インチは、片手で使うには明らかに大きすぎるサイズです。

筆者も決して手が大きい方ではないので、写真のようなiPad miniの「片手持ち」は出来ませんでした。

AppleはiPhoneに関しても初代からiPhone 4Sまで画面サイズを一貫し、4インチへの大画面化を図ったiPhone 5でも手の小さいユーザーでも画面の端から端まで指が届くよう配慮されており、大画面へ流れる傾向にあるスマートフォン市場の中でも小型ディスプレイの方針を曲げる事はしませんでした。

では、何故iPad miniはこのような中途半端なサイズで世に送り出されたのか。順番に紐解いてみました。

「iPad miniの画面密度は163ppi」


長年Apple製品のスペックを眺めてきたユーザーの中には、この数字にピンと来る方も居るかと思います。そう、163ppiとは、iPhone 3GS以前のiPhoneと全く同一の画面密度なのです。

iPadでiPhoneアプリをインストールすると「2倍に引き延ばして利用する」「原寸大で利用する」の2つの選択肢がありますが、iPhoneアプリをiPad miniで原寸大表示した場合iPhone 3GSで表示したそれと全く同一の物理的サイズになります。



上記はiPhone専用アプリ新型中二病をiPad miniとiPhone 4S(iPhone 3GSと同一の画面サイズ・2倍のピクセル密度)の2台で表示した所。見ての通り、全く同じサイズで表示されています。

iPad mini上で表示される画面上のUIパーツのサイズは、iPhone 3GSのそれを完全に継承しているのです。

Apple Developerサイトの日本語ドキュメント内でもPDFがダウンロードできますが、Appleはアプリ開発者に向けて厳しいiOSヒューマンインターフェイスガイドラインを設けています。人間の指で押しやすいボタンのサイズの下限に関しても言及されていますが、7.9インチ・768×1024というサイズはずばりこのiPhoneのヒューマンインターフェースガイドラインに重ねられた物だったと考えられます。

Appleは7.9インチが最適なサイズだと強く確信していると公式ビデオにて言及していますが、7.9インチ・768×1024・163ppiという仕様はApple社内で議論され、これが計算され尽くされた結果の数字だと分かります。

iOS App Storeに蓄積された768×1024の解像度の過去のiPad専用アプリの巨大な資産を継承しつつ、同社の厳しいインターフェースのガイドラインに落とし込める唯一無二のサイズ。それが7.9インチだったのでしょう。

仮にiPad miniがこれより小さかった場合は9.7インチ用に設計されたiPadアプリの操作性がApple自身の基準を満たさず、より大きかった場合でもフルサイズのiPadとの差別化も難しかった事から、7.9インチ以外の選択肢が無かったのではないでしょうか。

なぜRetinaでは無かったのか?

iPad miniの対抗機種としてよく挙げられるGoogleのNEXUS 7は解像度800×1280の216ppiという高密度で、対するiPad miniの163ppiは流石に画像が粗すぎるのではないかという声は両者を比較した誰もが言及する点です。

対抗機種がいくら高解像度であろうと、先述した既存のiPadアプリ資産を引き継ぐ事を考慮するとAppleには768×1024もしくはフルサイズiPadと同じ1536×2048の解像度を持った高密度なRetinaディスプレイにするという2択しかありません。7.9インチのRetinaディスプレイを大量生産する事の技術的な問題を除いて検討した場合、なぜAppleは敢えて低解像度の768×1024を選んだのか。2012年春にリリースされたフルサイズの3代目iPadに着目するとその理由が見えてきます。

3代目iPadは前モデルのiPad 2からディスプレイが飛躍的にスペックアップし、768×1024から1536×2048になりました。その上バッテリー持ちは変わらず、1日中使える物となっています。その裏では重量と厚さを犠牲にしてまで搭載された内蔵バッテリーが1.8倍もの大容量化が図られ、動かすのに強力な馬力を必要とするRetinaディスプレイの消費電力を支えています。

そのような無茶をしてまで搭載されたRetinaディスプレイもその解像度が故にiPad 2より動作が重く、発売からたった半年で4世代目のLightningアダプタを搭載したiPadにモデルチェンジされてしまいました。たった半年でiPadをモデルチェンジしたのは今回が初めての事で、いかに重荷であるRetinaディスプレイを支えるグラフィック性能のアップグレードが緊急課題であったかが分かります。

このように、AppleのiPad用Retinaディスプレイの搭載は高いスペックを必要とし、それを支える大容量バッテリーを搭載する事によって解像度は本体重量とのトレードオフにならざるを得ないのです。つまりiPad miniにRetinaディスプレイを搭載した場合、現状では「重量が重たくなる」か「バッテリー持ちが半減する」かの2択になり、魅力の一つである手の出しやすい本体価格も高騰する事になるでしょう。

このような条件から見るにiPad miniが「7.9インチ・768×1024」で発売されたのはやむを得ない選択肢であり、他に方法は無かったのではないでしょうか。

本当に電子書籍に向いているのか?

一旦考察から実際使ってみた感想に入りますが、実際「7インチタブレットは電子書籍向け」という一般的な売られ方に対してiPad miniは実はそうではないのではないか、というのが使ってみた正直な感想です。



AmazonのKindleストアで購入した電子書籍版の漫画「To LOVEるダークネス」をNEXUS 7、iPad mini、iPad(第3世代)で表示させた所。

iPad miniでコミックを読む場合は画像の粗さは遠目ではあまり気になりませんが、片手で読むのであれば解像度が勝っている上に片手で持ちやすく、自由度の高いAndroidの恩恵で側面にある物理ボリュームキーでページめくりができるNEXUS 7の方が圧倒的に快適です。片手で持てる上にボタンを押すだけでタッチパネルに触れずにページめくりが出来る快適性に慣れると、片手には少し余るiPad miniで読むのは億劫になります。

一方でくつろぎながら大画面のRetinaディスプレイで楽しむ電子コミックはiPad miniのそれより遥かに美しく、やはりこれもフルサイズiPadが快適なのでiPad miniに戻るのは億劫になってしまいます。

では、より多くの文字を表示する電子書籍はどうでしょうか。



同じくKindleストアで購入した津田大介さんの「ウェブで政治を動かす!」を表示した所。といっても一般的なPCのディスプレイで表示しても分かり辛いかもしれないので、参考までに拡大した画像が以下の通り。



日本語の本は英語圏と比べて複雑な漢字を利用しているが故に差がつきやすいというのもありますが、正直勝負にならないレベルで読みやすさに差があります。RetinaディスプレイのiPadでの読書体験に慣れてしまうと、iPad miniでの読書は苦痛にすら感じてしまいます。

どうやらiPad miniは、(日本語圏では特に)電子書籍向けでは無いようです。

動画鑑賞に関しても近い感想で、メディアプレイヤーとして意気込んで32GB版を購入したものの、解像度の低さが故にメディアプレイヤーとしての使い道は手持ちのフルサイズのiPadに譲る形になってしまいました。

初代iPadを発表した時のスティーブ・ジョブズの言葉の中でも「ネットブックはただの安いノートパソコンで、何もかもがノートパソコンの快適性に劣っている(iPadにはそれが出来る)」という旨の発言が非常に印象に残っていますが、このままでは「iPad miniはただの安いiPadで、何もかもがiPadの快適性に劣っている」という完全な廉価版iPadに成り下がってしまいます。

iPad miniが得意な分野とは、果たして何なのでしょうか。

意外にも快適なキーボード

筆者がiPad miniを購入するにあたって、実は最も気にしていたのがキーボードです。フルサイズの9.7インチiPadのソフトウェアキーボードはMacと同じキーピッチを実現しており、Macを使い慣れた身としてはソフトウェアQWERTYキーボードの中では格別に使いやすいと感じていたがために、iPad miniではこれがどこまで妥協された小さなキーボードになってしまうのか、という点で不安でした。



フルサイズのiPadと比較すると流石に小さいですが、これが思いの外打ちやすいと感じました。

いくつかの7インチAndroidタブレットを触ってきた感想としてはどれもキーボードが非常に狭く打ちにくい物でしたが、冒頭で触れたヒューマンインターフェースガイドラインに沿ったサイズである事も影響しているのではないでしょうか。

横向きの場合フルサイズiPadとかけ離れない程度の感覚で両手でタイピングができ、縦向きに持った場合も両手で親指打ちするキーボードとして悪くないサイズだと思いました。

筆者は従来のiPadのキーボードに慣れているがために意見に大きなバイアスがかかっている所ではありますが、個人的にはかなり満足したポイントです。

iPad miniのキラーアプリは電卓?

個人的に数ある用途の中で最もしっくりはまったiPad miniの用途は「Calcbot」という電卓アプリでした。CalcbotはメジャーなTwitterクライアント「Tweetbot」をはじめとする独特の音とグラフィックによる世界観を持つアプリ開発チーム「Tapbots」が公開している計算機アプリ。大きめのボタンや分かりやすい画面構成のお陰で、「フルサイズのiPadでは大きすぎる」「iPhoneでは操作し辛い」という絶妙な卓上スペースにその居場所を確立させました。

電卓だけでなく、「デジタル大辞泉」などの電子辞書アプリや「Reeder for iPad」のような情報収集アプリなど、入力と閲覧を程よいバランスで行う補助的なアプリがiPad miniの利用スタイルに最も適しているのではないかと感じました。

iPad miniはアプリの新しい楽しみ方の開拓

1ヶ月使ってはみたものの、実を言うと筆者はまだiPad miniのポジションが生活において確立していません。電子書籍や写真、動画などのマルチメディア観賞用としてはフルサイズのiPadの快適さには遠く及ばず、コンパクトさにおいてもポケットに入れるにはやや無理があるサイズなので結局フルサイズiPad同様居場所はカバンの中です。持ち運ばない日もあります。

一方でその絶妙なサイズはiPadと決定的に違うライフスタイルの隙間に入り込んでいる事は明らかで、既存のアプリ資産を引き継ぐ上での必然が生んだ7.9インチというサイズは今までのiPadアプリに全く別の側面を見せてくれます。結論を保留にする無責任な発言かもしれませんが、アプリの数だけiPad miniの可能性は広がっています。

Retinaを捨てた事によるバッテリー持ちと軽さを考えると数多くのiPad用ゲームが楽しめる「ゲーム機」としても優秀だと思います。重量は従来のiPadの半分なので腕が疲れず長時間のプレイが可能で、その軽さをもって画面面積も従来の約8割をキープしているので操作面も心配が要りません。

使ってみて確実に変わった見解としては、従来型のiPadの8割の面積を確保したそのディスプレイの恩恵は主にマルチメディアビューアーとしての性能にあるのではなく、優れた操作性の保持にあるのだと確信しました。

まだiPadを持っていない方も、既に大きい方のiPadを持っている方も、無数に広がるiPadアプリの世界を楽しめるデバイスがiPad miniなのではないでしょうか。

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