ついに国内でauから発売された2つ折り有機ELのフォルダブル端末「Galaxy Fold SCV44」。入荷まで時間がかかりましたが、やっと手に入り使ってみたので、レビューしていきます。
Galaxy Foldは折りたたんだ状態では約4.6インチディスプレイの長細いスマホとして使えつつ、開いた状態では2つ折りの有機ELディスプレイが7.3インチに広がってタブレットのように使える、といういわゆる「フォルダブル」な端末。日本ではauが独占販売する格好となっています。有機ELディスプレイを2つに折り曲げるという最先端のギミックを搭載しつつ、スペックもSnapdragon 855に12GBのRAM、512GBの内蔵ストレージとフラッグシップの中でもかなり最上位に区分けされる構成となっており、それらの特異性が反映された価格は一般的なハイエンドスマートフォンの約2倍となる245,520円。それゆえ販路も限定されており、auオンラインショップおよび一部の直営店・大型家電量販店のみの取り扱いとなっています。
スペック
Galaxy Fold SCV44のスペックは以下のとおり。
プロセッサ | Snapdragon 855 |
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RAM | 12GB |
内蔵ストレージ | 512GB |
microSDスロット | 無し |
メインディスプレイ | 約7.3インチ QXGA+ Dynamic AMOLED(有機EL) Infinity Flex Display 2152×1536 |
カバーディスプレイ | 約4.6インチ HD+ Super AMOLED(有機EL) 720×1680 |
カバーカメラ(外側インカメラ) | 1. 1000万画素/80°/F2.2 |
サブカメラ(内側インカメラ) | 1. 1000万画素/80°/F2.2 2. 800万画素RGB深度カメラ/F1.9 |
メインカメラ | 1. 1600万画素超広角カメラ/123°/F2.2 2. 1200万画素広角カメラ/光学手ぶれ補正/77°/F1.5&F2.4自動切替 3. 1200万画素望遠カメラ/光学手ぶれ補正/45°/F2.4 |
OS | Android 9 Pie |
生体認証 | 静電式指紋センサー(側面)、顔認証 |
Snapdragon 855、12GB RAMとマシンスペックとしては基本的に上位のフラッグシップ。特筆すべきはストレージで、microSDなど外部ストレージには対応しないものの、512GBの超大容量の内蔵ストレージを搭載。動画、電子書籍、ゲームなど容量を沢山使用するコンテンツを存分に本体に保存する事ができるのは嬉しいところです。
2つ折りのフォルダブル端末である事から、カメラに関してインカメラが2通りあるのも特徴。外側のメインカメラは超広角・F値絞り可変ギミック付き広角・望遠の3カメラ構成な点は他のGalaxyの上位モデルと同様。一方のインカメラは閉じた際のインカメラ1つに加え、開いた状態で使える同等のインカメラに加えインカメラの深度取得用カメラも搭載。
結果として、合計で6つのカメラを搭載しているスマートフォンとなっています。
最大の特徴であるディスプレイは2つ搭載されており、閉じた状態で使える画面は4.6インチサイズで解像度720×1680と控えめのスペック。上下に大きな余白を残して本体中央部分のみで操作する形となっており、「閉じた状態でも使える」を実現するためのサブディスプレイといったところ。本体を開くと初めて使えるメインの画面はInfinity Flex Displayと呼ばれる2つ折りの7.3インチディスプレイ。解像度は2152×1536と、iPad miniシリーズとほぼ同等となっています。なお、内側、外側どちらの画面も有機ELを採用。
単に折れ曲がる有機ELをギミックとして搭載するだけでなく、その上でマルチタスクで様々な並行作業を実現できるよう潤沢な12GBのRAMを搭載しているのがポイント。フラッグシップモデルとして申し分無い性能なので、処理性能的に見ると実用性も非常に高い機種となっています。
AnTuTuベンチマーク
定番のAnTuTuベンチマークV8の数値は上記のとおり45万点台と非常に高得点。参考までに、AnTuTuの提供しているランキングを見るとGalaxy S10+やHuawei P30 Proが39万点台、Galaxy Note 10+が44万点台。同社のフラッグシップであるNote 10+を少し上回る形となっています。Snapdragon 855 Plusを搭載するROG PHONE IIの49万点台には劣るものの、現在購入できるスマートフォンの中で見ても最も高性能な部類に入ります。
パッケージ
Galaxy Foldのパッケージ。折りたためるディスプレイをモチーフにした専用のGalaxyロゴがプリントされています。
内箱もしっかりしており、パッケージの時点で高揚感があります。
Galaxy Fold本体とご対面。内側のディスプレイは強く押したり叩いたり鋭利な物で押し付けたりすると破損の原因になるほか、防水非対応、市販フィルムを貼り付けると故障の原因になる旨の注意書きが記載されています。また、磁石を内蔵しているため磁力に影響を受ける物と一緒に持ち運ぶ際は注意が必要です。
「未来を創造する。Galaxy Foldの世界へようこそ。」のメッセージ。特別な端末である事を感じさせてくれます。なお、本体パッケージとは別にau SHINJUKUでの購入時には購入者向けの黒い封筒が配布され、24時間365日Galaxy Foldを購入した特別なユーザーのためのサポートデスクがある旨のお手紙が入っていました。
本体の付属品としてはUSB type Cケーブルのほか、OTG対応USB変換アダプタ、完全ワイヤレスイヤホンのGalaxy Buds、純正アラミドファイバーケースも同梱。
Galaxy Budsは同社の完全ワイヤレスイヤホンでAmazonでの実売価格は1.75万円と、付属イヤホンとしてはかなり高額。AppleのAirPodsと同様、Galaxyと簡単にペアリングできるようになっているのも特徴です。
本体の外観
続いてGalaxy Fold本体の外観を紹介していきます。
まずはGalaxy Foldを実際に使う時間が長いであろう、開いた状態から。
画面外周は樹脂の段差で覆われて保護されています。
下から見たところ。スピーカーが左側、USB type C端子が右側にきます。
右側面。指紋センサー、電源、ボリュームキーのオーソドックスな配置。
上部はスピーカーとマイクが配置されています。
左側面はSIMスロット。
開いた状態での背面。この状態でかなり剛性感があり、しっかりとしています。
メインカメラが配置されている側は綺麗な光沢感のある質感。とても高級感があります。
Galaxy Foldを閉じたところ。
前面はラウンドガラスとなっており、背面との組み合わせでとても満たしてくれる質感。
折りたたんだ状態での下部はこのようにコの字に畳まれ、内側のディスプレイがUの字に畳めるよう若干の空間を空けた状態で格納されます。
閉じた際に現れるヒンジの大型パーツ。
国内モデルに関してはここに「Galaxy」とブランドロゴが配置されています。海外モデルだとSAMSUNGロゴがある場所。
ヒンジを斜めから見たところ。この折りたたみ機構を眺めているだけでも魅了されます。
折りたたんだ状態で左右のアンテナライン、SIMスロットと電源ボタンが綺麗に並ぶの綺麗。
別アングルから。
近年のGalaxyは端末の質感がとても良いと感じますが、Galaxy Foldは更に上の次元。フォルダブルな機構を搭載している事もあり重めなのが逆に高級感に寄与しており、手に収めた際の感動がワンランク上のデバイスに感じました。
改善された折りたたみ機構
本来グローバルでは2019年4月に発売される予定だったGalaxy Foldですが、結局実際の製品版が発売されたのはその半年後。その理由となったのが、ヒンジ機構の不具合。初期にテクノロジー系メディアのレビュー用に配布されたモデルでは2つの問題がありました。
- ヒンジの隙間から異物が混入し、折り目部分に挟まり画面が破損してしまった
- 画面の一部である保護層が端まで覆われておらず出荷時の保護フィルムに見えたため、多くのレビュアーが間違って剥がしてしまった
このため多くの個体の画面が破損してしまい、この問題を改善するべくサムスンはヒンジ機構の改良に取り組むため発売を延期しました。
そして発売された市販モデルはこれらの問題を克服。ヒンジ部分には異物混入を防止するT字状の樹脂パーツが新たに追加され、露出している部分が無くなりました。
画面表面を完全に覆っていなかった保護層も、市販モデルでは完全にベゼルの樹脂の下にまで覆うように構造変更され、誤って剥がす事が実質不可能に。これらの改善によって、Galaxy Foldの市販モデルはかなり信頼性の高いディスプレイに仕上がっています。
マルチタスク&2画面物理切り替えによる高い柔軟性
Galaxy Foldはその大画面と12GBの大容量RAMを活かし、複数のアプリの同時実行を売りにしています。左右2分割のマルチタスクに加え、右側の上下2分割、更にもう1アプリをポップアップ表示した4アプリの実行が可能。
実際に4つも使うかはさておき、左右2画面は実際便利。SNSとブラウザを同時に使うなどの定番マルチタスクがポケットに入る端末でここまで快適にできると感動的です。そこから更に2つもアプリを追加実行できる余力を持ち合わせているのは活用方法の幅が広がります。
また対応アプリでは、画面を閉じた状態で使っているアプリをそのまま状態を引き継いで大画面に開いて使う事が可能。例えば片手持ちでサクサクと文字入力をしてGoogle Mapsでルート検索し、実際の案内は大画面で見るといった使い分けができます。
逆に内側のメインディスプレイから外側のサブディスプレイへ行くこともでき、こちらはホワイトリスト方式に設定から有効化可能。設定をしていない状態では折りたたんだ時点でスリープに入ります。
片手モードが意外と便利
外側のディスプレイは4.6インチのHD解像度と「オマケ」程度に見えるスペックではあるのですが、実際に使ってみると画面が小さいおかげで片手操作がとてもしやすく、しっかり持てるため落としにくく、安心感があります。情報量こそは最近の主流スマートフォンと比べると見劣りしてしまうものの、25万円近くする端末を落下させてしまったら大変なので、この仕様は正解かもしれません。
スピーカーは音質は良好だが使い勝手が気になる配置
Galaxy Foldのスピーカーはスマートフォンのスピーカーとしては音質はベストな部類。満足できるレベルです。ただ配置に関しては少し使いにくいなと感じました。
写真のように画面を開いて横持ちした場合、スピーカーは下部の左右に配置されます。この状態で両手持ちすると、スピーカーが手で隠れてしまうのが難点。特にゲームをプレイする際にはしっかり握らなくてはいけないので、高確率で塞がれてしまいます。逆さまに持てばスピーカー問題は解決するのですが、今度は逆にノッチが右手親指部分に来てしまうため、多くのゲームの主要操作が右端から遠くなってしまい、プレイし辛くなってしまいます。Galaxy Foldのハイスペックをゲームに使いたいユーザーは注意です。
また、上記の配置から分かるとおり、縦持ちした場合はスピーカーが上下に来てしまい、左右ステレオになりません。例えば動画を再生しながら他のアプリも使うとなった場合、ノッチが動画の邪魔をしない縦持ちが快適。にも関わらず、縦持ちだとステレオ非対応。これは個人的にとても残念だったポイント。iPadなどのタブレットは4つのスピーカーを搭載する事で縦横どちら持ちでもステレオ再生できるので、Galaxy Foldにもそういったギミックがあれば嬉しかったところです。
端的に言えば、ノッチとスピーカーの配置の相性がとても悪い端末に感じました。
Galaxyの最新カメラ+大画面搭載は強力なコンボ
カメラ性能に定評のあるGalaxy S10シリーズやGalaxy Note 10シリーズと同世代のカメラを搭載しているGalaxy Fold。当然のように超広角・広角・望遠の3セットで搭載されており、特殊な端末でありながらしっかり最新スマホの最高画質で撮れるのが魅力。実際に作例も撮ってみました(サイズは掲載用に縮小しています)。
広角カメラで撮影した風景写真。普通に綺麗ですね。
超広角カメラもしっかり搭載。同じ場所から撮っても迫力のある画角になります。通常の広角カメラより少し色が強調され気味な印象を受けます。
超広角だけでなく望遠もしっかり搭載しているのは嬉しいところ。最近はiPhone 11やLG G8X ThinQなど望遠側を省く機種も増えてきている中、望遠も付いているのはフラッグシップの証とも言えます。草木のディテール感もあり、寄った写真がしっかり撮れるのは良いですね。
広角の夜間撮影。拡大すると塗り絵気味な所はありますが、スマホの画面で見る分には問題無いレベル。
広角の料理の撮影。
作例を撮影していて思ったのが、大画面でプレビューしながら現行Galaxyの最新カメラで撮影できるGalaxy Foldは中々貴重なポジションなのではないかという事。一般的にタブレットに搭載されるカメラはスマートフォンの物より画質が劣る物が多いですが、Galaxy Foldは最高水準のスマホカメラとタブレット級の大画面を兼ね備えた稀有な機種。カメラを構えたプレビュー中にディテールを確認できる利便性は勿論のこと、撮影した後の大画面でのレタッチ加工などもワンストップで1端末で完結するのは今までに無かった感覚です。
ポケットに入るiPad mini
Galaxy Foldのレビューで画面サイズの比較で引き合いに出される事の多い、iPad mini。実際以前レビューした5世代目iPad miniと並べてみました。画面サイズ自体を見てみるとノッチで欠けている部分はあるものの、画面サイズ自体はかなり近い事がわかります。
動画鑑賞の用途に関してはノッチによる画面欠け&上下の大きな黒帯の組み合わせであまり魅力的に感じませんでしたが、Kindleの漫画鑑賞に関しては完全にiPad miniの代替として文句無いレベルの快適さ。Galaxy FoldでKindleの漫画を読む場合縦持ちで1ページ、横持ちで見開き2ページになりますが、どちらのスタイルも非常に快適に感じました。
このデバイスがポケットに収まってしまい、手ぶらで出かけてどこでも取り出して使えるのは衝撃的です。ポケットに入るiPad miniと呼んでも差し支えないと思いました。
ギミックだけでない、性能を兼ね備えた実用端末
ここまでの完成度の2つ折り有機ELディスプレイの端末を市販モデルとして完成させたサムスンは、純粋に賛美に値すると思います。一般的にこういった尖った新技術を取り入れた端末は「キワモノ」として実用性は二の次で、そのコンセプトを楽しむ物として割り切る部分が多いのですが、Galaxy Foldはそういった割り切りが少ない機種なのではないかと思いました。
実際使っていると折りたたんだ際の分厚さ、外画面の情報量の少なさ、内画面のノッチの邪魔さなど気になる所はいくつかあるのですが、普通に使うスマートフォン・タブレットとしての処理性能、カメラ性能、そしてワイヤレス充電や指紋認証など2019年の最新スマホに求められる装備類を一通り網羅しており、その希少性にとどまらず道具としても魅力的な製品に仕上がっていると感じます。
価格は245,520円と高額ですが、最新のフラッグシップスマートフォンとフラッグシップタブレットをそれぞれ別々に1台ずつ購入する事を考えた場合、1台に収まってかつこの価格であればその価値はあるのではないかと思います。最新フラッグシップスマートフォンの装備とタブレット級の大画面をポケットに収められるのは他には無い魅力です。
今回自分は発売前に予約したものの初回入荷ロットが完売してしまい入荷待ちで12月になるまで触れなかったのですが、現在はauオンラインショップで在庫あり表示となっており、入荷を待たず即購入できるようです。
また、Galaxy Foldの中古品・新古品はau版・海外版ともに一定台数流通しており、中古スマートフォンを扱うイオシスにて178,000円から購入可能。キャリアの手続きを介さず直接購入したい方にはおすすめです。