スマートフォンをマウントして撮影の幅を大きく広げてくれるスマートフォン用ジンバル「Insta360 Flow」をメーカーよりご提供いただいたので、使用感をチェックしていきます。
Insta360は360度カメラなどユニークな撮影機材を送り出しているメーカーですが、カメラ本体ではなくスマートフォンのカメラを利用して撮影の幅を広げるジンバルとして発売されたのが今回紹介するInsta360 Flow。
スマートフォンの手ブレを抑えて映画のような安定したカメラワークの動画撮影ができるスマートフォン用の3軸スタビライザー搭載ジンバルはDJIのOSMO Mobileシリーズを筆頭に様々なメーカーから発売されていますが、一風変わったカメラばかり発売しているInsta360だけに他社と比べて一味違う製品となっています。
大きな特徴としてはコンパクトに折り畳める機構でありながら三脚を内蔵していたり、iPod Classicライクにくるくるとタッチで回す事で操作できるシンプルなホイールを搭載していたりと、使い勝手を向上させるユニークなギミックが詰め込まれているところ。
今回はiPhone 14 Pro Maxと組み合わせて色々と作例を撮影してみました。
この記事の目次
Insta360 Flowクリエーターキットのパッケージ内容
今回製品提供でいただいたのはInsta360 Flowの「クリエーターキット」という撮影に便利なアクセサリが含まれるパッケージ。単体の「通常版」と「クリエーターキット」の違いとしては、クリエーターキットには追加でスポットライト、収納ケース、Flowとスマートフォン本体を繋ぐUSB-CとLightningのショートケーブルが含まれています。
カラバリは「サミット・ホワイト」と「ストーングレイ」の2色展開のうち、今回はストーングレイを提供していただきました。
開封時にはスケルトンボディが真っ先に目に入ってくるのが印象的です。
クリエーターキットには左の収納ケースが含まれます。
同梱品を並べたところ。通常版に含まれる
- Insta360 Flow
- 保護ポーチ
- 磁気スマートフォンクランプ
- グリップカバー
- Type-C to A 充電ケーブル
に加え、クリエーターキットは
- スポットライト
- 収納ケース
- Type-C to Cケーブル
- Type-C to Lightningケーブル
の4点が追加されています。
収納ケースはInsta360 Flow本体がすっぽり収まるサイズで、持ち運びに便利なベルトも付属しているので持ち歩いてすぐに取り出して使いたい場合などに便利です。
Insta360 Flow&アクセサリの外観
こちらがInsta360 Flow本体。ストーングレイのカラーリングに加え、中身が見える半透明の素材が使われている点で他社のスマートフォン用ジンバルと比べてユニークな外観。この辺りのスタイリングが収納ケース含め統一されている点もInsta360の世界観作りの上手さを感じるところです。
基盤を見せるスタイリッシュなスケルトン部分。
細部を見るとInsta360のブランドスローガン「Think bold.」の理念の詳細が印字されています。大胆な考えにより現状を打開するというInsta360の考えは超小型アクションカメラや360度カメラなどイノベーティブな製品に繋がっており、本体のデザインに理念を組み込んでしまうあたり強い思い入れのあるスローガンであることを感じます。
なお、スローガン左部分は着脱可能なアクセサリシューのマウントとなっており、外部マイクなど追加の撮影機材を搭載したい場合に使うことができます。
反対のヒンジ部分にもスローガン「Think bold.」とInsta360の名前が基盤内にプリントされており、細部までこだわられていることが分かります。
操作部分は一通りの機能がシンプルな外観のホイールに集約。
録画・カメラ切り替え・電源は押し込める物理ボタンとなっており、中央には方向操作が可能なスティックを配置。このホイールはiPod Classicのホイールのようになぞって回転させることでジンバルの追従モードの切り替えが可能となっており、上部のオート・フォロー・パンフォロー・FPVの4つのインジケーターが示す追従モードを素早く切り替えることができます。
またホイールの外周のギザギザは物理的に回せるダイアルとなっており、電動ズーム搭載カメラのホイールのように撮影時のズーム操作を行うことができます。
操作形態はこのホイールと背面の追従のオン・オフのためのトリガーの2部分だけとなっており、一通りの操作を集約していながら非常にシンプルにまとまっていて初めてでも使いやすく感じました。
スマホをマウントするクランプ部分は磁石で着脱可能となっており、取り付けはクランプを一旦スマホの背面中央に取り付けてから磁石でカチャッとはめるだけですぐに使い始められてシンプル。
グリップの上の部分は伸縮ポールとなっており、長さを伸ばせるだけでなく角度を付けることもでき、高いアングル・低いアングル・自撮りなど、幅広いバリエーションでの撮影が単体で可能。
グリップの下の部分も伸縮式となっており、格納状態では短いグリップを延長することができます。
また延長グリップ部分は三方向に開いて内蔵三脚としても機能するため、Flow本体を固定して追従撮影したり、タイムラプス撮影をしたりといった撮影スタイルも三脚を別途用意することなく可能。
コンパクトなサイズながら、本来延長ロッドや三脚など追加アクセサリが必要だった撮影スタイルにも内蔵のギミックで対応しており、Insta360 Flowとスマートフォンの2つさえあれば完結するようになっているのは本製品の強み。
クランプ部分はスマートフォンの側面ボタンに干渉しにくい形状になっています。
こちらはクリエーターキットに含まれるスポットライト。明るさ・色温度がボタンで調整できます。
回転するようになっており、前後どちらでも照らすことができます。
iPhoneと共にマウントしたところ。電源はUSB type Cとなっており、Insta360 Flow本体のポートからの給電が可能。
クリエーターキットに含まれるUSB type C/Lightningのショートケーブルは同USB type Cポートからスマートフォンを給電するのにもジャストサイズで、スマートフォン本体の電池残量が気になる長時間の撮影にも対応できます。
Insta360 Flow本体の充電はダイアル右側のUSB type Cポートから可能です。
こちらは公式ストアでの購入特典のアウトドア三脚。
こちらが実物。コンパクトに折りたたむことができます。
二段階に展開することができ、Insta360 Flow本体の内蔵三脚と比べて足が長く安定感があります。
高さに関しては展開した状態ではInsta360 Flow本体の内蔵三脚と比べて大きく変わるわけではないので、用途としては風の強い屋外でタイムラプスなどの長めの撮影をしたい場合により安定感を求める場合などに重宝するアイテムです。
なお、このアウトドア三脚は高さこそは無いものの安定感は高いため、同社のInsta360 X3+見えない自撮り棒と組み合わせると高い位置に固定して360度撮影ができて非常に効果的。Insta360の製品を複数組み合わせて動画を撮影する際には一層活躍してくれます。
Insta360 Flowの作例
続いて、実際にInsta360 FlowとiPhone 14 Pro Maxを組み合わせて使ってみた作例のサンプルを取り上げていきます。
複数の画角をダイアルで簡単に切り替え
まずは通常の動画モードで撮影した作例。手ブレ補正が特に破綻する事なく綺麗に効いています。また、撮影に使用したiPhone 14 Pro Maxに搭載されている超広角・標準・望遠の3つのレンズをダイアルを親指で弾くだけでワンタッチで素早く行き来できています。
ズーム用のダイアルは素早く回転させるとレンズ切り替え、ゆっくり回すと速度を調整しながらズームができ、操作性はとても快適に感じました。
ワイドスクリーンモード
ワイドスクリーンモードで撮影すると、自動的にフィルタが適用され、アスペクト比2.35:1のシネマライクな横長動画の撮影が可能です。カジュアルに映画風の映像が撮影でき、編集の手間をかけずに簡単に映画風のショットをVlogなどに組み込みたい方にはとても重宝しそうだと感じるモードでした。
ドリーズーム
「ドリーズーム」という、カメラを後ろに引き下げながらズームインする事で、中央の被写体のサイズは変わらないにも関わらず背景のパースが変わっていく撮影手法をスマホで簡単に撮影できるモードも搭載。ドリーズームモードに切り替え、画面上の被写体を選択し、録画ボタンを押したら後はカメラを後ろにまっすぐ引き下げるだけで簡単にドリーズーム撮影が可能。
Insta360アプリがズームインや被写体追従を全自動で行ってくれるため撮影者はInsta360 Flowをまっすぐ後ろに引き下げるだけで撮影ができますが、上下左右にズレたりするとドリーズームっぽさが損なわれてしまうため、アプリとジンバルの補助があっても撮影難易度はやや高め。
また、ズームインに関してはデジタルズームとなるため引きすぎると画質の劣化が気になってしまうためそれほど長い距離のドリーズームには向かず、一瞬差し込むための短いドリーズーム素材を撮影するためであれば飛び道具としては使えそうな機能だと感じました。
タイムラプス+AIワープ
以前Insta360 Ace Proのレビューでも取り上げた生成AIサーバーに動画を上げることで短いAI加工動画が作れるAIワープ機能がInsta360 Flowでも利用可能になっていたので、タイムラプス機能と組み合わせてみた作例がこちら。
空を差し替えるといった用途はAIワープの得意とする分野で、今回は雪の降る冬の空を撮影したタイムラプスに「Winterland」というプリセットを適用したところ、空にオーロラを追加することができました。
生成AIによる加工はプリセットだけでなく手動でプロンプトを入力する事ができ、使い方によってはかなりこだわって面白い素材を生み出す事が可能です。
ローカルではなくInsta360のサーバーにアップロードして処理するため1日あたりの回数制限・15秒までの素材の長さの制限・4秒までのAI適用範囲の制限があるものの、こういった他には無いユニークな素材が作れるのはInsta360ならではの特徴です。
社外MagSafeアダプタを使うとより便利に
スマホ側のクランプとジンバル側をマグネットで着脱できるInsta360 X3ですが、iPhone 12以降で搭載されているMagSafeに対応していればクランプを毎度はめ込む手間が省けて便利そうだなと思って探してみたところ、アメリカのAmazon.comでFotoleeyというメーカーからMagSafeに対応させるアダプタが発売されていたので試してみたところ、想像通り便利に使えました。
金属プレートにInsta360 Flowのパーツと同じ形状の凹みが設けられており、同じ使用感で使う事ができます。
iPhone 15をアダプタを使って装着したところ。アプリから一度キャリブレーションが必要でしたが、クランプで挟む手間が無くなり、撮影のハードルが低いInsta360 Flowが一層手軽に使えるようになりました。
Insta360 Flowとアダプタ、アダプタとiPhone両方がマグネットで装着されるため剥がす時にややコツが必要ではあるものの、クランプでiPhoneを挟む手間と比べたら圧倒的に楽。ただ360度の写真撮影にはiPhoneを前後逆にマウントする必要があるため、純正クランプが必要です。
価格は約26ドル(4,000円弱)ですが、利便性が飛躍的に上がるのでおすすめです。
撮影の手軽さとクリエイティブさを兼ね備えたジンバル
既に各社から成熟した製品が出揃っているスマートフォン用のジンバル市場に、アクションカメラ屋のInsta360が初製品として投入してきた今回のInsta360 Flow。手ブレ補正や被写体追従などは出来て当然、マグネット式の着脱機構もDJI Osmo Mobileシリーズが先行して採用している中で、Insta360が差別化してきたのはやはり「撮るハードルの低さ」だと感じました。
コンパクトに折りたたんだ状態から展開するだけで電源がオンになり、iPhoneアプリにはInsta360アプリの起動を促す通知が表示されるためアプリを探してタップする必要も無く、装着も磁石で素早くできるので、とにかく取り出して撮影するまでの距離が短いのが特徴です。
本体が小さくたためるだけでなく必要な機能が本体に内蔵されているのも撮影ハードルを下げてくれるもう一つの大きな要素で、三脚を持ち運ばずとも内蔵三脚で立てる事ができ、延長ロッドを持ち運ばずとも首を伸ばす事ができ、モバイルバッテリーを別持ちせずともFlowからスマホを充電でき、とにかく追加の荷物が不要な事で持ち出すハードルがとても低くなっています。
これだけ手軽に使える製品でありながら、手持ちでは難しい滑らかな手ブレ補正、三脚を使った被写体追従の自撮りなど、スマホ単体では撮るのが難しい映像表現が簡単に実現するので特にカメラの良いスマホを持っている方は是非試してみて欲しい製品です。単体で使うよりも更にカメラの性能を引き出す事ができるのは間違いないでしょう。
要望があるとすれば、社外品のMagSafeアダプタが非常に便利でそのままでも手軽なInsta360 Flowが一層楽に使えるようになったので、ぜひ標準のアクセサリでカバーしてくれると理想的ではあります。
総括するとInsta360 Flowは持ち運びやすく、撮るまでの障壁が低く、表現の幅も広く、本体デザインも愛着の湧くスタイリッシュな外観で、手ブレ補正も破綻する事無く高精度。Insta360社初のスマホジンバルでありながら完成度はとても高いと感じました。
価格は通常版が20,900円。今回レビューしたのは28,000円のクリエーターキットですが、スマホ充電用のケーブル、収納ケース、スポットライトなどは必須ではなく、とにかく手軽に撮影できるInsta360 Flow単体の良さを体験するには通常版で十分だと感じます。こちらのリンクから公式ストアで購入するとクリエーターキットの同梱物のスポットライトも通常版に無料特典として付属するので、それ以外のUSB-Cのショートケーブルや収納ケースは差額で好きな物を必要に応じて買うのがおすすめです。
追記:Insta360 Flow Pro発売にあたって、Insta360 Flowにも対応した純正のMagSafeアタッチメントが3,600円で発売されています。