2022年9月16日発売のiPhone 14シリーズの最上位モデル「iPhone 14 Pro Max」を実際に動画撮影、ゲーム、普段使いなどで実際に使ってみたので今年も評価をしていきます。
この記事の目次
発表前は「今年はスルーかな?」と思っていた14シリーズ
正直なところ、今回のAppleの発表を見る直前までは昨年のiPhone 13シリーズを使い続け、今年のiPhone 14シリーズは購入を見送ろうと思っていました。
7月頭の円安によるApple製品全体の値上げもあり価格も高騰している上、昨年のiPhone 13 Pro Maxのレビューでも「マクロ」「望遠」の写真撮影がイマイチで、結局どちらも不要に感じたためコンパクトで使いやすいiPhone 13 miniをメインで使い続けており、しかも今年は後継の「mini」は無し。
買う理由があまり無いな、と思っていたところで今回気が変わってiPhone 14 Pro Maxを購入するに至ったのは、まず第一にインカメラの穴をUIの一部として使う「Dynamic Island」の搭載。iPhoneのUIが大きく変わるタイミングなので、やはり触っておきたいという所が一番大きかったです。
また、カメラ面でも4800万画素のメインカメラを搭載する事で高精細なRAW撮影が可能になった上、センサー中央部を使った1200万画素の「2倍」の望遠撮影が実装され、昨年のiPhone 13 Pro Maxで不満だった「1倍」「3倍」の間の美味しい画角が抜け落ちている問題も解消された点も見逃せませんでした。
実際に購入して使ってみた結論で言えば、Dynamic Islandは想像通り完成度が高く、それ以上にカメラに関しては想像以上でAppleの発表に無かった部分まで大きく進化していた事が確認できたので、結果的に今年は「Proの当たり年」だと言って差し支えないモデルでした。
今回のレビューでは実際にDynamic Island、写真撮影、動画撮影、ゲームと言った具体的な用途での使い心地を評価していきます。
iPhone 14 Pro Max/iPhone 13 Pro Maxをスペック比較
昨年のモデル「iPhone 13 Pro Max」との比較を交えた進化ポイントの一覧は以下のとおり。
iPhone 14 Pro Max |
iPhone 13 Pro Max |
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発売日 | 2022年9月16日 | 2021年9月24日 |
チップ | A16 Bionic | A15 Bionic |
画面サイズ | 6.7インチ | 6.7インチ |
画面解像度 | 2796×1290 (460ppi) | 2778×1284 (458ppi) |
リフレッシュレート | 120Hz (ProMotion) | 120Hz (ProMotion) |
ディスプレイ新機能 | Dynamic Island 常時表示ディスプレイ |
– |
最大輝度 | 1,000ニト | 1,000ニト |
ピーク輝度(HDR) | 1,600ニト | 1,200ニト |
ピーク輝度(屋外) | 2,000ニト | – |
カメラ | 48MPメイン (F/1.78) 0.5倍超広角 (F/2.2) 3倍望遠 (F/2.8) |
12MPメイン (F/1.5) 0.5倍超広角 (F/1.8) 3倍望遠 (F/2.8) |
手ぶれ補正 | センサーシフト光学式手ぶれ補正 (第2世代) |
センサーシフト光学式手ぶれ補正 |
カメラ新機能 | Photonic Engine 48MPカメラを使った2倍望遠(12MP) アクションモード フロントカメラAF |
– |
サイズ | 高さ 160.7 mm 幅 77.6 mm 厚さ 7.85 mm |
高さ 160.8 mm 幅 78.1 mm 厚さ 7.65 mm |
重量 | 240g | 238g |
Bluetooth | 5.3 | 5.0 |
GPS | 高精度2周波GPS (GPS、GLONASS、Galileo、QZSS、BeiDou) |
GPS、GLONASS、Galileo、QZSS、BeiDou |
その他新機能 | 衛星通信SOS 衝突事故検知 |
– |
今年のiPhone 14 Proシリーズは順当にA15 BionicからA16 Bionicにアップグレードされており、GPUのメモリ帯域幅が50%アップ。今年のラインナップは通常のiPhone 14がA15 Bionic、ProがA16 Bionicと差別化が図られているため、Pro・Pro Maxを選ぶメリットの一つとなっています。
ディスプレイはTrueDepthカメラのセンサー類を画面上の「島」として独立させてUIの一部とした「Dynamic Island」を採用した新形状となり、常時表示に対応。画面サイズに関しては昨年のMaxから引き続き6.7インチになっていますが、Dynamic Islandの採用と共にやや解像度・画素密度がやや引き上げられ高精細になっています。
画面の輝度に関しては通常時の最大輝度は1,000ニトのままですが、HDR時のピーク輝度が1,200→1,600ニトに引き上げられ、更に屋外では通常時の2倍の2,000ニトのピーク輝度が出せるように大きく進化。屋外での見やすさが大きく改善しています。
カメラはメインカメラが1200万画素から4800万画素に引き上げられ、大型化。Apple ProRAWの設定を有効化した際には4800万画素(8K)での写真撮影が可能になったほか、4800万画素のセンサーの中央の1200万画素を使う事で2倍望遠の写真撮影にも対応しています。
センサーシフト光学式手ぶれ補正は第2世代にアップデートされ、Deep Fusionを発展させたPhotonic Engineで低照度の撮影を強化。アクションカメラのような手ぶれ補正を使った撮影ができるアクションモードを新たに搭載し、インカメラ初めてオートフォーカスに対応しています。
筐体に関しては同じ6.7インチの画面サイズでありながら高さ・幅が微減してややスリムに。その代わり厚さは0.2mm分厚くなっています。重量は昨年の重量級だったiPhone 13 Pro Maxから更に2g増えた240gに。
Bluetoothは今回から新たに5.3に対応。GPSは「高精度2周波GPS」に対応し、通常モデルのiPhone 14よりも更に高精度な位置情報を取得できるよう差別化されています。
また日本では現時点では使えない機能ではあるものの、衛星通信によるSOS機能も搭載しており、携帯電話のネットワーク外での万が一のケースにも対応できるハードウェアとなっています。
iPhone 14 Pro Maxのパッケージ開封動画
iPhone 14 Pro Maxの開封動画がこちら。開封の臨場感が感じられるような音の収録をしています。
iPhone 14 Pro Maxのディープパープルの外観
今年のiPhone 14 Pro Maxは昨年のiPhone 13 Pro Max、その前年のiPhone 12 Pro Maxと基本的な形状・サイズ感はそのまま、カメラ部分が大型化された外観。今回購入したのは新色の「ディープパープル」で、背面は光が入る事で紫色に見えるダークな紫色となっています。
フレームはうっすら紫色のクローム感のある外観。やはりカメラ部分は大きく目立ちます。
iPhone 14 Pro Maxは米国向けモデルのみeSIMオンリーで物理SIMトレイが省略されていますが、その他地域向けは日本含めて引き続きSIMトレイを搭載しています。
下部は引き続きLightning端子を搭載した上下対称。毎年見慣れた物ですが、改めてこの辺りのまとまりの綺麗さは流石のAppleといったところ。
刷新されたディスプレイ
iPhone 14 Pro・iPhone 14 Pro Maxの目玉である新型のディスプレイ。
画面上部のセンサー類とインカメラをまとめた切り欠き(通称ノッチ)が小型化され、ソフトウェアと統合されたパンチホール形の「Dynamic Island」として刷新されています。
また画面表示のリフレッシュレートを1Hzまで下げる事で最小限の電力で常に画面を表示したままにできるApple Watch譲りの「常時表示ディスプレイ」も搭載。画面をロックしても時間などの情報が常に確認できるようになりました。
Dynamic Islandとは結局何なのか
Dynamic Islandを簡単に説明すると、パンチホール部分の周囲に再生中の音楽などの現在進行中の情報を常時表示しつつ、長押しによって拡大して操作も可能なハードウェア一体型のウィジェット領域といったところ。
Super Retina XDRディスプレイのProMotionの120Hz駆動の滑らかさ、有機ELの黒さを最大限活用して物理的な穴自体が拡大・縮小して変形しているかのように振る舞い、ハードウェアとソフトウェアの境界線を融合する演出となっています。
The Verge曰く今回AppleはDynamic Islandのために専用にサブピクセルのアンチエイリアスのシステムを新たに開発しており、従来のiOSの他のアニメーションに比べて3倍もくっきりとした表示を実現しているとのこと。肉眼で見て穴が本当に大きくなったり小さくなったりしているように見えるよう、ハードウェアぐるみで作り込まれています。
将来的にサードパーティのアプリの対応度合いで便利になる余地はありつつも、現時点では基本的に純正アプリや音楽プレイヤーを操作するウィジェット置き場及びリッチなステータスインジケーターといったところ。現時点で恩恵を受けるのは音楽再生、通話、タイマー、インターネット共有、集中モードといった辺りの機能に留まります。
ただしリッチ度合いはそれこそかなりの富豪で、アニメーションは何度も繰り返し操作したくなる心地よい動き。特に音楽プレイヤーをバックグラウンドに送った際のDynamic Islandへの格納や、Dynamic Island一体型のFace ID認証アニメーションなどは新規開発のアンチエイリアスシステムが存分に発揮されたアニメーションの虜にさせられます。
Dynamic Islandの弱点
大変良く作り込まれているDynamic Islandですが、物理的なスペースの限界により多少の不便を感じるシーンもありました。
センサー類の小型化によりハードウェア的な専有面積は非常に狭くなっており、iPhone 13 Pro Max以前と比べると左右に表示できる情報量が増えてはいるものの、Dynamic Islandにより中央部分の「島」の専有面積が増えた際には不足したスペースのために右上のインジケーターが一部省略される事があります。
この表示の一貫性の無さに不便を感じたのはインターネット共有の際。インターネット共有を開始するとDynamic Islandが大きくなるため4G/5Gの表記が省略されてしまい、特にアンテナピクトが1本になるような電波の弱い場所で使う時に「データ通信できるのか出来ないのか」が肝心のインターネット共有中は右上のインジケーターだけでは判別できなくなるという事がありました。
また、Dynamic Islandは従来のように画面の端ではなく画面の中にあるため、全画面に拡大して動画を再生した際は従来より気になると感じました。とは言いつつ殆どの動画コンテンツは16:9で左右の黒帯にDynamic Islandが隠れるため、普段から特別不便に感じる所ではありません。
常時表示ディスプレイはロック画面だけでなくルート案内にも活用
今回のiPhone 14 Proシリーズの画面の2つ目の目玉機能である、常時表示ディスプレイ。
Appleの発表でアピールされたとおり画面ロック時に明るさを下げてリフレッシュレートを1Hzまで落とす事で、画面を常時オンにしたまま時刻やウィジェットの情報、通知などを表示しておける機能。
既に多くのAndroidスマートフォンで搭載している機能ですが、それらが白黒の最低限の表示に抑えているのに対し、Appleのアプローチは「ロック画面をそのまま暗くした」と表現しても差し支えない、カメラのショートカットや各種ピクトなどを省略したロック画面ほぼそのままに近い表示。最初は画面をロックしないまま点けっぱなしにしているかと不安になる表示方法ではあります。
実際便利かと言えばiOS 16のアップデートでロック画面に置けるようになったウィジェットで降水確率などを常に時刻と共にチェックできたりと、卓上のちょっとした情報端末として少しだけ便利。特に画面が見える角度のワイヤレス充電器を使っている場合、従来機との利便性の差が感じられるかと思います。
今後ウィジェットの種類が増えてくるにつれ、地味ながら活用の幅は広がりそうです。
また、実はロック画面以外のところでもこの常時表示ディスプレイは活用されており、それがApple純正のマップアプリ。ルート案内をした状態で画面をロックすると地図部分は更新せず次の右左折までの距離などを白黒で表示し続けてくれるので、少ない電池消費で道案内が使えるのが嬉しいところです。
2,000ニトの屋外のピーク画面輝度は確実に感じられる進化
今回新たに「ピーク画面輝度(屋外)」という項目がディスプレイのスペックに追加され、通常時の最大輝度の1,000ニトの2倍にも及ぶ2,000ニトの屋外ピーク輝度を搭載。直射日光が明るい日であっても屋外で画面が見えないという事は無くなりました。長時間そのまま使う場合は直射日光自体の熱も相まって放熱が懸念ではありますが、この点はiPhone 13 Pro Maxから確実な差を感じる事ができました。
写真・動画ともに大幅進化したカメラ性能
続いて今回のiPhone 14 Proシリーズでアップグレードされたカメラの性能を写真・動画撮影両方の観点から見ていきます。今回は2日間iPhone 14 Pro Maxのみを使って撮影したVlogを作成したりと、動画撮影にもより重点を当てて検証してみました。
4800万画素のメインカメラ搭載で4つの画角の自由を手に入れたiPhone
従来1200万画素のカメラを長らく採用し続けてきたiPhoneですが、今回のiPhone 14 Proシリーズは「メインカメラ」を4800万画素に大きく引き上げ。
これによって通常の1倍の広角でProRAWフォーマットで4800万画素の高精細な8K写真を撮影できるようになった他、4800万画素のセンサーの中央の1200万画素を切り出した「2倍」の望遠モードを新たに搭載。超広角・望遠のレンズと合わせて0.5・1・2・3倍の4つの画角での撮影が可能になりました。
これは通常の静止画だけでなく、背景をぼかせる「ポートレートモード」でも1倍・2倍・3倍の3つの画角を選択できるようになるなど、撮れる写真の幅が大幅に広がっています。
また通常スマートフォンの小型カメラを高画素化した場合1つ1つの画素が取り込める光量が減ってしまい暗所撮影に弱くなってしまうデメリットがありますが、今回のiPhoneはピクセルビニングという技術を採用する事で4つの画素を1つの画素としてまとめる事で、4800万画素のカメラを1200万画素として扱い暗所撮影のでのデメリットをカバー。明るい被写体の高精細撮影と暗所の撮影の良いとこ取りを可能にしています。
4800万画素のProRAW撮影を試す
それでは早速iPhone 14 Pro Maxで撮影した写真を見ていきます。
まずは4800万画素のメインカメラでProRAWで撮影し、Adobe Lightroomで露出を調整して出力したもの。iPhone 14 Pro・Pro Maxは初期状態ではメインカメラでも1200万画素で撮影する設定になっており、4800万画素で撮影するには設定アプリからProRAWを有効にし、ProRAW解像度を48MPに設定した状態でカメラアプリで「RAW」のボタンで有効化する必要があるので注意。
iPhone 14 Pro MaxのProRAWで撮影した写真はLightroomに取り込むと露出が暗い状態なので出力には都度調整が必要ではありますが、暗部のディテールもしっかり保存されておりレタッチ耐性は高め。
ブログ掲載用に縮小したものだとディテール感が分かりにくいので、FullHD相当を切り抜いたものも見ていきます。
こちらが1枚目の4800万画素ProRAWから中央左付近を切り抜いたもの。ここまで寄るとスマートフォンサイズのレンズ・センサーの光学的な限界はある程度感じるものの、iPhoneのカメラでこのレベルのディテールが保存できるようになったのは驚きです。
なお、4800万画素をRAWで保存するとファイルサイズは大体1枚あたり約50〜80MBになります。通常の写真撮影と比べて必要なストレージ容量の桁が1つ変わるので、購入前にこのProRAW撮影をどの程度使うかで購入モデル考える事をおすすめします。
「2倍」の撮影は想像以上の実力、もはや主力
ProRAWの撮影以外でも4800万画素メインカメラは恩恵を感じるカメラとなっており、とりわけ今回から用意された4800万画素中央部の1200万画素の2倍望遠モードは想像以上に優秀。
クロップと侮る事なかれ、レンズ中央部の解像感の高い部分の1200万画素を使うため、非常にシャープでくっきりした1200万画素の写真を手軽に撮影する事ができます。これが食事などのテーブルフォトと相性が良く、手の影を被写体に落とす事なくシャープな食事写真が撮影可能。この作例でも海鮮の瑞々しいツヤがしっかり撮れていると感じました。
超広角・マクロはUIの使い勝手が昨年から改善
超広角カメラに関しても昨年に変わらず綺麗な色味。広い風景を収めたい時に安心して使えます。
昨年のiPhone 13 Pro Max発売時には被写体に近接時に自動で0.5倍の超広角カメラからクロップしたマクロモードになり、強制的にメインカメラから画質が大きく劣化してしまう点が不満でした。この問題はiOSのアップデートでiPhone 13 Pro Maxでも切り替えボタンを追加する形で改善しており、iPhone 14 Pro Maxにもその改善は引き継がれています。
ただしマクロモード自体は依然として使い所が限られてくる機能で、光量が十分かつ被写体に寄っても自分の影で暗くならないような条件が揃っていなければ手動でオフにしてメインカメラで撮影したほうが綺麗に撮れることがほとんど。
更に今年のProは「2倍」撮影が可能なため、メインカメラの中央を切り抜いたシャープな2倍撮影の方が超広角の中央から切り抜いたマクロモードよりもシャープに撮れる被写体の方が多く感じました。
ポートレートモードは「前ボケ」に対応しレベルアップ
ポートレートモードは今回から被写体の奥だけでなく、手前にある物もぼかしをかける事が可能になりました。これによって本物のカメラのボケにより近い表現が可能になり、表現の幅が更に大きく広がっています。ぼかしの境界線の処理もレベルアップしており、より自然になったと感じました。
草木の輪郭の認識は未だ苦手なポートレートモードですが、年々徐々に改善してきた印象はあります。現時点ではポートレートは輪郭がはっきりとしていて被写界深度が取りやすい物に使い、こういった被写体は通常のモードで撮影するか、ポートレートモードのボケ度合いを不自然にならない程度に控えめに抑えて撮影すると良さそうです。
強力な手ブレ補正の「アクションモード」
続いて動画撮影性能を見ていきます。
今回のAppleの新製品発表で大きく取り上げられたアクションモードはGoProをはじめとするアクションカメラのように広い画角から中央部を切り抜いてソフトウェア的に強力な手ブレ補正をかけるモードで、大きな揺れのある撮影でも安定した映像を撮影できるというもの。
ブレた分の外周を大きく切り捨てる仕組み上、撮影可能な解像度は4Kから2.8Kに落とされるものの引き換えにドローンで空撮したかのような滑らかな映像が得られます。
アクションモードをオンにした初期状態では0.5倍の超広角カメラが自動的に選択されて1倍に近い画角までクロップして撮影されますが、そこから1倍・2倍・3倍からのアクションモード撮影に切り替える事も可能。
実際に車に車載して0.5倍のアクションモードと通常の1倍のメインカメラの動画撮影を左右に並べて比較した動画が以下のとおり。
右の通常撮影は車の振動がそのまま映像のブレになっているのに対し、左のアクションモードはブレがしっかりと消されている事が分かります。
またアクションモードの使用には一定以上の光量が必要。明るい環境でしか使えず、夕方以降や屋内だと「もっと明るさが必要です」と表示されてしまうケースが多かったです。
このアクションモードは2.8Kまでの解像度しか選べない特性上4K解像度or手ブレ補正のトレードオフになってしまう機能のため、昨年FullHD止まりで微妙なポジションだったシネマティックモードと近く感じます。
実際iPhone 14 Pro Maxのみを使って撮影した車Vlogは4K・HDRで作成した都合上2.8Kどまりのアクションモード作例は使わず、オフで撮影した映像にFinal Cut Proのソフトウェア手ブレ補正をかけて作成しました。
PCでの編集が前提であれば手ブレ補正やクロップ度合いは後から調整できる通常のビデオ撮影の方が都合が良い事もあるので、アクションモードを使うシーンとしては編集で調整できない程の大きなブレが発生する撮影であったり、iPhone単体で強力な手ブレ補正をかけてすぐに共有したい場合などになりそうです。
また、実際のGoProなどのアクションカメラも車動画の撮影で使っている身として気になったのは、iPhoneのロック状態からアクションモードでの撮影に入るためには「サイドボタンorが画面タップでカメラのショートカットを表示させる」→「ロック画面からアイコン長押しでカメラを起動」→「アクションモードのボタンをタップ」→「録画ボタンをタップ」といった具合にゼロから撮影開始までの手順が非常に多い事。
GoProのようなアクションカメラであれば電源オフ状態からでも物理ボタン長押しで直接録画開始といった具合に、撮影箇所に固定した状態から即座に撮影できるのが最早当たり前の機能。iPhoneのアクションモードの場合ここで手順が多すぎるため、本体サイズの差などを抜きにしてもアクションカメラの代わりは難しいと感じました。
せっかくiOS 16からロック画面のウィジェットを搭載しているので、物理ボタンと言わずともウィジェットから直接アクションモード撮影を開始できるショートカットを設置させてくれたら本格的な撮影における使い勝手は大きく改善しそうです。
4K HDR対応、精度も大幅進化したシネマティックモード
Appleの発表ではアピールされなかった隠し球として「シネマティックモード」が昨年のiPhone 13シリーズから大きく進化しています。
シネマティックモードは、いわゆる動画版ポートレートモード。リアルタイムに被写界深度情報を処理して背景をぼかしながら撮影でき、前回はFullHD・30fpsでしか撮影できないという制約がありやや残念な印象が否めませんでしたが、今年のモデルは4K解像度、HDRが選択可能になり、更に30fpsだけでなく映画ライクな24fpsも選択可能。実用性が飛躍的にアップしています。
実際に撮影したいくつかのシネマティックモード映像のサンプルが以下のとおり。
4K・HDR・24fpsに対応しただけでなく、被写体の境界線の判別精度も昨年のiPhone 13 Pro Maxの作例と比較すると改善を感じます。ポートレートモードと違い1倍・3倍の2種類の画角でしか撮影できず2倍は使えないものの、1倍・3倍実際に撮っていてそこまで不足に感じる事はありませんでした。
またポートレートモードと比べると被写体との距離の許容範囲が広いのもメリットで、「もっと近づいてください」といったメッセージに画角が制限される事も無く1倍・3倍で不満無く撮影する事ができました。
iPhone 14 Pro Maxだけで撮影したシネマティックVlogの作例
実際に今回iPhone 14 Pro Max一台のみで全編撮影したシネマティックVlogがこちら。
シネマティックモードが4K HDRに対応したという事で全編4K HDRで撮影して編集してみましたが、シネマティックモードの境界線の自然さ・iPhone内蔵の手ブレ補正の優秀さ・HDR撮影のダイナミックレンジの広さなどが相まって、実際に出来上がった物を見るとiPhoneだけで撮った事を自分でも忘れてしまいそうです。
個人的にAmazonプライムビデオのオリジナル番組「グランド・ツアー」のようなシネマティックな車旅の番組が好きなので、重たい撮影機材を持ち歩かずともiPhone一台で同じ路線の映像が撮れるのは感動の一言。
また今回の撮影はUlanziのMagSafeマウントを車両側に常設して撮影したので、道中で普段通りiPhoneを使いながら車載映像を撮る時だけMagSafeマグネットでマウントといった具合に、本当に軽装備で手軽に撮影が完結したのが良かったです。
撮影がiPhone一台で完結するシンプルな持ち物のためジンバルなどの荷物が無く、純粋に旅を楽しみながら撮影もしっかりできるというのが今回のiPhone 14 Pro Maxの大きな魅力に感じました。
ゲーム性能を試す
続いて確認するのがiPhone 14 Pro Maxのゲーム性能。昨年のiPhone 13 Proシリーズから120Hzのリフレッシュレートに対応し、ソフト側も原神が120fps、Apex Legends Mobileが80fpsの高リフレッシュレートでのプレイに対応。ゲーミングスマホとして愛用していた旧機種からの進化ポイントを順に見ていきます。
集中モード×Dynamic Island
iOSの「集中モード」にはゲーム用のモードを用意する機能があり、これにゲームのアプリを登録しておけば起動時に自動でモードを切り替えてくれ、ゲーム起動中は通知を非表示にしてくれます。
Dynamic Island部分はさりげなくこのモード切り替えをアイコンで通知してくれるため、しっかりモードが切り替えられているかを確認できるのがゲーミングスマホとして安心。
こちらの設定方法は別途「iPhoneでゲーム起動中だけ自動で通知をオフにする「集中モード」の設定方法」として記事にしています。
Apex Legends Mobileをプレイ
Apex Legends Mobile(Apexモバイル)はiPhone 13 Pro Maxの時点で画質クオリティ「ノーマル」、フレームレート「最高」で80fpsに張り付いていましたが、iPhone 14 Pro Maxに関してはまだアプリ側の最適化が進んでいないのか、同じ設定で80fpsのフレームレートは安定せず。60fps固定になったり40fps台に落ちたりする不安定な挙動になる事があります。
ゆくゆくは最適化アップデートで安定し、あわよくば性能が向上した分で120fpsの設定が解禁されればiPhone 13 Proシリーズよりも有利なデバイスにはなってくる可能性があるものの、2022年9月現時点ではiPhone 13 Proシリーズの方が安定していて有利。
Apex Legends Mobileを重要視しているプレイヤーであれば急いで買うべきでは無いと言えます。
原神をプレイ
原神に関しては現時点でiPhone 13 Pro Maxと同じ設定の条件であればより長く快適にプレイできるものの、設定のフレームレートの項目で「120」が未解禁。iPhone 13 Pro Maxは120fpsが解禁されているものの120fps安定してプレイできる性能は有していないので、処理性能の上がったiPhone 14 Pro Maxでアップデートで120fpsが解禁された際にどれだけ快適にプレイできるかは期待したいところ。
Apexモバイルほどフレームレートが不安定なシーンは少ないため原神プレイヤーは移行しても問題無さそうですが、こちらも9月時点では機種のポテンシャルを発揮しきれていない状態となっています。
これは毎年の新機種発売直後では恒例ですが、今後のアップデートに期待です。
総括:今年は「Proの当たり年」と言える機種
昨年のiPhone 13 Pro Maxがあまりカメラが楽しくなかった機種だと感じた事もあり今年のiPhoneに関しても乗り気ではなかったのですが、実際使ってみると驚くほど撮影が楽しい機種に進化していてここ近年の機種の中で最も気に入った機種の一つになりました。
特にVlogの撮影は実際にiPhoneで撮って編集していて今までに無い楽しさがあり、4800万画素の新しいカメラシステム、選択肢が増えた画角、強化された手ブレ補正、向上したシネマティックモードの精度、MagSafeマウントの手軽さなど、昨年の歯痒いポイントが解消され全ての要素が上手く噛み合って気持ち良く楽しむ事ができました。
ただし動画撮影機として見ると、撮影データの取り込みの際に使う有線接続が未だUSB 2.0どまりなのはボトルネック。Lightning端子自体はUSB type Cよりもコンパクトで洗練された形状でiPhoneの筐体に合っているとは感じるものの、データ転送速度が10年前のまま止まっている点は残念なところ。
この転送速度をカバーする運用としては現在NASのQNAPを導入しており、iOSアプリを使ってバックグラウンドでWiFi環境に入ると自動でNASに撮影データを転送してくれるため、Lightningを使わずとも自動で裏で転送されてPCですぐファイルが使える状態になるように設定しています。
なお、今回通常サイズの「iPhone 14 Pro」と悩みましたが、Maxにして大正解。重量級ではあるものの逆に動画撮影では安定感があり、大容量のバッテリーは2日間のVlog撮影で1日目も2日目も電池が枯渇する事なく4K・HDRの映像を撮り続けることができ、かつ放熱面積が大きい事もあって屋外で撮り続けても熱で止まる事も一度もありませんでした。
ここまで人間のクリエイティビティを引き出してくれるガジェットは近年触ってきた中でも珍しく、少しでも「やってみたい」という創作欲が掻き立てられた方であれば本当に今年は「Proの当たり年」として胸を張っておすすめできる出来。
逆にそういった領域には踏み込まず、情報ツールとしてのiPhoneを求めているユーザーに対してはしっかりとコスパ&軽量重視のiPhone 14+iPhone 14 Plusの両方のサイズを用意している辺り、今年のAppleのラインナップは非常に良く出来ているなと感心します。
「iPhone 14 mini」が出なかったのは小型機のファンとしては非常に残念なところではありますが。
なお、価格に関してはApple製品の円安による値上げの影響もあり今回購入した256GBのiPhone 14 Pro MaxでApple直販価格179,800円と例年より高め。上位の512GBとは3万円も差額があるので、先述したとおりQNAPへの撮影データを順次自動転送する設定にして256GBで運用。参考までに今回の作例のVlogの動画データは20〜30GBほどだったので、定期的に空にすれば256GBでも問題無さそうです。
また通信回線は5Gギガホ→ahamoに見直し、AppleCare+の値上げに対しては月額700円で3台までカバーできるモバイル保険を導入するなどで負担を軽減できるよう工夫しています。今回のiPhoneを買わない方でも参考になる情報なので、是非それらの記事もチェックしてみてください。
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