噂される次期MacBook Air 12inchモデル「Stealth」に見る2つの致命的な問題点

次期モデルとされる12インチの「MacBook Air Stealth」の情報が飛び交っていますが、個人的に気になる点をいくつか。


90mm, f22

MacBook Air StealthとはAppleが開発しているとされる12インチの新型MacBook Airの社内コードネームで、海外メディアの9To5Macが関係者による試作機の情報を公開して話題になっています。

macbook air stealth top
情報によると12インチMacBook Air「Stealth」は現行11インチMacBook Airより小型化しつつも、ベゼルを削る事によって12インチのディスプレイを搭載、トラックパッドのクリック感を排除する事によって更にパーツを薄型化し、現行の電源供給端子であるMagSafeを撤廃、電源供給を100Wまで供給可能なUSB 3.1のUSB Type-Cの1ポートに統一。従来と比べてキーボードのピッチを詰め、電源ボタンを右端から左端に移動しています。

しかしこれらの公開された情報を見る限り、実用性に欠ける点にいくつか気付いたので取り上げたいと思います。

電源供給と外部インターフェースが同じポート

macbook air stealth side

新型MacBook Airとされるレンダリング画像には従来のMagSafeポートが搭載されておらず、完全にUSB 3.1の新規格による給電で駆動するものとされています。USB 3.1は最大100Wまでの給電が可能な規格となっており、これのType-Cの端子を搭載する事によって小型化しつつ電源供給も全てこのポートでカバーする事ができるという、一見合理的な実装に見えます。しかし以前レビューしたMiix 2 8をはじめとするmicroUSB給電タイプのWindows 8タブレット機を使った事のあるユーザーなら体験済みかと思いますが、基本的に充電中はUSB機器が一切使えないというのは非常に不便なもの。また、USB 3.1 Type-Cポート用に新たにケーブルや変換アダプタを揃え直す必要があります。

給電しつつUSB機器を使う事のできるアダプタは恐らく用意されるものと思われますが、アダプタが無ければ「バッテリー駆動中しかUSB機器が使えない」といった理不尽な状況を強いられてしまいます。

とは言いつつも、今時一般消費者がUSBポートを使う機会は確実に減っており、USBマウスもトラックパッドがあれば不要、USBメモリもクラウドストレージに移行しつつあり、プリンタですらWiFiが当然となりつつあるのも事実。USBポートがたった1つという拡張性の低い仕様で2008年に発表されて賛否両論だった初代MacBook Airを彷彿とさせる流れですが、あれから7年後の完全新作で「USBポート不要説」を製品として改めて再提案するというのも決して不自然ではないかと思われます。

トラックパッドを押せなくなるとドラッグ&ドロップが実質不可能に

trackpad 3 finger drag
トラックパッドの薄型化のために押し込むクリック感を無くし、クリックをタッチセンサーのタップに統一するという事は、物理的に押し込みながらトラックパッド上で指を滑らせるドラッグ&ドロップが従来の方法では出来なくなるという懸念があります。

現在Macには「3本指のドラッグ」というオプションが用意されており、新型MacBook Airではドラッグ&ドロップ操作を行うにはこの3本指での操作を強いられる可能性が高いと見えます。トラックパッド上で3本指ドラッグをしてみると分かりますが、物理的に3本指を動かせる範囲が1本指より狭い事からドラッグできる距離はとても短くなります。

更に3本指ドラッグを有効化する事によって、3本指スワイプのジェスチャーが強制的にオフになり、使えなくなります。具体的なアプリケーションの例を挙げると、Twitterクライアントの夜フクロウでは3本指ジェスチャーによって左右のタブ移動やタイムラインの最上部・最下部へ一気に飛ぶ事ができましたが、3本指ドラッグを有効化するとこれらの操作ができなくなります。

物理的なクリック感を実現する機構を無くす事で薄型化するのは大いに歓迎ですが、押し込んだ事を検知する別の方法を用意するなり、ソフトウェア的に解決策を実装するなり、こういった従来のトラックパッド操作へのケアはほしいところ。


現状流れている情報やそれを元にしたレンダリング画像を見る限り、試作段階とはいえ様々な課題を抱えた製品に見えると言わざるを得ない状況です。個人的に11インチのMacBook Airは非常に気に入っているモデルで、後継機が出たら真っ先に買おうと思っているポジションの製品ではありますが、実際に出てくる製品がどうなるのか不安になる要素が多く心配です。Appleが上手く製品版までにまとめ上げてくれる事を期待しつつ、続報を待ちたいところです。

Apple’s next major Mac revealed: the radically new 12-inch MacBook Air | 9to5Mac

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キリカ

ガジェットショットを作った人。本業はUI/UXデザイナー。趣味は理想のデスク環境作り、愛車「エリーゼ」「ジュリエッタ」でのドライブ、車旅を動画・写真に残す事。