既存の完全ワイヤレスイヤホンには無い「ユニークなケース形状」と「軽さ・薄さ」を武器にクラウドファンディングで人気を集めているYOBYBOから、3月よりクラウドファンディングが開始される最新モデル「X-BOAT PRO」のサンプルをレビュー用に頂いているので紹介していきます。
YOBYBO(ヨービーボ)は従来のケースに完全に収まる完全ワイヤレスイヤホンと違い、イヤホン本体が露出してケースの一部になるデザインが特徴の機種で人気を集めている2019年創業の新興メーカー。本体をケース中央に収めて世界最薄を実現したCARD20や、四角形のワイヤレス充電対応ケースが特徴的なNOTE20や、など、クラウドファンディング発のイヤホンを次々と市販化しています。
今回取り上げる「X-BOAT PRO」も例に漏れず、YOBYBOらしいユニークなデザインを引き継いだ、同社5世代目となる最新モデル。イヤホンがケースと一体化するYOBYBOのデザインのメリットを掘り下げた機種となっており、ケースの左右から片手でスムーズに着脱して「1秒で使える」のがセールスポイントとなっています。
音質面にも力が入れられており、転送方式として96Hz/24bitのハイレゾ音声の転送が可能なapt-X Adaptiveに新たに対応。大型13mmのLCP(液晶ポリマー)ダイナミックドライバーを採用しており、従来機種と比べて音質面の強化が図られています。
それでは早速実機をレビューしていきます。
この記事の目次
パッケージ・外観をチェック
こちらがX-BOAT PROのパッケージ。コンパクトな黒い箱となっています。
背面はスペックが確認できます。
今回は製品化前のレビュー向けサンプルということで、冊子類は準備中。実際のクラウドファンディングのリターン品・製品版は製品マニュアルなどが同梱される予定となっています。
パッケージ内容は充電ケースに入った本体と、充電用のUSB type A – type Cケーブルの2つ。
こちらが本体。中央に充電インジケーター、両側にイヤホン本体が配置されるという非常にユニークな筐体デザインとなっています。今回は3色展開のうち「スペースシルバー」を頂きました。
イヤホンは先端に電子接点が搭載されており、この部分がマグネットで充電ケース側に吸着して充電する仕組み。マグネット吸着は安定感があり、特に落ちる不安を感じるシーンはありませんでした。
こちらがイヤホン本体。充電ケースの色問わずイヤホン本体側はブラック色となっており、外側はマットな樹脂、充電接点側と耳に面するドーム側はガンメタの同系ツートン。
シンプルなマットブラックのイヤホンと比べて高級感を感じる外観です。
ケースの裏側はマット加工されたガラスにブランドロゴと充電用USB type C端子が配置されており、触り心地は良好。アルミ削り出しフレームと組み合わさる事で触り心地の良い質感となっており、完全ワイヤレスイヤホンとしては非常に独特な存在感を感じる筐体になっています。
左右タップによる操作性をチェック
X-BOAT PROは左右のイヤホン本体の側面をタップする事で操作が可能。搭載されている操作一覧は以下のとおり。
- 曲戻し:左を2秒長押し
- 曲送り:右を2秒長押し
- 一時停止・再生:左右いずれかをダブルタップ
- 音量ダウン:左をタップ
- 音量アップ:右をタップ
- 電話に応答:左右いずれかをタップ
- 電話を切る:左右いずれかをダブルタップ
- 着信を拒否:左右いずれかを2秒長押し
- ゲームモード切り替え:左右いずれかをトリプルタップ
機能的には一通りの操作が左右のタップ・長押しで出来るようになっており、イヤホン側から音量調整をするのに音声アシスタントが必須のAirPodsと比べると守備範囲はこちらが上。
実際に使ってみて、タップ操作に感じた点は以下のとおり。
- シングルタップ感度は合格(音量アップ・ダウンは快適)
- ロングタップも問題無し(曲送りも快適)
- ダブルタップはたまに失敗する
- トリプルタップは失敗する事が多い
- 連続で失敗すると音量操作が連続発動してしまうのはストレス
基本的に音量操作、曲送りといった普段イヤホンで音楽を聴く際に使う操作は確実に操作でき、特にストレスは無し。ダブルタップの一時停止はたまに失敗する事程度。
ただトリプルタップのゲームモード・ミュージックモードの切り替えは成功率が低めで、失敗すると代わりにシングルタップの音量アップ(ダウン)が発動してしまうため、「連続で失敗するとどんどん音量が上がっていってしまう」とい点がストレスでした。この辺りの精度はもう一歩というところ。
ゲームモードの低遅延は効果あり。
操作の中にゲームモード・ミュージックモードの切り替え機能があると紹介しましたが、このゲームモードとは音声再生の遅延を低減するというもの。
実際に最近プレイしている「原神」「PUBG: NEW STATE」やレイテンシー確認のために「デレステ」という具合に異なるジャンルのゲームをプレイしてみましたが、ゲームモードにした際の遅延の低下はいずれのタイトルでも感じられました。
特にリズムゲームの「デレステ」に関してはミュージックモードでプレイした際は操作に対する音声のズレが非常に気になる大きさでしたが、ゲームモードを有効化した場合は許容範囲内のズレまで低減され、効果が一番感じやすいタイトルでした。
体感としては低遅延に定評のあるApple純正のAirPodsでプレイしている感覚に近く、シビアなリズムゲームの高難易度に挑むのでなければ普段のゲームプレイには十分だと感じました。
X-BOAT PROと第3世代AirPodsの音質を比較
価格帯的には少し上になりますが、11月にレビューした同じインナーイヤー型の完全ワイヤレスイヤホンであるAirPods(2021年・第3世代モデル)と音質面の比較のために聴き比べてみました。
AirPodsは2019年発売の第2世代モデルまでは音の良いイヤホンという印象はありませんでしたが、2021年モデルからは音質が大幅に進化。しっかりと音楽が聴けるイヤホンになっています。
今回iPhoneに接続して同じApple MusicのソースをX-BOAT PROとAirPodsで聴き比べてみたところ、感じたのは以下のとおり。
- 低音はAirPodsが明確に優位
- X-BOAT PROはAirPodsと比べてシャープな音
やはりAirPodsは第3世代目となりインナーイヤー型の弱みである低音部分をしっかり強化してきた事もあり、X-BOAT PROは聴き比べをしてしまうとどうしても低音の見劣りを感じます。
とは言いつつインナーイヤー型として見ればX-BOAT PROも上出来で、音楽を楽しむイヤホンとしては合格点。低音こそは劣りますが、全体的にシャープな音作りで楽曲によってはこちらの方がAirPodsより爽快感のある音。
高音シャリシャリ系に抵抗の無い方であれば気に入る音なのではないかと思います。
充電頻度は低いものの、ワイヤレス充電は無し
電池持ちに関しては単体で5時間、ケース込みで40時間、USB type C to Cでスマホから充電できるなど、スペック的には不便を感じさせない十分なもの。
ケース側が40時間分の容量を確保しているため頻繁に充電する必要は無いものの、両側からイヤホン本体を取り出す特殊なデザインゆえUSB type C端子が裏面にあり、充電が少し不恰好。コンセプト的に仕方なさを感じるものの、底面に充電端子のあるApple Magic Mouseを彷彿とさせる位置は格好良い筐体に見合うスタイリッシュさは無いのかなと感じました。
また個人的に完全ワイヤレスイヤホンはワイヤレス充電のプライオリティの非常に高い製品だと感じているので、X-BOAT PROが有線充電のみなのはコンセプトがスタイリッシュなだけに残念。細長いケースにはワイヤレス充電用のコイルが収まらなかったのは想像できるものの、製品の強みである「片手で1秒で装着」という部分はスマートなのに「充電は毎回両手を使わなければいけない」というのは惜しいポイントです。
デバイス切り替えは本体から接続解除が必要
最後に一点、使っていて面倒に感じたポイントは複数デバイスでの利用。最近のイヤホンは複数デバイスとペアリングした場合は別のデバイスに繋がっている状態でも使いたいデバイスのBluetooth設定画面から接続すれば自動的に別のデバイスは接続解除されますが、X-BOAT PROはそれが不可。複数デバイスとペアリングは可能なものの、接続解除は毎度手動で行う必要があります。
例えばiPhoneとiPadにペアリングしており、棚で充電しているiPadに電源オン時に自動接続されてしまった場合、手元のiPhoneで接続したい場合はiPadから接続解除の操作を行なってからでなければiPhoneから接続することができません。
この辺りの利便性はしっかりマルチペアリングに対応したイヤホンと比べると劣るなと感じたところ。複数のデバイスで使いたいと思っている方は注意が必要です。
まとめ:1秒で装着、さっと爽快に楽しめるイヤホン
実際このX-BOAT PROの片手で1秒で耳に装着できるというポイントを意識して普段使いしてみると、他のワイヤレスイヤホンに戻ると毎回毎回蓋を開けてイヤホンを取り出して耳につけるという一連の動作がとても長く感じるようになります。
このスピード感はなかなか良く考えられたギミックだなと感心させられる部分で、ポケットから出してさっと取り付けて音楽を聴ける動作自体に爽快感があるのはこの手の製品では新鮮な快感でした。
イヤホン自体の使用感としては軽快な装着感はインナーイヤーらしく、長時間装着していても楽。音質もシャープな高音強調系の音が好きな人にはおすすめで、ゲームにもしっかり使える低遅延モードを搭載、電池持ちも長めと、特徴的ながらよくまとまっているのかなと思います。
ワイヤレス充電非搭載こそは残念なものの、金属とガラスのずっしりと塊感のあるケースは手に持っていて気持ち良く、そこから耳に片手でサクッと取り付けられる一連の操作感に繋がる世界観は唯一無二。この形状を実現するためと言うのであればトレードオフとしては納得かもしれません。
X-BOAT PROは2022年3月10日の12:00よりクラウドファンディングの受け付けを開始予定で、リターン品の出荷は5月〜6月。クラウドファンディング後の一般販売は10月頃の予定となっています。
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動画レビュー
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