BenQのデザイナー向けディスプレイの最新モデル「PD2700U」をレビュー用にお借りして実際に使ってみたので、紹介していきます。
PD2700UはBenQのデザイナー向けディスプレイの最新モデル。以前レビューしたPD2700Qと同じく使いやすい27インチのサイズはそのまま、解像度がWQHD(2560×1440)から4K UHD(3840×2160)にアップしています。
ディスプレイのパネルは10-bitカラー対応のIPSディスプレイで、sRGBとRec.709の色空間を100%カバー。デザイナー向けを謳っているだけあり、広い色域をカバーして作業することができるディスプレイとなっています。
主なスペックは以下のとおり。
サイズ | 27型ワイド |
---|---|
アスペクト比 | 16:9 |
パネル/バックライト | ノングレア・ IPS / LED |
解像度 | 3840 x 2160 (4K UHD) |
画素ピッチ(mm) | 0.155 mm(画素密度 163ppi) |
視野角 (左右/上下) (CR>=10) |
178°/178° |
表示色 | 約10億7000万色 |
表示サイズ(mm) | 596.74 x 335.66 mm |
輝度 | 350 cd/㎡ |
応答速度 | GtoG 5ms |
コントラスト比 | 1300:1 |
走査周波数 | 水平:27-140KHz 垂直:24-76Hz |
ティルト角度 | 上下:-5°/20° |
高さ調整 | 140 |
スウィーベル | 45° /45° |
HDCP対応 | ○ |
VESAマウント | 100 x 100 mm |
パッケージ
PD2700UはPD2700Qの箱と比べるとパッケージはシンプルなものに。
工場出荷時の個体別キャリブレーションレポートが付属しています。
付属品は以下のとおり。
- 電源ケーブル (1.8m)
- HDMIケーブル (1.8m)
- mini DisplayPort to DisplayPortケーブル (1.8m)
- USB3.0 (type A-B)ケーブル (1.8m)
USBケーブルはPCからモニターに入力してUSBハブとして使えるほか、2台のPCで同じUSBキーボード・マウスを使う際にモニター側で切り替え機能を使うことができるようになっています。
外観
こちらがPD2700U本体。直線的なラインと狭額縁で主張しないスタイリッシュな外観となっています。
背面。本体から出たケーブルはスタンドの穴にまとめて通して後ろに出せるのが便利。
上部は取っ手となっています。
台座は箱から出して自分で組み立てるタイプですが、写真のとおり手回しできる形状なので特別な工具は不要です。
端子・ボタン
背面の端子類はこのとおり。HDMI、DisplayPort、mini DisplayPortの順に入力端子が並んでおり、その隣にはDisplayPort出力端子を搭載。MST(マルチストリーム転送)に対応しており、最大4台までのモニターを連結して同時に使用することができるようになっています。本体のスピーカーからも音が出せる他、3.5mmのヘッドフォンジャックも搭載。
右側はUSB端子となっており、USB type Bの2つの入力はそれぞれ違うPCに接続し、USB type Aの4つのポートをそれぞれのPCで切り替えて使うことができる「KVMスイッチ」機能を搭載しています。
本体右側下部にはボタン類が配置されており、オンスクリーンディスプレイで本体の操作を行うことが可能。電源ボタンのみ光るインジケータを兼ねています。
モニターの回転・高さ調整
モニターの台座の付け根の部分は横に首振り調整が可能。台座部分を動かすことなく角度を調整することができるのは便利。
モニターの高さ・角度調整機構も搭載。一番下がこの高さ。
一番上に持ってくるとこの高さとなっています。
モニターの付け根は右に90度回転して縦向きに使う事も可能。
2つの入力を同時に表示するPIP/PBPモード搭載
2つ以上の入力端子を使っている際、2つの入力を重ねたり隣同士で同時に表示することのできるPIP(Picture In Picture)/PBP(Picture By Picture)モードが搭載されています。
PIPモードでPCの画面にNintendo Switchの画面をオーバーレイしたところ。PCで生放送や実況等を見ながら同時にゲームができて便利です。
なお、手前にオーバーレイする画面の位置は四隅から選ぶことができ、表示サイズも三段階から選択可能。
こちらはPBPモード。2つの映像入力を同時に確認しなければいけない時に便利です。PD2700Uは解像度が4Kあるため、左右にFullHDの映像入力ソースを出してもしっかりフル解像度で表示することができるのもポイント。
多彩な表示モードに対応
PD2700UはsRGBとRec.709の色空間での表示モードは勿論のこと、作業内容に応じて快適に使えるよう、最適なモードを備えています。
HDR非対応の通常のSDR映像ソースもHDRエミュレートできる「HDRモード」、3Dのカラーラインをはっきりと表示することのできる「CAD/CAMモード」、画像の暗い部分も明るく確認しながら作業できる「デザイン(アニメーション)モード」、部屋の明るさを落としてディテールを調整するのに最適な「暗室モード」、ブルーライトを抑えて眼の疲労を軽減する事ができる「ブルーライトカットモード」から切り替えて使う事が可能です。
ほとんどのモードでは環境光に応じて明るさを自動調整する機能が利用できるのも便利なところ。ノートパソコンやスマートフォンでは当たり前の機能ですが、デスクトップPC用のモニターでもこれをしてくれるのはありがたいところです。
実際に使ってみて
まず、前回のレビューで使ったPD2700Qと比較して解像度以外で大きく変わったと感じたのが、周囲のベゼルの細さ。シャープなデザインと主張しない筐体色と相まって、とても作業に没入しやすい外観だと思いました。本機はMST(マルチストリーム転送)に対応しており数珠繋ぎ式に複数枚並べて使うことができますが、複数台揃えて並べるにも最適なベゼルの細さ・形状となっており、機能を最大限活かす事のできる形になっています。
4Kの解像度と広い色域はフォトレタッチにも最適。高解像度のおかげで拡大しなくてもピントの当たっている場所がピンポイントで分かり、ディテールの調整も捗ります。また、ディスプレイがノングレアなので疲れにくいだけでなく、部屋の明かりの映り込みも少なくレタッチ作業しやすのもポイント。
デザイン作業周りの作業でも、今時の高解像度スマートフォン向けのUIは制作側の解像度が求められるため、やはり4K以上は必須。その上で、PD2700Uは本体の台座に調整機構が搭載されているため、作業内容に応じてモニターを縦置きして縦の情報量が必要な作業に柔軟に切り替えられるのが良い所。UIのグラフィックを起こしたり、コードを書いたり、ドキュメントを確認したりといった色々な作業で縦横画面を使い分けるユーザーはモニターアーム不要で手軽に調整ができて重宝します。
デザイナーが欲しい要件をリーズナブルな価格で満たしてくれるバランスの良いモデル
PC用4Kモニターは手の届く普及モデルが出揃ってきてから数年が経ちますが、やはりデザイナーが使う用途で欲しい要件を満たしたものを探していくと、普及モデルでは性能不足を感じる部分もあります。一方でハイエンドモデルを購入するとなると、やはり予算が限られていると難しいところ。
そんな落とし所にしっくりくるのがこのBenQ PD2700Q。4K解像度、HDR対応かつsRGBとRec.709の色空間を100%カバーしており、モニターの角度方向も柔軟に変更可能。マルチディスプレイ環境を見据えても複数台を数珠繋ぎして配線を綺麗にまとめられるマルチストリーム転送や狭額縁による収まりの良さなど、デザイン用途での使い勝手に上手くハマる製品です。
これらの要件を満たしていながら実売価格はAmazonにて約6万円前後なのはやはりお買い得感が大きいのか、PD2700Uは発売翌月の2019年1月現在でも品薄気味。個人的には以前の製品は必須だった4K解像度が無かったので響かなかったのですが、今回は満を持して4Kに対応。良いディスプレイが登場したものだと思いました。