iPad mini(2019)レビュー。成熟した5世代目のminiは性能+大画面を日常的に持ち運べる完成形

先日発売された新型iPad mini(5世代目)を発売日に購入してから数ヶ月間、日常的に使ってみてのレビューをまとめていきます。


本記事で紹介している第5世代iPad miniの後継となる第6世代iPad miniのレビューは別記事にて紹介しているので、併せてチェックしてみてください。

もはや説明不要なAppleのタブレット「iPad」の小型モデルとして登場したiPad miniは、2012年に発売された初代以降、2013年、2014年、2015年と毎年新モデルが発売されてきました。

しかし2015年に発売されたiPad mini 4はその後モデルチェンジされる事なく販売され続け、今回2019年3月に5世代目となる新型iPad miniが発売されるまでは約4年間ほど新型が出る気配が無く、ラインナップ自体いつ途絶えてもおかしくない風前の灯火でした。そういった意味では今回の新モデルの登場で胸を撫で下ろしたユーザーも少なくは無いはず。

2015年のiPhone 6世代のプロセッサであるApple A8チップから最新のiPhone XS世代のA12 Bionicチップにアップデートされ性能は飛躍的に進化し、一つ前の第一世代の物ではあるもののApple Pencilにも対応。筐体デザインとしては2015年モデルとほぼ変わらず性能のみを底上げした形で派手な真新しさは無いものの、確実な市場のニーズに対して投入された特殊なモデルとも言えるのが今回の新型iPad miniとなっています。

以前iPhoneシリーズの小型モデルのニーズに対して、従来モデルである「小さなiPhone 5sの筐体」+「iPhone 6sの性能」を詰め込んだ特殊なモデル「iPhone SE」を発売した事のあるAppleですが、今回iPadでも似たようなアプローチを取ってきた、という見方もできますね。

これが5世代目のiPad mini。2018年モデルのiPad Proのような丸角狭額縁でもなく、2019年の新型端末である事を全く感じさせない従来のスタイルを踏襲した外観となっています。なお、名前としてはiPad mini 3、iPad mini 4と数字が付いていた従来モデルの命名規則は今回廃止され、「iPad mini 5」とならずナンバリングの無い「iPad mini」に回帰しています。

上下の太いベゼルにTouch IDの指紋認証が搭載されているのは見慣れた安心感があります。

背面。今回購入したセルラーモデルはアンテナラインが最近のモデルのiPadに合わせて細くなっています。

下部はiPad Proに搭載されているUSB-Cではなく、Lightning端子。このあたりは先代のiPad mini 4を踏襲しています。

今回購入したのはセルラーモデルのため、側面にSIMスロットを搭載。

カメラは突き出さず、筐体に収まっています。

iPad mini 4との見た目の違い

手元のiPad mini 4のWiFiモデルと外観を比較してみました。どちらもスペースグレイ。

背面を見ると、同じスペースグレイでも色がかなり暗くなっている事が分かります。カーナビとして車載する人は車に馴染みやすくなって良いかもしれません。個人的には好みな色です。

iPadの文字のフォントが細字になり、各種認証マークが省かれてすっきりしました。

マイクの位置が変更されたほか、ボリュームキーの間の溝が光沢からマットになりました。変更の方向性がiPhone 5s→iPhone SEの変更に似ています。

iPad mini 4からの性能の進化

上記のとおりiPad mini 4からの見た目の変化は微々たるものですが、性能に関しては大きく進化しています。まとめると以下のとおり。

  • Apple A8→Apple A12 Bionic
  • 2GB RAM→3GB RAM
  • eSIM搭載
  • Apple Pencil(第一世代)対応
  • 広色域ディスプレイ(P3)搭載
  • ディスプレイがTrue Tone対応
  • インカメラが120万画素→700万画素に

処理性能がiPhone XS世代のApple A12 Bionicになり、RAMが増量されたほか、現行上位モデルの他のiPadのスタンダードであるeSIM対応や環境光に合わせて画面を調整するTrue Toneなど、2019年モデルとして相応しい装備に底上げ。

Apple Pencilに関しては最新のiPad Pro(2018年モデル)でリニューアルされた第二世代目の新型Apple Pencilには対応しないものの、「iPad」や旧iPad Proの初代Apple Pencilに対応。7.9インチのiPad miniシリーズとしてはApple Pencil対応は今回が初となっています。

インカメラが120万画素から700万画素に大幅強化されたため、ビデオ通話用としての性能も大幅に引き上げられているのも見逃せないところです。

処理性能は申し分無し

Apple A12 Bionicチップを搭載しているだけありAnTuTuベンチマークのスコアは37万点台とかなり高めをマーク。これはiPhone XSやiPhone XS Maxをやや上回るレベルの数字で、処理性能に不満を感じる事はほぼほぼ無いのではないかと思います。WiFiモデルであれば実売価格が税込み5万円を切るので、価格対処理性能で考えれば驚異的なコストパフォーマンスとなっています。

ミラーレス一眼のRAW現像を試す

普段ミラーレス一眼カメラの写真のデータ取り込み・レタッチ用に使っているiPad Pro 11インチモデルの代わりに使ってみました。取り込みはApple純正のLightning端子用SDカードリーダーを使用。

ミラーレス一眼のRAWフォーマットの写真を取り込んでのレタッチはAdobeのLightroom CCを使っていますが、上記のとおり余裕あるスペックのためレタッチ作業の動作速度には全く不満無し。かなりサクサクと修正作業ができるため、カメラとiPad miniを一緒に持っておけばいつでもどこでも気軽に写真の編集が適度な大画面で出来るようになったのは個人的にかなりの収穫でした。

また、今回はiPad miniシリーズとしては初のApple Pencil(第一世代)に対応。Apple Pencilと同等のペン先を採用しつつ筆圧対応を削った廉価なLogicool Crayonも同じく対応しているため、筆圧の不要なフォトレタッチ用にぴったり。細部の調整に重宝する上、充電もLightningケーブルで可能な点は本家Apple Pencilより便利。小型のフォトレタッチマシンとしてはかなり使いやすい組み合わせです。

iPad mini以前に使っていた11インチiPad Proは高い処理性能と大画面でフォトレタッチの用途は快適だったものの、12インチMacBookに迫るサイズと重量で鞄や荷物を選ぶ機種でした。一方iPad miniは小さめのバッグのポケットにも入るコンパクトさに性能が収まっているため、カメラとセットで常備しても全く苦ではないサイズ。重さとしても約300gと多くのカメラレンズ1本分よりも軽いため、カメラのお供にはぴったりの筐体だと感じました。

Magic Keyboardと組み合わせて快適な執筆マシンに

普段Macで使っているAppleのMagic Keyboardとの相性もiPadは良かったです。純正のSmart Coverで自立させればそのままノートパソコン風に卓上で使え、快適な文章作成環境がコンパクトな荷物で完成。コピーペーストやホームに戻るなどのキーボードショートカットももちろん使えます。

サードパーティのキーボードではなくApple純正キーボードを使うメリットとしては、日本のJIS配列でかな・英数キーを使って文字が打てる事。通常のJIS配列のBluetoothキーボードをiPadに接続するとUSキーボードとして認識されてしまうため、JIS配列で文字を打ちたい場合は一部を除きほぼApple純正品ぐらいしか選択肢がありません。かな・英数キーを使ってMac風に日本語を入力して長文を書きたい場合はiPad+Magic Keyboardはおすすめの組み合わせです。

USB PD(Power Delivery)対応

地味なアップデートですが、今回の5世代目iPad miniはUSB-C – Lightningケーブルを使う事によってUSB PD充電が可能となっています。最新のiPhone同様充電時間が短く済むので、USB PD対応の充電器は是非併せて押さえておきたいところ。おすすめはAnkerのGaN採用小型充電器。GaN(窒化ガリウム)採用によりiPhone用純正充電器に近いコンパクトなサイズ感ながら12インチMacBook純正品と同等の30W出力が可能な点で話題になったACアダプタで、iPad以外の用途でも一つ持っておいて損は無いアイテムです。

小型のPD対応ACアダプタを一緒に持ち歩いておけばコンセント付きのカフェなどでサクッと短時間でiPad miniが充電できるので、持ち運び用端末としては地味ながらかなり重宝するポイントです。

A12+TouchID+イヤホンジャックは希少価値

先述したとおり、5世代目iPad miniはiPhone XSシリーズを上回るベンチマークスコアを叩き出す性能。この性能でTouch IDの指紋認証やイヤホンジャックが搭載されているのは実はApple製品では希少な位置付けとなっています。

Touch IDの指紋認証を搭載したiPhoneはiPhone 8/iPhone 8 Plusが最後で、搭載プロセッサは一世代前のA11。タブレットにはなってしまうものの、Touch IDを搭載しつつも現行プロセッサを搭載した高性能な端末としては同時に発売されたiPad Air 3と並んで一つの選択肢になりそうです。

また、iPadのラインナップの中を見てもiPad ProはTouch IDを撤廃してFace IDに変更、イヤホンジャックも取り払われてしまっているため、そういった変更点に抵抗のあるユーザーにとってはこの機種はとてもありがたいと思いました。

実際のところ、iPad ProのFace IDは端末の方向こそは縦横どちらの方向でも認識してはくれますが、卓上に置いて使っていると真上に顔を持って行って認証しなければいけなかったり、どちらのベゼルに付いているか目視しづらいカメラが手で隠れていないか気にしなければならなかったり、タブレットとしての使い勝手を考えると位置関係を気にせず目視でわかるセンサーに指を当てるだけで良いTouch IDが便利な事もしばしば。さらにゲーム用途で使う場合は有線イヤホンの端子があったほうが便利な事は間違いないですし、上下にベゼルがあるのはしっかり持って使う場合はむしろ便利だったり。そういった使い勝手を考えると、iPad Proと比較してもiPad miniやiPad Airの方が便利なケースもわりとあるのではないかと思います。

ゲーム機として優秀なだけに、モノラルスピーカーなのは残念

先述したとおり現行の高性能プロセッサを搭載しているにも関わらず非常に低価格なため、家庭用ゲーム機としてのコストパフォーマンスはかなり優秀。PUBGをはじめとするバトルロワイヤル系ゲームではiPadの大画面での索敵能力を駆使したプレイも優位なためiPadを導入するゲーマーも少なくないわけですが、そういったゲームで重要な「音」の点ではモノラルスピーカーなのが非常に残念です。個人的に家でカジュアルにゴロゴロと遊ぶ場合はヘッドホンを付けずに遊びたいのですが、iPad miniの場合はスピーカーが1つしか搭載されていないため、音の方向が全く分からずPUBGのような足音や銃声の音を頼りにプレイするゲームでは無力。ヘッドホンやイヤホンを使うしかない機種だと感じました(ガチ勢はそもそもヘッドホンを使うのでしょうが)。

初期不良に当たったものの無償交換

これは不運だったのですが、自分の購入した個体はディスプレイの表示が安定せず、端のバックライトが正常に機能せず暗くなってしまう不具合を抱えていました。しばらく使ってみて症状が消えたり再発したりを繰り返していたのでAppleのサポートに相談したところ、無事無償交換に。同じような症状が発生している方は1年の保証期間中にサポートに連絡する事をおすすめします。

性能・サイズに不満無しの完成度の高い小型タブレット

全体的に見て今までのiPad miniシリーズの筐体をそのまま大きく変える事なく性能のみを底上げした今回の5世代目iPad miniですが、かなり成熟されていて実用的な端末だなと感じました。写真のレタッチに必要な処理性能があるはもちろんのこと、Apple Pencilにも対応した事で作業の幅も広がり、小型の手帳用途で使う方にもおすすめできる一台です。ゲーム機としても申し分ない処理性で、最新の3Dのゲームをプレイしていても不満はありませんでした。この性能が64GBモデルであれば5万円以下で購入できるのだからコストパフォーマンスは圧倒的だと言えます。

一方で、やはり筐体デザインがそのままなのはガジェットとしては面白みに欠けると感じたのも正直なところ。iPad Proのような狭額縁タブレットかつこのサイズで出していれば近未来感は抜群だったのではないかと思います。

5世代目iPad miniは今までずっと使ってきたかのような慣れ親しみを感じる機種である上に性能は最新の物という、道具として見れば申し分無い機種。買って後悔はしていないですし、写真のレタッチ機として日常的な利用頻度も高いわけですが、追っている者としてはロマンに欠ける。そんな製品だと感じました。

GPS&SIMスロット付きのセルラーモデルはApple公式サイトとドコモ・au・ソフトバンクから購入可能。どこでもWiFiルーター無しにサクサクとインターネットできる機動力はiPad miniのサイズ感と相性が良く、おすすめの組み合わせです。

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キリカ

ガジェットショットを作った人。本業はUI/UXデザイナー。趣味は理想のデスク環境作り、愛車「エリーゼ」「ジュリエッタ」でのドライブ、車旅を動画・写真に残す事。