前回のF800開封フォトレビューに続いて今回は音質やソフトウェア面でのレビューをお届けします。
3.5インチWVGA液晶を搭載
今回のウォークマンはZ1000と同じくWVGA(800×480)解像度の液晶を搭載しています。数値だけ見ると小さく見えますが、実際は3.5インチという画面サイズが手伝ってRetinaレベルとまでは言いませんが十分高精細な画面になっています。色温度は少し高めで暖色系。
タッチパネル感度はいいですが、精度はタッチしようとする場所よりやや低くなるためそこまで良いとは言えません。また、液晶の下にあるバック/ホーム/メニューキーはタッチパネルに比べると感度が低く、まれに反応しないことがあります。
Androidは殆どそのままのICSを、CPUにはTegra2を搭載。MSM8960などを搭載している最新スマホには及びませんが、それでも十分快適な動作をしてくれます。しかしメモリ容量は512MBと低く、同時に複数のアプリを開いて作業をするのには向かない印象です。
ミュージックプレイヤー「W.ミュージック」。
白黒を基調としたシンプルなデザイン
なんといってもウォークマンは音楽プレーヤー。デフォルトのミュージックアプリには従来のウォークマンの機能が多く移植されています。
UIは音楽再生画面が黒、それ以外は白を基調としていて、シンプルなデザイン。また、Androidアプリにしてはアニメーションが多く新鮮です。
イコライザ・クリアステレオなどお馴染みの機能に「ClearPhase」搭載で音質が向上
全体的に音質はより明瞭になりましたが、Aシリーズに比べると低音はあまり出なくなりました。
他にも自分好みに調整できるイコライザ、高音域補完機能DSEE、ステレオ感向上技術クリアステレオなど、いつもの音質向上機能も搭載。ノイズキャンセリングも搭載されています。
それに加えて新機能「ClearPhase」を搭載。この機能をオンにすることで曲のステレオ感・音の独立感がより強化。
また、こもった感じのする楽曲等もこの機能を利用するとかなり明瞭に聞こえるようになり、今回のウォークマンにおいてこの機能の追加は音質の向上に大きく貢献する機能だと感じました。
しかし音質に関しては主観による面が大きいため、是非読者の方直々に音質を確認して欲しいと思います。
製品登録で使い放題になる歌詞ピタ機能が便利
W.ミュージックの再生画面でジャケット部分を左右にフリックすると、再生中の領域(アルバム・プレイリスト等)の楽曲一覧と歌詞画面、楽曲詳細画面を見ることができます。
この中で特に便利なのが歌詞画面。ユーザー手動での入力もできますが、My Sony Clubにウォークマンを登録すると1年間ほど使い放題になる「歌詞ピタ」を利用すると、歌詞をタップするだけで該当部分までジャンプできるようになっており、曲を覚えたい時等反復をしたい時に重宝しそうです。
しかし、この機能を利用するにはx-アプリかMedia Goを利用しなければならない上に、データのダウンロードはお世辞にも快適とは言えないものです。Macユーザーに至ってはそもそもどちらのソフトも利用できないため、歌詞ピタ機能は利用できないことになります。
折角ドラッグ&ドロップでの楽曲転送で気軽にデータを送れるだけに、専用ソフトを利用しないとウォークマンのすべての機能が利用できないというのは勿体無いように思います。
楽曲を解析してジャンル分けする「おまかせチャンネル」
お馴染みの「おまかせチャンネル」も搭載。
楽曲を12音解析すると「アクティブ」「エモーショナル」「アップビート」など、テンポや楽曲の雰囲気で自動ジャンル分けをしてくれます。楽曲解析も1曲当たり3秒ほどでそこまで時間がかからないのも好印象です。
また、解析に更に時間をかける「詳細解析」も利用でき、これを使うことでビジュアライザーがより楽曲にあった動きをするようになります。
もう一つの機能に「カバーアートビュー」という画面上に散りばめられたアルバムアートワークからアルバムを選択する機能もありますが、動作も重く、またスクロールをしようとしてもアルバムを掴んでしまうなど使い勝手も良くないためこの機能に関しては首を傾げる点が多いです。
W.ボタンでいつでも楽曲操作
本体の側面に搭載されている「W.ボタン」を押すといつでも楽曲操作画面がポップアップされます。
他のミュージックアプリでもよく見る形式(左)もありますが、筆者がおすすめしたいのは右のスクリーンショットの画面です。
「W.コントロール」というこの機能を利用すると領域をタップで再生/一時停止、左右のフリックで曲戻し/送りの操作ができます。領域内ならどこを触っても操作できるため、ボタンを触る形式よりも直感的に、より気楽に利用することができます。
画面ロック中でも「W.ボタン」を押すことで呼び出すことが出来るので、少し余裕のあるポケットに入れている場合などは画面を見ずに操作することができます。タッチパネルモデルの宿命である「操作は画面を見ないとできない」を完全ではないものの克服した、工夫を感じる機能です。
しかし、この機能がロック画面でも呼び出せるからかなのかはわかりませんが、音楽再生中にロック画面に楽曲情報や操作ボタンが表示されません。音楽プレーヤーなのだから、iPhoneやiPodよろしくロック画面に再生中の楽曲アートワークを表示するなどの工夫は欲しかった所です。
電池持ちは至って平凡なAndroid。
ノイズキャンセリングの影響はおおよそ1時間
音楽プレーヤーとして使うなら電池持ちも気になります。いくつかの音楽だけを再生し続けたり、Wi-Fiに接続をしてブラウジングやTwitterをしてみたりと、幾つかのパターンで電池の減り具合を計測してみましたが、結果としては「至って普通のAndroid」という感じでした。
上のスクリーンショットは左が機内モードでクリアフェーズ、DSEE、クリアステレオ、イコライザをオンにした時のもの、右が機内モードでクリアフェーズ、DSEE、クリアステレオ、イコライザに加えてノイズキャンセリングをオンにした時のものです。再生音源はすべてATRAC 3plus 352kbpsで、画面をオンにするのは電池残量を確認する際のみにし、音楽をひたすら聞いた時の電池の減り具合を計測してみました。
ソニーが公式で掲載している電池持続時間(イコライザ等全てオフ、mp3 128kbps音源を再生時のもの)では無くあえて自分が一番快適に音楽を聞くことが出来る環境でテストをした結果、この環境では音楽をひたすら再生した場合はおよそ17時間連続再生でき、ノイズキャンセリングをオンにすると約1時間分電池の減りが早くなる事がわかりました。
人によって使うプレーヤーも楽曲形式も違うため一概には言えませんが、通勤時間などに少し聞くというような使い方をする場合なら数日間は充電をする必要性は無さそうです。逆に音楽を再生したまま寝落ちをしてしまうと半分近く電池残量が持っていかれる事になるため、AシリーズやSシリーズに比べると電池持ちは若干不安が残る印象でした。
良い点も多いがそれでも未完全な部分が目立つ
音質の向上や見やすいUIなど良い点が多く見られますが、それでも未完全な面が多く存在します。
先述の「存在意義を感じられないカバーアートビュー」や「W.ボタン頼りで他の工夫が感じられない」という点もあるのですが、それ以上に大きな欠点が2つあります。
それは「楽曲検索機能がない」ことと「プレイリスト編集機能がない」ことです。Xperiaに搭載される「Walkmanアプリ」で出来る事が本家ウォークマンで利用できないのは流石に作りこみが甘いと感じました。UI・音質はいいだけに、この二つの機能がないのはかなり大きな欠陥とも思えます。mp3やAAC形式で楽曲を管理しているユーザーならばPowerampなどの別のアプリを利用するという手もありますが、ATRAC形式で楽曲管理をしているユーザーは完全に生殺し状態に陥ることとなるため、「じゃあ別のアプリ使えばいいじゃん」だけでは片付けられない問題です。
プレイリスト編集機能は12月に追加されるとのことですが、検索機能も含めて、あって当たり前とも思える機能が最初から存在しないと「IME標準搭載OSであるAndroidを使う必要があるのか」という疑問が湧いてきてしまいます。
筆者個人的にはスリープタイマー機能がないのも痛い所です。AシリーズやSシリーズには搭載されている寝落ちしてしまった時のバッテリー浪費対策としてかなり効果的な機能であるため、同じウォークマンでありながら他のシリーズに搭載されている機能が存在しない事には落胆しました。この機能もプレイリスト編集や楽曲検索とともに追加して欲しい所です。
総評:音楽プレーヤーのおまけにAndroidを楽しみたい、
またはその逆の人向け。
です。
iOS端末しか持っていないから音楽プレーヤーついでにAndroidも使ってみようかなとか、Android端末がなにか欲しいしついでに音楽プレーヤーに特化してるウォークマンにしてみようかなとか、そういった人向けの端末という印象です。
単純に音楽再生のみを目的とするのならAシリーズやSシリーズ、音楽よりもエンタテインメント性を重視するのならiPod touchを選ぶ方が無難かもしれません。
しかしタッチパネルモデルのAシリーズは生産終了となっていますし、F800がこれまでのウォークマンの中でも最も音質が良い事は確かです。
音楽と一緒にAndroidも楽しみたいという人におすすめできるモデルだなと思いました。未完成な部分はこれからのアップデートに期待するのもいいかもしれませんね。