HP Chromebook x360 13cレビュー。iPadとMacBookの長所を半分ずつ集めた4G搭載高級モデル

世界の通年OSシェアにおいて、2020年にはmacOSを抜いてWindowsに次ぐ2位に躍り出たと言われているChromebookのChrome OS。飛ぶ鳥を落とす勢いのChromebookですが、そのポテンシャルを知るべくハイエンドモデル「HP Chromebook x360 13c」を買って実際に使ってみました。


2011年に最初のChromebookが発売されてから、今年2021年で10周年。長らく影の薄い存在でしたが、今年2月に発表されたMM総研の調査によるとChromebookの日本の公立小中学校では43.8%のシェアとなっており、近年は海外だけでなく日本の教育現場でも急激にシェアを伸ばしています。

Chromebookは従来のWindowsパソコンと比べるとクラウドサービスを強く意識した設計となっており、ローカルのアプリではなくGmailやGoogleドキュメントといったWeb上のサービスを中心に使っていくという前提から、多くの機種が最低限のスペック。

低スペック・低価格でも快適に動くという売りでローエンドモデル中心に売り上げを伸ばしているChromebookですが、実際に春先に物は試しと好奇心で購入した実売価格2万円以下のASUS Chromebook C223NAを触ってみたところ、4GBのRAMにCPUはCeleronという極めてミニマルなスペックの非力なマシンながら十分に快適でChrome OSの魅力を感じることができました。

起動もスピーディで、名前のとおりChromeが快適にサクサクと使え、TwitterやYouTubeなどの普段PCのブラウザから使っているWebサービスも十分実用的。加えGoogle PlayからダウンロードしたAndroidアプリも使えるため、Adobe Lightroomなどの一部クリエイティブ系のツールもAndroidタブレットのように動かすことができます。

これはハイスペックモデルで化けるのではないか……?」と思い良い機種は無いかと思っていたところ、タイミング良く2020年12月に発売されたHPのハイエンドモデル「HP Chromebook x360 13c」がセール対象になっているとの情報を入手。全モデルLTEとWiFi 6を標準装備し、指紋認証や視野角制限機能のHP Sure Viewといったセキュリティ機能、BANG & OLUFSENスピーカー、MIL規格適合の堅牢な筐体といったフラッグシップらしいてんこ盛りのモデルな上、今回購入したのは第10世代Core i7-10510Uプロセッサ・16GBのRAM・256GBのSSDストレージというChromebookらしからぬ潤沢なスペックを盛り込んだ最上位のスイートモデル。

通常価格は173,800円と潤沢な装備相応のプライスタグが掲げられていますが、HP直販サイトにて今回6月中旬頃に実施されていたセールでの価格がなんと78,000円。調べた限り過去最安値を記録する約10万円引きということで、迷わず購入に至った次第です。

それでは、実際の使用感をレビューしていきます。

HP Chromebook x360 13cスペック比較

HP Chromebook x360 13cには3種類のモデルがラインナップしており、今回購入したのはスイートモデル(S3)。比較表は以下のとおり。


スイートモデル(S3)

エグゼクティブモデル(S2)

スーペリアモデル(S1)
CPU Core i7-10510U Core i5-10210U Core3-10110U
メモリ 16GB 8GB 8GB
ストレージ 256GB 256GB 256GB
画面サイズ 13.5インチ 13.5インチ 13.5インチ
画面解像度 1920×1280 1920×1280 1920×1280
重量 約1.36kg 約1.36kg 約1.36kg
価格 173,800円 151,800円 140,800円

基本スペックは共通しており、画面の解像度なども同じ。ストレージもすべて256GBの物を搭載しています。違いはCPUとメモリ容量となっており、スイートモデルはCPUがCore i7-10510U、メモリが他のモデルの2倍の16GBとなっています。

2021年現在、一般的に販売されているChromebookのメモリは4GBが主流。その4倍の16GBを搭載したスイートモデルは仮想化ソリューションのParallels Desktop for Chrome OSの推奨モデルともなっており、Chrome OS上で仮想Windowsを動作させてビジネスアプリケーションを活用するのにも適した機種となっています。

画面はいずれも共通して13.5インチの1920×1280(WUXGA+)となっており、アスペクト比は3:2。16:9のFullHD(1920×1080)のパソコンと比べると縦に長く、13インチのコンパクトなサイズ感ながら縦の情報量は15インチ級。実際に使ってみると推敲しながら文章を書いたり写真を編集したりといった用途には向いていると感じる形状となっています。

続いて、筐体の外観をチェックしていきます。

MIL-STD 810G準拠の金属筐体の外観をチェック

HP Chromebook x360 13cはMIL-STD 810G準拠の金属筐体で、非常にしっかりとした作り。多くのコスト削減に重点を置いた他のChromebookとは一線を画する高級感のあるボディとなっています。

こちらが外側。HPのロゴが中央に置かれたシンプルな天板で、Chromebookロゴもプリントされています。

HPのロゴは最上位機種専用のプレミアムバージョンとなっており、Chromebookのロゴもローエンドモデルに見かけるカラーのChromeロゴではなく、とても控えめなロゴ。見る角度によってはほとんど見えなくなるほど一体感があります。

こちらがキーボード部分。日本の直販サイトでは写真のJISキーボードのみの取り扱いとなっています。

キーボード右下のパームレスト部分には指紋センサーを搭載。

トラックパッドのサイズ感は大きめとなっており、十分。

キーは柔らかめのタッチ。

上部のファンクションキーは通常のChromebookと比べると数が多く、HP Sure View Reflectのプライバシー保護機能のトグルとスクリーンショット撮影用の独立したキーが追加されています。

パームレストには音響メーカーBANG & OLUFSENのプリント。音はクリアで綺麗ですが、あまり低音の迫力といったエンターテイメント方向ではなくWeb会議をクリアな音質で行えるビジネス用途に寄せたチューニングに感じます。

右側面。nano SIMスロット、microSDスロット、USB type Cポート、USB type Aポート。

USB type Aポートは薄型の筐体に収めるために格納式になっており、使う時だけ下の蓋をずらす仕組みになっています。ビジネス向けノートパソコンのLANポートにたまに見かけるタイプのギミック。

左側面はイヤホンジャック、USB type C、セキュリティロック、電源、ボリューム、カメラキルスイッチ。不意にインカメラの映像が出ないよう物理キーで無効化しておけるのはユニーク。

USB type Cは左右どちらのポートもLEDインジケーターが搭載されており、どちらでも充電可能&充電状態が確認可能なのは地味に便利。

65WのUSB PD充電器が付属します。

底面にはスピーカーが配置されています。

ヒンジ裏は排気口。負荷をかけると熱い排気が出てくるので、タブレットモードで使う時は位置に少し気を使います。

ヒンジは一周してひっくり返せる二段構造となっており、タブレットモードへ変形可能。

タブレットモードにしたところ。

ヒンジは途中の角度でもしっかり止まるようになっているので、動画や電子書籍の観賞用にスタンドとして使う使い方も便利です。剛性感は高くたわみも少ないため、膝上でこの状態で使って電子書籍を使うのにも快適。

HP Chromebook x360 13cは全体的に剛性がしっかり作られているため、ノートパソコンスタイルでもタブレットスタイルでも使っていて安定感を感じます。

ディスプレイをチェック

続いて、HP Chromebook x360 13cのディスプレイの使用感をチェックしていきます。

HP Sure View Reflectは強力に覗き見防止可能

HP Sure View Reflect機能はキーボードの専用キーを押すだけで画面の視野角を狭めて覗き見を防止できるプライバシー保護機能。写真は実際にオンにしているところですが、ほぼ完全に画面が見えなくなっている事がわかります。

実際に切り替えている動画は以下のとおり。

一定以上の角度から見ると画面は非常に見づらくなり、プライバシー保護性能は抜群。別途フィルムを貼ったりといった事が不要になるため、モバイルワーカーには重宝しそうな機能です。

ディスプレイは視野角が少し狭く感じる

HP Sure View Reflectとのトレードオフとも言える部分か、機能をオフにした状態でも本機の画面の視野角は狭め。画面自体はChromebookとしては高解像度で綺麗なものの、そのポテンシャルが引き出せるのは真正面かつ左右の目の視差が少なくなる距離まで離れた場合に限られます。

具体的に言えば、デスクの上で使う分には快適。一方、膝上で使うと視野角の狭さが気になってきます。

HP Chromebook x360 13cではすべてのモデルに標準装備されるHP Sure View Reflectですが、ほぼ同じ筐体の別名モデルとして法人向に海外で販売されている「HP Elite c1030 Chromebook Enterprise」は光沢・非光沢・非光沢+Sure View Reflectの3種類が選択可能。プライバシー保護機能が不要なユーザーには視野角を優先した選択肢も用意してほしかったところです。

タッチパネルは指紋が付着しにくくサラサラで快適

画面をひっくり返してタブレットとしても使える本機ですが、タッチパネルのサラサラ感は至高。非常に滑りが良く、タッチしても指紋が付着しにくく、タブレットとノートパソコンを行き来しても画面拭き取りのストレスが極めて少ない機種となっています。

Google PlayからダウンロードできるAndroidアプリはタッチ操作前提の物が多いですが、そういったアプリ資産を使う上でタブレットモード中心にしても快適。Adobe Lightroomでフォトレタッチしたりといった用途でもこまめに画面を拭き取らなくても視認性と操作性が保たてるのは便利です。

雑誌リーダーとしてちょうどいいサイズとアスペクト比

3:2のアスペクト比はノートパソコンとして使っていて縦長の情報量が多いのが便利でしたが、タブレットとして縦持ちして使った場合、幅があって雑誌リーダーとしても良いサイズ感。FODプレミアムdマガジンといった雑誌の定額読み放題サービスとの相性が良く、広い紙面を前提としたレイアウトでも快適に読むことができます。先述した視野角の狭さが玉に瑕ですが、それを加味しても便利な用途だと感じました。

ハードウェアの出来をチェック

続いて、画面以外のハードウェアの使用感をチェックしていきます。

指紋センサーは速く、タブレット状態でも使えて便利

指紋センサーはストレスを感じない速度で、今のところ認証失敗もせず使えていて快適です。キーボード右下という位置はノートパソコンスタイルで使っている時は勿論、位置を覚えればタブレットモードで使っている時も使えて便利。

画面をひっくり返したタブレットモード時はキーボードは無効化されますが、指紋センサーだけは使うことが可能です。

キーボードのタッチはソフトなものの、個人的に合格点

HP Chromebook x360 13cのキーボードはややソフトなタッチで、硬めのクリック感を求める方には少し柔らかいかもしれません。ただ配列の癖も無く、文字を打っていて特にストレスを感じる事はありませんでした。

気になる点があるとすれば、Enterキーが少し小さいかなという点。JIS配列でもUKキーボードを使っているような気持ちになります。もう少し横幅があれば安心感があったかもしれません。

なお、今回購入した個体に関してはかな/英数切り替えのキーにクリック感が無く「ふにゃ」っとした押し心地になっていましたが、こちらはHPのサポートに連絡したところ初期不良ということで現在修理対応中です。

内蔵の4G LTEモジュールの使い勝手をチェック

続いて、Chromebookとしては珍しい4G内蔵部分の使い勝手を確認していきます。

4G通信はChromebookと相性抜群

HP Chromebook x360 13cはChromebookとしては非常に珍しい、4G LTE通信モジュールを搭載。nano SIMスロットにSIMカードを入れることで、WiFiが無い環境でもインターネットに接続することができます。

起動速度が売りのChromebookですが、起動後も本機は高速な指紋センサーでそのままログインでき、かつログインした時点では4G通信が可能な状態。これらが組み合わさると非常に軽快感のある使い勝手になり、Chromebookのポテンシャルを感じられます。

楽天モバイルはAPN設定不要でそのまま接続

1GBまでは無料で使える楽天モバイルのRakuten UN-LIMITのSIMカードを入れてみたところ、APNが自動で設定されそのまま通信が可能でした。この辺りのプリセットも地味に便利。

ただし楽天モバイル公式のAndroidアプリには非対応なためWeb上のmy 楽天モバイルを使う必要があり、楽天の自社回線・パートナー回線を判別するアプリも利用不可。この辺りはAndroidスマホ・タブレットとは違うポイントでした。

現状Androidアプリはモバイルデータ通信できない

4G通信できるChromebook自体非常に少ないためあまり話題になっていませんが、Chrome OSは現在Chromebook上のAndroidアプリはChromebook自体のモバイル回線でインターネットに接続できないという不具合を抱えているようです。この点は非常に残念。

4G回線でインターネットを使いたい場合はAndroidアプリではなくWebアプリやPWAを使う必要があります。DiscordやZoomなどのコミュニケーションツールはWeb版が用意されているためそれで解決はできるものの、Adobe Lightroomの写真の同期などは不便。この点はいち早くChrome OSの修正を期待したいところです。

Androidを持ち歩いていればテザリングを遠隔ON可能

ChromebookはAndroidとの連携が非常に強力で、SIMカードを入れずにWiFi運用する場合でも遠隔でAndroidスマートフォンのアクセスポイントをオンにしてインターネット接続が可能。先述したAndroidアプリが通信できない不具合も考えると、現在ではこちらの運用のほうがトータルでは利便性が高いかもしれません。

Chrome OSの使い勝手は高評価

続いて、ChromebookのChrome OSの使い勝手をチェックしていきます。

仮想デスクトップ&ジェスチャーはMac/Windows並

実際にChrome OSを使っていて驚いたのが、仮想デスクトップの操作性の高さ。普段からMacやWindowsのパソコンで積極的に複数のアプリケーションを並走させて切り替えているヘビーユーザーでも、違和感無く使うことができます。

アプリケーション切り替えや仮想デスクトップ間の移動もトラックパッドジェスチャーで可能なため、MacBookやWindowsのハイエンドノートパソコンを使っているかのような操作感。

HP Chromebook x360 13cはこれに強力なスペックも兼ね備えられているため、しっかり使い込むヘビーユーザーでも満足度は高いのではないかと思います。

LINEはChrome版を導入して利用可能

LINEはChrome版を導入することで問題なく利用可能。Android版LINEやLINE liteも導入できるものの、先述のモバイルデータ通信できない問題でChrome版のほうが便利。この辺りのアプリケーション資産はChromebookはほとんど困ることが無く感じます。

Androidゲームも動くが最新の重量級ゲームは厳しい

Google PlayからのAndroidアプリのインストールに対応しており、タッチパネルによるタブレットモードも利用可能という事で、気になるのはゲームの用途。実際に試してみたところ、ヘビーな3Dグラフィックを用いた「原神」は動作が重たくて快適にプレイできませんでした。

同じ3Dでも様々なデバイスで動作するAsphalt 9は比較的快適に動いたので、軽めのAndroidタイトルであれば実用レベルだと思います。全画面ではなくウィンドウでもプレイできるため、ながら作業でソシャゲのデイリーを回すといった用途にも良さそうです。

MacBookとiPadの良い所を半分ずつ集めたようなデバイス

完全にChromebookへの好奇心で購入した今回のHP Chromebook x360 13cですが、実際に使ってみると想像よりはるかに実用性が高く守備範囲の広いデバイスで正直びっくりしています。普段はApple製品を中心に使っているユーザーからしてみれば、MacBookとiPadのそれぞれの良いところを兼ね備えた中間デバイスといった表現がしっくりくるかもしれません。

MacBookを使っていて感じる「SIMが刺さったら便利なんだけどなぁ」「iPadみたいにタッチできたら早いんだけど」といった欲求を叶えてくれる潤沢な装備で、かつMacBookのような操作感でマルチウィンドウ・仮想デスクトップが可能。OSこそは違うものの、タッチ操作ができて4G通信もできるMacBookといった感覚に近い機種です。

またiPadを使っていて感じるiPadOSの制約、例えばChromeブラウザに拡張機能を入れてフルにデスクトップライクに使いたいといった欲求も本機では叶えられており、MacやWindowsで使うのとほぼ変わらない使用感で1Passwordなどのブラウザ拡張込みのChromeがしっかりと使えます。

もちろんMacBookのようにフルのAdobe製品群が使えたり、iPadのように快適にゲームを楽しんだりといった事はできないのですが、「ビデオ通話をする」「長文メールを書く」「チャットツールをヘビーに使う」「YouTube動画を見る」「オフィスで文書・表・プレゼンテーションなどを編集する」「カメラからRAW写真を取り込んでLightroomで現像する」「Canvaでグラフィックを作成する」「電子書籍や雑誌を読む」などなど書き出したらキリがないほど実用度高くカバーできる用途が非常に広く、それぞれのプラットフォームの良いところ非常に良いバランスで兼ね備えていると言えます。

ヒンジの剛性感が高く卓上や膝上で画面を立てて使えることから、リラックスしながら大画面で見開きの漫画などの電子書籍を読む用途では手で支えなくてはならないiPadよりも快適。12.9インチiPad Proは画面を手で支えながら読む必要がありますが、本機はページめくりの時だけ触って後はハンズフリーといった非常に快適な読書体験ができると感じました。

サイズ感・重量感も13インチMacBook Airに非常に近く、多くのカバンに問題無くフィットしつつも一台で何役も兼ね備えられる本機は、持ち運びマシンを1台にまとめたいと思っている方には刺さる機種なのではないかと思います。そしてハイエンドモデルだけあり、細部の質感は毎日持ち運びたいと思わせてくれるレベル。正直、かなり物として気に入っている一台です。

「Chromebookは安いのが売り」だけではないという事を十二分に感じさせてくれたHP Chromebook x360 13c。持ち運びノートパソコンは長らくMacBook Air派でしたが、そろそろ選手交代になりそうです。

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キリカ

ガジェットショットを作った人。本業はUI/UXデザイナー。世の中の素敵な物を見つけるのが楽しみ。10歳の頃にHTMLに出会い、以来理想のサイト作りを追求中。休日の楽しみは愛車の「ロータス・エリーゼ」と「アルファロメオ・ジュリエッタ」で行くドライブと写真撮影と甘いもの。