GPD WIN4レビュー。UMPC&ゲーミングPCを集約した、ロマン溢れる夢のマシン

GPD社のポータブルゲーミングPC・UMPC「GPD WIN4」を実際に購入してしばらく愛用してみたので、その使用感や気に入っているポイントなどを振り返ってまとめていきます。


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この記事の目次

GPD WIN4とは

GPD WIN4は、中国の深圳に拠点を構えるGPD社が2022年12月にクラウドファンディングを開始し、2023年春に販売開始したポータブルゲーミングPC。OSにWindows 11を採用し、持ち運べる筐体ながらWindows用のゲームをそのままプレイできます。

ハードウェアとしてはCPUにRyzen 7 6800Uを採用する事でFullHD・60Hzの内蔵モニターで多くのPCゲームが快適に動作する性能を確保しつつ、スライド式の画面の下に物理キーボード、左右にゲームパッド、左に指紋センサー、右にマウス代わりの光学式ポインティングデバイスと、コンパクトな筐体にポータブルゲーミングPC・UMPCの様々な要素を詰め込んだデバイスとなっています。

また2023年モデルとして、CPUにRyzen 5 7640U・Ryzen 7 7840U、64GBのメモリ、4TBのストレージが選択可能になり、同社のGPD G1などのOCuLinkによる外付けGPU接続にも対応したマイナーチェンジモデルも2023年10月に登場予定。

今回レビューするのはRyzen 7 6800U・メモリ16GB・ストレージ512GB搭載のマイナーチェンジ前のベースモデルのGPD WIN4となっています。

購入のきっかけはApex Legends Mobileのサービス終了

今回GPD WIN4を購入したきっかけは、元々GPDは初代GPD WINやGPD Pocket、GPD Pocket 2など先代デバイスを過去に使ってきていてGPDは面白いメーカーだと感じていたのもありますが、iOS/Android向けの対人ゲーム「Apex Legends Mobile」がサービス開始から1年経たずしてサービス終了してしまい難民になっていた事から乗り換え先を探しており、ポータブルなApex Legends環境として有力なGPD WIN4の登場がタイミング的に噛み合っていたのが大きなポイント。

コンパクトな筐体に強力な処理性能と豊富なI/Oを備えたWindowsデバイスとしてゲーム面以外でも気になっていた機種だったので、2018年にレビューしたGPD Pocket 2以来の久々のGPD製品として手を出してみました。

結論から言うとApex Legedsのプレイ環境としては十分に機能しており、更にガジェットとしても大変気に入ったので、非常に良い買い物でした。詳しくは後述しますが、Windows版Apex Legendsが60fpsでしっかりプレイできて満足しています。

GPD WIN4のスペック&ROG Allyとの比較

GPD WIN4のスペック、及び同じポータブルゲーミングPCのカテゴリで人気のROG Allyのスペックを比較用に並べてみた表が以下のとおり。複数のスペックが選択可能な部分に関しては今回選択したものを太字にしています。また、今後登場予定の2023年版で選択可能になるオプションも併せて表に盛り込んでいます。


GPD WIN4

ROG Ally
CPU Ryzen 7 6800U
Ryzen 5 7640U(2023年版のみ)
Ryzen 7 7840U(2023年版のみ)
Ryzen Z1 Extreme
Ryzen Z1
メモリ 16GB
32GB
64GB(2023年版のみ)
16GB
ストレージ 512GB
1TB
2TB
4TB(2023年版のみ)
512GB
画面サイズ 6インチ 7インチ
画面解像度 1920×1080 1920×1080
リフレッシュレート 40Hz/60Hz 120Hz
画面輝度 445.1ニト 500ニト
タッチパネル 搭載 搭載
キーボード 搭載
内蔵マウス 光学式
ジャイロ 6軸 6軸
TDP 5-28W 9-30W
OS Windows 11 Home
Steam OSをサポート
Windows 11 Home
生体認証 指紋 指紋(電源ボタン)
モバイル通信 4G(外付け)
外部端子 USB-C(USB4)
USB-C(USB 3.2 Gen2)
USB-A(USB 3.2 Gen2)
3.5mmステレオジャック
microSDスロット
OCuLink(2023年版のみ)
USB-C(USB 3.2 Gen2)
ROG XG Mobile
3.5mmステレオジャック
microSDスロット
バッテリー
容量
45.62Wh 40Wh
電源 65W 65W
サイズ 幅220mm
奥行き92mm
高さ28 mm
幅280.0mm
奥行き111.38mm
高さ21.22~32.43mm
重量 598g 608g
価格 旧価格(6800U版)
140,000円(16GB/512GB)
154,000円(16GB/1TB)
175,000円(32GB/1TB)
193,000円(32GB/2TB)

新価格(2023年版)
110,500円(7640U/16GB/512GB)
137,800円(7840U/32GB/512GB)
158,700円(7840U/32GB/2TB)
202,000円(7840U/64GB/4TB)

109,800円(Z1 Extreme)
89,800円(Z1)
発売日 2023年4月
2023年10月(2023年版)
2023年6月14日
購入ページ Amazonなど ASUS直販サイト
Amazonなど

スペックとしては、基本はRyzen 7 6800U(マイナーチェンジ後はRyzen 5 7640UあるいはRyzen 7 7840U)を搭載し、多くのWindows向けゲームが1920×1080の60fpsで動作する小型のWindowsパソコン。

ライバルのROG Allyの売りであるRyzen Z1 Extreme・120Hzの高フレームレートのディスプレイといった部分は劣るものの、物理キーボードやマウスカーソルを動かせる光学式ポインティングデバイスを搭載しており、USB端子もフルサイズ+USB type C×2と潤沢に搭載され、ゲーム機としてだけでなくWindowsのUMPCとしても使いやすい構成になっています。

また、内蔵ストレージの換装は自己責任とはなるもののGPD WIN4はNVMe M.2 SSDの2280サイズを採用しており、小型の2230サイズを採用しているROG Allyよりも入手性が高いというのもパワーユーザーには嬉しいポイントとなっています。

GPD WIN4のパッケージ・外観

まず、GPD WIN4の実際のパッケージから見てきます。

GPD WIN4のパッケージ

GPD WIN4のパッケージは黒い箱に金色の文字という、GPD WINやGPD Pocketシリーズなどの歴代GPD製品に通ずるスタイル。GPD WIN4自体は初期の製品からかなり洗練されたイメージですが、パッケージにはアングラな振興ハードウェアメーカー感の雰囲気を残しています。

内蓋には「Quality」「Innovation」「Extreme」「Service」の4つの単語が漢字・アルファベットでプリントされて掲げられています。

内蓋を開くとGPD WIN4本体と保護フィルムが収まっています。画面部分のカバーには「Actions Speak Louder Than Words」のメッセージ。言葉より行動といった旨のメッセージですが、実際にプロダクトとして年々着実に進化しているGPDシリーズには説得力があると感じます。

本体の底には冊子類、上部の箱には充電器などの付属品が格納されています。

付属品はこちら。USB充電器+USBケーブル、ストラップ、および本体下辺のカバーの予備パーツが入っています。こちらのパーツはNVMeのストレージ換装の際に取り外すパーツとなっていますが、両面テープ固定のためテープごと予備が付属するという格好。

ストレージ換装前提のパーツが付属するあたり、かなりギーク向けの製品である事を感じます。

充電器は65WのUSB type C充電器。GPD WIN4側の上限に沿ったものとなっています。

保護フィルムはシンプルなものが付属しますが、画面側も平面のため貼りやすく実用性は十分。

画面サイズと比べてやや小さめのためこだわる方は社外品を買っても良いかもしれませんが、個人的にはタッチ操作や指紋の付着などに不満は無くこれで問題ないと感じました。

GPD WIN4の外観

こちらがGPD WIN4本体。PSPやPlayStation Vitaのようなスタイルの中央にディスプレイ、左右にゲームパッドという配置の筐体となっています。カラバリはホワイトとブラックの2色展開のうち、今回はホワイトを選択しました。

左側にはアナログスティック、十字キー、指紋センサー、セレクトボタン、左スピーカーが配置されています。

左下にはストラップを装着できる穴が配置されています。

右側にはABXYボタン、アナログスティック、光学式ポインティングデバイス、スタートボタン、右スピーカーが配置されています。また、左側でストラップ用の穴が設けられていた箇所は右側はメニューボタン

こちらがGPD WIN4の背面。

中央には大型の吸気口が設けられています。

左右はそれぞれパターン加工と僅かに膨らんだグリップが設けられており、それぞれにカスタマイズ可能なボタンを1つずつ装備。この浮きのお陰で平面に設置した際も吸気する隙間が確保されます。

質感としては滑り止めパターンのお陰で滑りやすくはないものの、膨らみが控えめなためゲームのプレイ時のグリップ感は弱め。

下部にはUSB 3.2 Gen 2のtype Cポートを搭載。充電や映像出力に対応するほか、専用クレードルを用いて据え置きPCとして使いやすいよう拡張することもできます。

カードスロットのような非貫通の溝は外付けの専用LTEモジュール固定用に設けられたもの。

上部には大きく排気口が設けられており、ポータブルでありながらWindowsゲーミングPCである事を感じさせます。左から順に電源、ボリューム上下、USB4端子、フルサイズUSB端子、3.5mmヘッドフォン/マイクロフォンポートを搭載。

電源ボタンとボリューム操作は同じ高さと素材で、たまに押し間違えるのが玉に瑕。特に画面をスライドしていると見えない位置で操作するボタンとなっているので、触った際に判別できるよう質感を分けてほしかったところです。

左側面にはmicroSDスロットと、マウス・ゲームパッド切り替えのスライダーが配置されています。

右側はBIOSリセットボタンのみ。

両肩にはL1・R1バンパーに、L2・R2アナログトリガーを搭載。L1・R2は透明パーツを採用しており、RGBライトがカスタマイズできるようになっています。

画面部分をスライドすると物理キーボードが出現します。配列はUS。

キーは小型ながら押し込みのクリック感があり、しっかりと押しているフィードバックがあるのは良いところ。長文のタイピングには向かないサイズなものの、Windows特有のちょっとしたキー操作が欲しい時にしっかりと物理キーがあるのは心強いです。

スペースの都合上キーは5段でファンクションキーはFnキー併用となっているものの、Fnキーは押しやすく、Fn+Windows+Printscreenといったキーコンビネーションも親指の組み合わせで発動でき、PCライクに使えます。

またFnキーとの組み合わせで左上の2キーで画面輝度、下部のスペースバーでキーボードバックライトのトグルが可能。

右アナログスティック下の光学式ポインティングデバイスは指でなぞる事でカーソル移動ができ、押し込みでクリック、長押しで右クリックが可能。アナログスティックのマウスモードと比べると素早く操作でき、ちょっとしたマウス操作に便利です。

初代GPD WINから四世代目になり、質感は劇的に進化

手元にあった2016年モデルの初代GPD WINと比べてみると、GPD WIN4は世代を重ねているだけあり質感は劇的に進化しており、所有欲をしっかりと満たしてくれるビルドクオリティとなっているのを感じます。

十字キー、ABXYキーは奥行きのある透明ボタンでクリック感もほどよく、ABXYは覗き込むとPlayStation配列に配慮した○・△・×・□が文字右上に確認でき、どちらの配列にも対応したパッドとなっています。ゲーム中は一番触るボタンながら初代GPD WINはこれらのボタンが非常にソフトだったので、ここは触っていて非常にわかりやすいポイント。

透明のL1・R1バンパーはユーティリティから光る色を手動で設定でき、ゲーミングデバイスらしいビジュアルとカチカチといったクリック感を備えています。ふにゃふにゃだった初代WINのL1・R1と比べると完全に別物で、この部分の満足度はかなり高め。

キーボードはバックライトを搭載していて、暗い場所でもキーの印字が分かりやすくなっています。ただ、この部分に関しては色が黄色であまり好みではなかったのでほぼ常時オフにして運用しています。ここは白だったらかなり良かったのではないかと感じました。

ディスプレイのスライド機構も片側だけに力を掛けてもしっかり垂直にスライドしてくれ、機構の剛性感・高級感を感じられます。

透明のABXYボタンの中を覗き込むとPlayStation系の△・○・×・□ボタンが小さくプリントされており、複数系統のボタンを記載する汎用的なWindowsゲーミングPCらしいアプローチでありながら質感高く仕上げられているのがユニークなところ。

初代GPD WINはいかにも中国の振興メーカーが作ったデバイスといった印象が強いチープな質感でしたが、GPD WIN4はソニーがPSP・PS Vitaの後継機をWindows搭載で作った未来を想像して作ったかのような高い質感を目指しているのが感じ取れます。透明のボタン類はPS Vitaを彷彿とさせ、スライド機構はVAIO UやPSP goを彷彿とさせます。

サイズ感はPS Vitaよりも大きく分厚く、Switchに近い感覚

筐体の雰囲気としては「ソニーっぽさ」もありPS Vitaを彷彿とさせますが、実物のPS Vitaと並べるとかなり分厚く大きめ。GPD WIN4の後にPS Vitaを触ると圧倒的に小型軽量に感じます。

サイズ感的にはNintendo Switchに近く、更にWindows機ということもあり厚みを感じる筐体。従来のポータブルゲーム機と比べるとかなり肉厚なデバイスとなっています。

ソフトウェアをチェック

続いて、GPD WIN4のソフトウェア面をチェックしていきます。

出荷時のパーティション構成はCドライブ300GB、残りがDドライブ

出荷時のGPD WIN4は選択したストレージ容量問わず、Cドライブが300GB、残りがDドライブとしてパーティション設定されているようです。今回は512GBのモデルを選択したため、エクスプローラから見た容量がCドライブ299GB、Dドライブ161GBとなっていました。

1TB以上のモデルであればまだ納得できる割り振りですが、データ保存用のドライブが約160GBしかないというのはゲーミングPCとしては使い勝手はイマイチ。ゲーム保存用をDドライブにするのであればこの手のデバイスはOSの入ったCドライブは300GBも必要無く、Dドライブ側も容量が足りないため、これであればそもそもパーティションを分けずに全領域をCドライブにしてほしかったところです。

「Motion Assist」でTDP、ファンの速度などが制御可能

プリインストールされているMotion Assistantというツールを使うと、GPD WIN4のTDP、ファンの回転速度、フレームレート(60/45)、ジャイロセンサーによるマウス操作、タッチスクリーンロックのショートカットなどが設定可能。

ここでTDP設定を制御する事で処理性能とバッテリー持ちどちらを優先するかを設定することができ、処理性能を必要としないゲームやUMPC的タスクの場合は5Wや8Wの小さい数値、高い処理性能を要求するゲームの場合は23Wや28Wなどの高い数値といった具合に、用途に合わせて調整できます。

「Win Controls」で背面ボタン、バイブ、LEDなどが調整可能

もうひとつの付属ソフトのWin Controlsを使うと、GPD WIN4本体の背面ボタンをはじめとするハードウェアの機能がカスタマイズできます。

背面のボタンにはキーボードのキーのほか、ゲームパッドのボタンや同時押しなども割り振ることが可能。キーコンフィグ的に同時操作が難しいボタンなどを設定するとゲームのプレイが楽になります。

またマウスモード時のボタン類のキー割り振り、L1・R1ボタンのLEDの色と点灯パターン、バイブレータの設定(オフ・弱・強)が選択可能。

バイブレータはデフォルトで弱に設定されておりかなり控えめの出力になっているため、プレイ時にしっかりとしたフィードバックが欲しい方は強にするのがおすすめです。

ソフトウェアは全体的に必要最低限

ROG Allyなど独自ソフトが潤沢に盛り込まれたポータブルゲーミングPCと比べると、GPDのソフトウェアは本当に必要最低限。Motion Assistに至っては有志の個人開発ソフトとなっており、実質的にWin Controlsで最低限の設定変更ができるのみにとどまっています。

プレイ中のユーティリティ系などを盛り込んだゲーミングを売りにしている他社製品と比べるとこの辺りはかなりゲーミング色が薄く、どちらかというとUMPCライクだなと感じる部分です。

実際に使ってみた使用感

続いて、実際にGPD WIN4をゲームや他の用途に使ってみた使用感を順に取り上げていきます。

「Apex Legends」は60fps安定でプレイ可能

実際に今回GPD WIN4でメインでプレイしたタイトルがApex Legends。そもそも今回GPD WIN4の購入に至った大きな理由のひとつとしてiPhone 14 Pro MaxでプレイしていたApex Legends Mobileが1年経たずサービス終了してしまい代替を探していたというものがあったので、購入前からかなり期待値のハードルを上げていた部分でもあります。

結論から言うと画質設定は下げる必要はあるものの快適にプレイできており、実際GPD WIN4で最も時間を費やしているタイトルとなっています。

先述したMotion Assistantでフルの28Wではなく23Wの設定であってもフレームレート的には基本的に60fpsに張り付いてプレイでき、一部マップでゲーム開始時の降下前などでマップ全体を俯瞰して見渡す特定の部分で40〜50fps程度になりはするものの、性能の限界による引っ掛かりが要因でプレイに支障が出ることはほぼありませんでした。

ただ熱には弱く、気温が30℃を超える日本の夏はゲームのプレイに冷房は必須。気温が高いと露骨にフレームレートが下がるので、遊ぶ時は冷房は必須条件になります。

また、処理性能以外の点で感心したところといえば左右のスティックのセンターがあまりに正確で、デッドゾーン設定が不要だったこと。ゲームパッドのスティックは少しでも中心がズレていると指を離している間に少しずつスティックが動いてしまうため無反応にするデッドゾーンの設定が不可欠になったりしますが、GPD WIN4に関してはスティックのセンターがしっかり取れていて一切デッドゾーンを設定しなくてもプレイに支障が出ませんでした。この辺りにもWIN4の作りの良さを感じられます。

フル稼働させると電池持ちは1時間強

TDPを23Wや28Wに上げなければならないApex Legendsのような3Dのゲームをプレイすると、GPD WIN4の電池持ちは1時間強程度。この手のゲームを長時間プレイしたい場合は電源供給が必須です。

ゲーミングデバイスをiOSからWindowsに移行してネックに感じたのがこの点で、やはり単体で連続プレイ可能な時間が短いのは本腰を入れてWindowsゲームを遊ぶ際には気になるところではあります。

「原神」はモバイルとの画質の差に感動

美しいグラフィックに定評のある「原神」は、やはりGPD WIN4でプレイするとWindows版なので画質の良さが際立つと感じました。6.7インチワイドのiPhoneのPlus/Pro Maxシリーズと比べると6インチのGPD WIN4は画面サイズは同程度ではあるものの、画質は雲泥の差。

特に綺麗な景色に定評のある原神においては景色のディテールが段違いで、上記の写真でも港の船や空に浮かんでいる建造物など遠くのものはモバイル版では省略されている事がわかります。

景色の楽しみが圧倒的に倍増するので、画質のためだけでもWindows版をGPD WIN4でプレイしたくなると感じました。

「NEEDY GIRL OVERDOSE」などキーボードが少し必要なゲームも快適

Windowsを搭載したポータブルゲーミングPCは物理キーボードを搭載しない、ゲームパッドとタッチパネルのみの製品が多いですが、実際Windows向けのゲームはキーボードで少しだけ入力する操作が発生するゲームも多く、物理キーボードがあるとかなり快適性に差が感じられます。

例えばNEEDY GIRL OVERDOSEでは基本的にマウス操作になるためマウスモードのアナログスティック・光学式ポインティングデバイス・タッチパネルを駆使してプレイする事になりますが、少しだけ文字を入力させる箇所がゲーム中に登場するので、こういったところはキーボードがあると非常に便利。キーボードがある前提のパソコン向けの文化圏を楽しむには物理キーボードは強力な装備だと感じました。

またNEEDY GIRL OVERDOSEのような2DのゲームであればTDPを大幅に下げても快適にプレイできるため、先述したMotion ControlsでTDP設定を編集するのもおすすめです。

スピーカーは音量は十分なものの、指向性が分かりにくく満足度は低め

内蔵スピーカーは前面に搭載されているためプレイ中でも手で塞がれることなくしっかりと聞き取る事はでき、音量も十分に感じますが、音の質という意味では正直満足度は低め。

多少のステレオ感はあるものの、対人ゲームをプレイ中の足音の方向などは分かりにくく、これは内蔵スピーカーでも音が分かりやすく快適にゲームが遊べるiPhoneに劣る点だと感じました。

ただ上部にフルサイズのUSB端子を搭載しているので、LogicoolのLIGHTSPEEDなどUSBドングル接続の低遅延ゲーミングヘッドセットとの相性は良好。実際Logicool G435と組み合わせてみたところ非常に快適で、ディスプレイ部分をスライドさせるとドングルも見えなくなるため筐体から不恰好にドングルが飛び出る事なく快適に使えて良かったです。

GPD WIN4は内蔵マイクもイマイチなので、こういったUSBドングル型のゲーミングヘッドセットを追加するとゲーム体験は非常に良くなります。

他社だとUSB type C一本に限定されているポータブルゲーミングPCも多いですが、やはりフルサイズのUSB端子が一つあると拡張性の面でメリットがあると感じます。

外部モニター・モバイルモニターとの相性も抜群

GPD WIN4はモバイルモニターと組み合わせると中々快適で、稼働時間は限られるものの、GPD WIN4側から給電してモバイルモニターが使えるので、内蔵バッテリーだけで大画面でゲームをプレイしたりPC作業したりといったことが可能です。

十分な長さのUSBケーブルがあれば据え置きのゲーム機で遊ぶような体勢で手元のGPD WIN4のコントローラーで操作して大画面で遊ぶ事もでき、ゲーム機本体がコントローラーの中に入っている不思議な感覚ながら快適なゲーム体験が得られます。

また、据え置きのモニターに関してもUSB type C接続が可能なモニターであればGPD WIN4へモニターから給電しつつ、GPD WIN4からモニターへ映像出力ができ、こちらも相性抜群。ケーブル1本で給電と映像出力ができるのはMacBookなどのノートパソコンで十分に利便性を体感済みではあったものの、GPD WIN4のような小型デバイスでこれができるのはノートより更に効果的だと感じました。

コンパクトなGPD WIN4にUSBケーブル1本繋ぐだけでデスクトップ環境が瞬時に構築でき、生体認証も手元のGPD WIN4の指紋センサーで行えるので、デスクトップ&持ち運びのハイブリッド環境として非常に強力かつ気持ちよく使えます。

単体使用時のUMPC的な魅力に加え、据え置きのデスクトップ環境として使うに十分な性能を兼ね備えており、更に映像出力もUSB type C一本で出来る上に上部のUSB4端子からはeGPUの接続にも対応しているため更に強力なGPU性能が必要なデスク環境を作りたい場合でも十分対応可能な拡張性があり、Windowsのガジェットとしての魅力に溢れていると感じました。

LTEモジュールは欲しいものの、USB4を潰すのは勿体無い

GPD WIN4には専用のLTEモジュールが用意されていますが、これは背面の上下に引っ掛けて固定し、上部のUSBポートに有線接続する、言わば専用形状のUSBデータ通信端末のようなもの。

しかも使用するUSB端子が最も高速なUSB4端子となっているのが非常に勿体無い点で、ここはせめてLTE接続しながらUSB4端子が使えるよう下部のUSB type Cポートや上部のフルサイズUSBポートを使ってほしかったところ。理想を言えば専用の電子接点をつけるなり、モバイルデータ通信モジュールを内蔵可能にするなりスマートな実装にしてほしかったです。

実際GPD WIN4を持ち出してiPhoneのインターネット共有を使っていると不安定になる事も多く、安定した通信のためにもLTEモジュールは是非欲しいとは思いましたが、USB4端子を潰して有線接続は正直少し気が引けてしまうところに感じます。

ゲームはインストール・アップデート時間を気にしなければmicroSDでもOK

今回512GBという最低容量のモデルを選択したためゲームのインストール領域としてmicroSDスロットにJNH Promateの512GBを追加して運用してみました。読み書きの速度のベンチマークは上記のとおりNVMeの内蔵ストレージと比べると読み書きともに100MB/s弱まで大きく落ちてはいるものの、実際Windowsのゲーム機として運用した場合、初回のインストール時やアップデート時こそはそれなりに時間は掛かるものの、プレイ時にはmicroSD側の読み書きの遅さによるストレスを感じる事はありませんでした。

NVMeの換装はできるものの、容量を増やしたい方はまずmicroSDスロットに増設して本当に内蔵ストレージのアップグレードが必要か試してみることをおすすめします。

Ryzen 7 6800Uは性能的に満足なものの、マイナーチェンジは気になるところ

GPD WIN4に搭載されているRyzen 7 6800Uは用途に対して十分な性能で、実際使っていて大きな不満はありませんでした。実際にベンチマークソフトのGeekbench 6で計測してみた性能の数値を、今後登場予定のマイナーチェンジモデルのRyzen 5 7640U・Ryzen 7 7840Uで計測された同ベンチマークの記録と比較したものが以下のとおり。

シングルコア マルチコア グラフィック(OpenCL)
Ryzen 7 6800U 1913 6928 20949
Ryzen 5 7640U 2479 9362 22341
Ryzen 7 7840U 2540 10802 29046

マイナーチェンジ後のGPD WIN(2023)は下位モデルのRyzen 5 7640UであってもRyzen 7 6800Uを全てのスコアで上回っており、現在Amazonで予約すると10月20日発売予定でエントリーモデルが110,500円と、マイナーチェンジ前の同じ構成のモデルの140,000円よりも市販価格が安くなっており、発売日まで待てるのであれば基本的にマイナーチェンジ後のモデルを選べば良いでしょう。

OpenCLのグラフィック性能に関してはRyzen 7 6800U→Ryzen 5 7640Uは微増といった感じな一方で、2023年上位モデルに搭載のRyzen 7 7840Uまで行くと20949→29046と大幅にグラフィックのスコアが上がるので、よりリッチなグラフィックのゲームをプレイしたい方はこの上位モデルを選択する価値がありそうです。

GPD WIN4の良いところ・悪いところ

最後に、GPD WIN4の良いところ・悪いところをまとめます。

良いところ

  • 多くのWindows向けゲームがFullHD・60fpsで快適にプレイできる
  • ゲームパッドのスティック・ボタンのクオリティが高い(個人的にAllyより好き)
  • 物理キーボードを搭載していて、Windowsとして使いやすい
  • 光学式ポインティングデバイスが使いやすい
  • アナログスティックのマウスモードも使いやすい
  • 指紋認証を搭載しており、精度が十分に高く滅多に失敗しない
  • USB4(eGPU対応)を含む3つのUSB端子で拡張性が抜群
  • 上からも下からもUSB充電でき、プレイ中の充電が快適
  • 制御すれば冷却ファンは静かでゲームの妨げになりにくい

全体的に完成度が高く、処理性能面でも不満無し。モバイルできるWindowsとして非常にハイレベルで、ボタン類の押し心地なども高級感があり他社製品より好みでした(唯一、背面ボタンだけはROG Allyの方が良かったです)。ロマンあふれた端末をここまで完成度高く仕上げてくれたのは嬉しい限り。

悪いところ

  • スピーカーの音質がいまいち
  • マイクの音質がいまいち
  • グリップの握りやすさはいまいち
  • 6インチの画面はゲームには微妙に小さい
  • 画面が60Hzどまり(ROG Allyは120Hz)
  • フル稼働させると1時間で電池が切れる(iPhone比だと短い)
  • LTEモジュールの後付け感がすごい
  • 付属ユーティリティなどのソフトウェア面が弱め

やはりゲーム機として見ると、ROGのような大手ゲーミングブランド発の製品と比べて音質面・グリップの握りやすさ・画面の性能(大きさ&フレームレート)・プレイ中使えるユーティリティの充実度など劣っている点も感じ、あくまでゲーム寄りのUMPCなのだと感じます。

ただ画面に関してはROG Allyのような7インチ・120Hzの画面を搭載したデバイスはクラムシェル型の派生モデル「GPD WIN mini」として開発中のようなので、その次のGPD WIN5では確実にディスプレイのアップグレードは来るでしょう。

ロマン・性能・実用性を兼ね備えた夢のマシン

GPD WIN4はストレートに言って、好きな人からしたら「たまらない一台」だと感じます。

この小さな筐体に通常はWindowsのデスクトップPCで遊ぶようなタイトルを動かせる性能が詰まっている上、モバイルPCとして扱いやすい物理キーボードを搭載し、外部接続端子も豊富なため拡張性も高く、ストレージのアップグレードも自分で行え、ガジェットとしての面白さが集約されています。

このサイズにこれだけの事ができるようになったのは、一昔前からすると夢のマシンと言ってもいいでしょう。従来の小型のガジェットと言えば性能的な制約が大きい中でどれだけ使えるかというのが当たり前の世界でしたが、GPD WIN4はこれからの世代の「モバイル端末で出来る事」を示してくれるマイルストーンとなる一台でした。

また実用的な処理性能に加えてeGPUを追加してゲーミングデスクトップ環境を作ったり、LTEモジュールでモバイルに特化したりと、拡張の方向性次第で全く別の方向のデバイスに化けるのが面白いところ。

大手メーカーの製品と比べるとソフトウェア面が貧弱ではあるものの、Windowsデバイスであるためここをカスタマイズするのも醍醐味。公式に対応を謳っているオープンソースのゲームランチャーであるPlayniteを入れたり、有志の開発したユーティリティや豊富なWindows向けソフトで使い勝手を高めていくのも楽しみのうち。

単純にWindowsのゲーム機として見た場合は6インチの画面は小さすぎると感じましたが、UMPCとして見ると逆に6インチ画面でこのレベルのマシン性能が詰まっているのは高揚感があり、この辺りのバランス感がGPDを他のゲーム特化のメーカーと決定的に分けるポイントだと感じました。これは間違いなくゲーマーではなくギークに向けた製品でしょう。

最近面白いガジェットが無いなと思っている方にこそ、ぜひ一度手に取ってみてほしい製品です。

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キリカ

ガジェットショットを作った人。本業はUI/UXデザイナー。趣味は理想のデスク環境作り、愛車「エリーゼ」「ジュリエッタ」でのドライブ、車旅を動画・写真に残す事。