Xperia 8レビュー。複数アプリが便利な21:9の超ワイド画面が3万円台から使える尖った格安スマホ

先日auUQモバイルY!mobileから発売されたソニーの低価格スマートフォン「Xperia 8」が気になったので、買ってしばらく使ってみました。


Xperia 8はXperia 1、Xperia 5などの「21:9」の超ワイドなアスペクト比のディスプレイはそのまま、スペックを抑えて低価格を実現したモデル。Xperia 1、Xperia 5の廉価モデルの位置付けとして併売しているauのほか、そのauのサブブランド「UQモバイル」とソフトバンクのサブブランド「Y!mobile」から「初のXperia」として導入されたことで話題になった機種でもあります。

元になったベース機種は海外向けの低価格普及モデル「Xperia 10」となっており、処理性能などはそのまま、国内市場に向けて防水防塵・おサイフケータイなどの機能を追加しています。

実際の価格はと言うと、定価は約5万円〜5.5万円ほどに設定されていますが、auオンラインショップの機種変更価格が約3.9万円、UQ mobileでは新規契約で35,640円、Y!mobileでも新規契約で35,784円、最大3万円相当のヘッドホンが当たるキャンペーン付きと、かなりお買い得に手に入る機種となっています。

スペック

Xperia 8のスペックは以下のとおり。

プロセッサ Snapdragon 630
サイズ 約69×158×8.1mm(最厚部 9.7mm)
重量 約170g
バッテリー 2,760mAh
RAM 4GB
内蔵ストレージ 64GB
外部ストレージ microSD(512GBまで対応)
画面サイズ 6.0インチ
画面解像度 2,520×1,080(FHD+)
防水 IPX5/IPX8
防塵 IP6X
生体認証 指紋
おサイフケータイ 搭載
メインカメラ 広角約1,200万画素+望遠800万画素
インカメラ 約800万画素

いわゆる「ミドルレンジ」なスペックとなっており、普及機らしい性能。同じ価格帯で人気を博しているSnapdragon 710、RAM 6GB搭載の中国メーカーのスマホOPPO Reno Aと比べるとプロセッサがSnapdragon 630、RAMが4GBと処理性能的に劣るスペックとなっていますが、防水防塵、おサイフケータイ、指紋認証あたりはしっかりカバー。バッテリー容量も2,760mAhとやや少なめといった感じです。

ベンチマーク


AnTuTuベンチマーク、Geekbenchの2種類のベンチマークソフトを走らせた数値は上記のとおり。AnTuTuスコアは10万点台となっており、Reno Aの18万点と比べるとSnapdragon 630の処理性能の低さが数字に出る格好となっています。言わずもがな、ゲームなどの重たいアプリには向かない性能となっています。

Xperia 5とXperia 8の違い


ほぼ同じサイズのXperia 5とXperia 8ですが、生い立ちとしてXperia 1のコンパクトモデルとして登場したXperia 5に対し、Xperia 10の国内モデルとして登場したXperia 8はスペック的に大きく異なります。まとめると以下のとおり。

Xperia 8 Xperia 5
本体サイズ 約69×158×8.1mm 約68×158×8.2mm
重量 約170g 約164g
バッテリー 2,760mAh 3,000mAh
RAM 4GB 6GB
画面種類 液晶 有機EL
HDR 非対応 対応
画面サイズ 6.0インチ 6.1インチ
プロセッサ Snapdragon 630 Snapdragon 855
ワンセグ・フルセグ 非搭載 搭載
カメラ 広角+望遠 広角+望遠+超広角
手ブレ補正 電子式 光学式+電子式ハイブリッド
イヤホンジャック あり なし

サイズだけ見れば2台とも高さは全く同じで、幅・分厚さもそれぞれ1mmずつしか変わらない同じサイズ感の筐体。その中にXperia 5は6.1インチのHDR対応有機EL、Xperia 8は6.0インチの液晶(液晶トリルミナスディスプレイ for mobile)を搭載しています。ただXperia 8も液晶ではあるものの「トリルミナスディスプレイ for mobile」を冠しており、スマホのディスプレイとしては綺麗に感じます。

Xperia 5はフラッグシップモデルのXperia 1ゆずりの処理性能や超広角カメラを含むトリプルカメラ、光学式手ブレ補正を搭載。一方Xperia 8はカメラはデュアルで、光学式手ブレ補正非搭載。薄暗い場所での手持ち撮影などで気になりそうな部分です。

しかしこれだけ性能に差があるだけあって、やはり価格差も歴然。両機種の取り扱いがあるauの価格で比較するとXperia 5が90,720円、Xperia 8が49,680円。約4万円ほどの価格差となっており、似たようなサイズ感の同じXperiaながらXperia 8の安さが際立っています。

パッケージ

今回購入したのはY!mobileオンラインストアで販売されているY!mobile版。コンパクトでシンプルなパッケージです。

低価格モデルだけあり、パッケージの中身も最低限。イヤホンやケーブルなどの同梱品は一切入っていませんでした。Y!mobile版であればソニーのイヤホンが当たるキャンペーンを実施していますが、基本的にその手のアクセサリは別売のものを入手する必要があります。スペックの項目でも取り上げた同価格帯のOPPO Reno Aはケーブル、充電器、イヤホン、ケースのフルセットが含まれているだけに、かなり対照的です。

Xperia 8の外観

こちらがXperia 8。色は「ホワイト」を選んでみました。上部にはインカメラと受話口あるため枠が太くなっていますが、下部は狭額縁なのが特徴です。

背面はガラス素材で出来ており、質感は良好。

背面ロゴは中央にSONY、下部にXPERIAの構成。キャリアロゴは無し。

デュアルカメラは大きく出っ張っており、中央に並んで左右に配置されています。またおサイフケータイロゴはプリントされておらず、NFCロゴを搭載。

本体下部にはUSB type Cポートを搭載。

左側面はSIM/microSDトレイのスロット。

取り外しの際はSIMピンは不要です。

上部には3.5mmイヤホンジャックあり。

右側面はボリュームと電源ボタン。

電源ボタンは指紋センサーを兼ねており、電源と指紋センサーが分かれているXperia 1やXperia 5と違う仕様となっています。

Xperia 1とのデザイン比較

手持ちのXperia 1と外観を比較してみました。

Xperia 1やXperia 5はフレームに光沢感がありますが、Xperia 8はつや消し加工。Xperia 1には電波を通すためのアンテナラインが入っていますが、Xperia 8はフレーム上下が金属、側面が金属風の樹脂となっているようで、このアンテナラインが入っていません。

Xperia 1は左右のベゼルがかなり細くなっているため、下部のベゼルと幅が変わっています。一方でXperia 8は左右のベゼルはXperia 1ほどは細くありませんが、左・下・右の枠の幅が均一に揃っており、個人的には見た目が綺麗に感じます。

上部のベゼルはXperia 1の細さが圧倒的。

指紋センサーは電源ボタン内蔵型のXperia 8と独立型のXperia 1で印象が異なります。どちらが良いかは好みが分かれるところかもしれません。

ちなみにXperia 8に搭載されている指紋センサー内蔵型の電源ボタンは従来のXperiaシリーズに採用されていたものと同じデザイン。Xperia X Compactと見比べるとこのとおり。同じですね。

21:9の画面はマルチタスクに便利

21:9の画面は縦持ちで同時に複数のアプリを使うマルチタスクに便利。画面上部で16:9のYouTube動画を再生したまま、その下で16:9の普通のスマートフォンのようにブラウザやSNSアプリを使えるのは「ながら見」にかなり重宝します。

横持ちでも16:9の動画を大きく表示しながら、その隣のスペースでちょっとだけ他のアプリを覗くといった使い方が可能。この画面で普通の16:9の動画を中央に全画面で出すと左右に黒帯が余ってしまいますが、そのスペースを有効活用できるのは便利。もちろん左右1:1に分割して両方とも同等に広く使う事も可能です。

21:9のシネマワイドサイズの動画を全画面再生できるのもこのアスペクト比の魅力の一つ。16:9の動画を上下クロップして鑑賞する事も可能です。トリルミナスディスプレイ for mobileの液晶は個人的にこの価格帯の機種の中ではとても綺麗に感じるため、サブスクリプション系のサービスでワイドな映画を楽しむ用途であればかなりコストパフォーマンスの高い機種だと思います。

ただ、スピーカーがモノラルな点は惜しいところ。ステレオであれば、動画鑑賞機としての価値は更に高かったのではないかと感じました。

片手操作に嬉しい「サイドセンス」が利用可能

Xperia 1やXperia 5などのフラッグシップモデルに搭載されている「サイドセンス」機能がXperia 8でも搭載されており、利用可能。ただ画面端が湾曲しているフラッグシップモデルの実装と違い、Xperia 8は画面端が平面のため、ガイドのバーがデフォルトで表示されるようになっています。

このサイドセンスを使うと「画面端を下になぞると戻る」「サイドセンスメニューから上下に分割するアプリを起動」など、片手でスイスイと縦長ディスプレイを操作する事ができるのでとても便利。ガイドがついている事もあり、何も無い画面端の僅かな発動エリアをピンポイントで操作しなくてはなかったXperia 1のサイドセンスと比べると発動のコツが簡単で、サイドセンスを使いこなすのに「修行」が必要とも言われていたXperia 1と比較してかなり優しい機種となっています。21:9の画面とセットでこの機能を使いやすく盛り込んできた点は高評価です。

カメラ性能

Xperia 8は通常の広角カメラに加え、2倍望遠のカメラを追加したデュアルカメラとなっています。超広角カメラは日搭載。2019年は同じ国産メーカーのシャープも低価格モデルのAQUOS sense3で超広角に対応、Appleも普及機のiPhone 11で超広角を追加してきた年だっただけに、他のメーカーでは撮れる超広角写真が撮れないのはユーザーとして素直に惜しいところ。

それでは実際の作例を紹介していきます。

早速料理写真。いくらの色が実物より濃く出ている印象で、SNS映え向けの味付けといった感じがします。

カラフルな料理は映える傾向なカメラですね。光量のある被写体だとディテール感も問題ない印象です。

少し暗めの店で撮ったもの。やはり光量が足りなくなると、ディテール感が露骨に損なわれてきます。

風景写真。こちらは食べ物とは違い、そこまで盛る印象は無し。

同じ場所から2倍望遠。広角と望遠でそこまで色味に誤差が無いのは使いやすそうです。

120fpsのスローモーションの動画撮影にも対応。

手持ちの夜景撮影。暗所でのピント合わせがとても苦手なようで、この写真もピンボケしてしまっています。光学式手ブレ補正も無く、手持ち夜景に関してはあまり期待できないカメラですね。

また、今まで長くXperiaを使ってきた身からするとXperia 8のカメラは大きな違和感を感じたポイントがもう一つ。シャッターキーが無いのです。物理ボタンでシャッターを切れるというのはXperiaに代々引き継がれてきた魅力であり、Xperiaの象徴の一つだっただけに、ここは惜しいところ。ここが無いだけでファンとしては「Xperiaのような何か」と感じてしまいます。

21:9の画面が格安で使えるのは他に無い魅力の機種

ソニーがUQモバイルとY!mobileの2つの大手キャリアサブブランドに初めて供給するXperiaという事で、低価格モデルながら防水防塵、おサイフケータイなどの国内需要に向けたカスタマイズをしっかり固めてきたのはとても堅実な印象。その上で、他社に無い21:9のディスプレイとそれを活かすソフトウェアもセットでしっかり盛り込まれているのは最新Xperiaの魅力を低価格で味わえる良い機種に仕上がっていると感じました。

一方でデメリットとして感じたのは、

  • スペックが低め(3Dゲームはかなり厳しい)
  • カメラに光学式手プレ補正が無い(暗所に弱い)
  • Xperiaのアイデンティティであるシャッターボタンが無い
  • スピーカーがモノラル

といったところ。スペックが低いのは低価格モデルだから仕方ない面もあるのですが、低価格モデル作りにこなれた最新の競合機種と比べると同じ価格でも性能での格差を感じやすいと思いました。カメラに関しては価格相応ですが、暗所にはかなり弱いのを考慮しないといけない機種です。モノラルスピーカーなのは低価格モデルとしては一般的ではありますが、画面が魅力的なだけに、動画鑑賞用にステレオにしていれば画面の魅力度もアップしていたのではないかと思います。

ともあれ、UQとY!mobileで新規の価格約3.5万円でこの21:9の画面が手に入ると思うと、縦長画面をピンポイントで求めている方には唯一無二の高コスパ端末に仕上がっているのではないかと思います。実際かなり持ちやすく、スマホのカメラに画質は期待していないけれども6.0インチのスリムな縦長ボディを片手操作でサクサクと沢山の情報をチェックしたい方にはこの上ない選択肢かと思いました。

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キリカ

ガジェットショットを作った人。本業はUI/UXデザイナー。趣味は理想のデスク環境作り、愛車「エリーゼ」「ジュリエッタ」でのドライブ、車旅を動画・写真に残す事。