Xperiaアンバサダー企画でXperia Z4 Tabletをお借りして1ヶ月間使ってみました。
Xperia Z4 TabletはWi-Fiモデルが約389g、LTEモデルが約393gの薄型軽量タブレット。Xperia Tablet Z、Xperia Z2 Tabletに続く3代目で、薄型・軽量・防水の初代からのコンセプトを継承しつつも、400gを切る重量に新たにキャップレスmicroUSBポートを搭載。メーカーによるアピールポイントはタッチ&トライのイベントレポートにて紹介していますが、なんといっても今回の魅力は新たに設計された専用キーボードのBKB50です。
PCスタイルキーボードという事で、Xperia Z4 Tabletを装着した状態でノートパソコン風に使うことができる純正キーボードのBKB50。こちらの重量は365gとなっており、装着した状態での重さは約2倍弱になるものの、ノートパソコンライクな生産的な使い方ができるというコンセプトになっています。さらに最大の特徴としてマルチタッチトラックパッドが搭載されており、Xperia Z4 Tabletに内蔵されたドライバによって2本指スクロールなどが可能に。近代的なノートパソコンの必須機能を押さえており、Androidタブレットの生産性の限界に挑戦しています。
タスクバー風ランチャーは結構便利
キーボードを接続すると出現するWindowsのタスクバー風のランチャーは実際にWindowsライクに支えて便利。登録してあるアプリケーションにマウスオーバーするとウィンドウのサムネイルが出るあたりまでしっかり再現してあり、感覚的にPC風(Windows風)に使えるよう工夫してあります。
ショートカットは6個×3列まで登録可能で、スワイプで切り替え可能。BKB50は2本指スクロールができるので、2本指横スワイプで切り替えができるのもシームレスで便利です。
スタートメニュー風ランチャーは発展途上か
タスクバー風のランチャーに加え、キーボードを接続するとWindowsのスタートメニュー風のランチャーが左下から出せるようになります。最近使ったアプリを起動できるほか、スモールアプリも起動可能。また、Bluetooth接続のため直接給電せず、独自にmicroUSB充電のバッテリーを持つBKB50のバッテリー残量も表示することができます。右上の設定アイコンからはPCスタイルキーボードの設定、その左の編集アイコンからは下部のタスクバー風のランチャーの項目を編集できます。
BKB50のバッテリー残量を確認できるのは便利なものの、ランチャーとしての完成度は今ひとつ。今回新たに搭載された機能ということで荒削りなのかもしれませんが、上部のXperia Z4 Tabletのカバー画像が固定されており、下のアプリ一覧をスクロールできる表示領域が狭くなっています。また、ランチャー自体をスモールアプリのウィンドウのようにリサイズ・移動することもできないため、表示領域の拡大も不可。せめてアプリ一覧のスクロールに合わせて上にスクロールしてほしかったところです。
やっぱりXperia専用スモールアプリは便利
Xperia Zシリーズに伝統的に搭載されているマルチタスク機能のスモールアプリ。専用のミニアプリをポップアップで起動できる機能で、PCライクに使えるXperia Z4 Tabletとの相性はぴったり。スモールアプリはあまり多くないものの、Twitterなどの主要サービスはWeb版も提供しているので、他のアプリを起動しながらブラウザを起動すれば意外と多くのことができます。
スモールアプリを操作している動画。画面端にアプリを一旦しまっておけるほか、通知領域のボタンから一括で最小化したり、一括で整列させたりといったことが可能となっています。大画面を存分に活用した使い方となっており、画面端にブラウザやメモアプリを常備しておいて必要に応じて小出しして使うのはとても便利です。
カーナビ&カーオーディオにも便利
スモールアプリは車載時にも便利。車のオーディオにBluetoothや有線で繋ぎながらカーナビとして使う場合、曲送り機能をポップアップで表示する事で、カーナビとオーディオ機能を同時に利用する事ができます。Androidタブレットの大画面でマルチタスクをしたい場合は機種自体の機能に依存せざるをえない場合が多く、Xperiaシリーズのタブレットを選ぶに十分な理由になってきます。ただ、Xperiaタブレットの中では以前に発売されたXperia Z3 Tablet Compactの方がサイズが小さいため、カーナビとしての取り回しやすさでは小回りがきいて使いやすそうです。
ブラウザのマルチウィンドウは別途アプリが必要
プリインストールされているスモールアプリの「ブラウザ」は多重起動やタブ機能を搭載していないため、同時に1つのサイトしか開けないのが難点。左右にブラウザを並べて情報を比較したりといった事は大画面機では重宝する用途なので、勿体無いところです。Google Playからコブラなどのサードパーティーのポップアップ系のブラウザアプリを入れる事によって実現しますが、せっかくなのでマルチウィンドウはデフォルトで対応してほしいですね。
マルチウィンドウが実現すれば、TwitterやFacebookなどのWeb版を画面端に常備しておき、画面上で同時に見ているサイトやテレビ、ニコニコ動画やUstreamなどのストリーミング放送などを読みながら実況したり書き込んだり、といったヘビーユーザー的な使い方もできるので、ブラウザを複数開けるようにするだけでも使い道が大幅に広がりそうです。
VoLTEのビデオコールに便利!
Xperia Z4 TabletはVoLTEによる高音質通話はもちろん、ビデオコールにも対応しています。さらにBKB50はノートPCのように好きな角度に固定して使う事ができます(写真は他社のタブレットをBKB50で立てたところ)。この2つがある事で、Xperia Z4 Tabletはビデオ通話端末として非常に便利だと感じました。通常のノートパソコンではSkypeのビデオ通話などでインカメラを利用して遠方の家族と顔を見せて通話する事ができましたが、お互いSkypeのIDの取得やアプリのインストール、設定が必要だったりと、ややハードルがありました。
Xperia Z4 Tabletであればセットアップ不要でそのまま電話番号を入れるだけでVoLTEビデオコール対応のスマートフォンやタブレットとビデオ通話が可能。また、インターネット接続もLTE回線で特別設定不要でそのまま繋がるため、単身赴任などの場合に遠方の家族にプレゼントして、ビデオ通話用に使ってもらうという使い方にも向いています。
従来そういった用途はノートパソコンが担っているものでしたが、そういった意味ではこの機種は一般家庭のノートPCの代替になり得る機種なのではないかと感じました。
発熱は全く問題無し、膝上でも快適に利用可能
Snapdragon 810搭載機で問題として多く取り上げられている発熱ですが、Xperia Z4 Tabletでは全く問題ありませんでした。実際に使っていて発熱する部分は裏面中央上部あたりですが、横持ちではまず持っていて触れない部分。また、キーボードのBKB50を装着した状態ではそもそもXperia Z4 Tablet本体に触れる事すらほとんど無いため、使っていて全く問題ないどころか膝上で使う場合は本体が空中にあるため、発熱面ではノートパソコンよりも快適に使える印象でした。Xperia Z4では発熱により「カメラアプリが長く使えない」こと一点が個人的には懸念点(発熱自体より、発熱により特定の機能が使えなくなる事が問題)でしたが、タブレットではあまりカメラを多用しないという事もあり、使っていて一切不満がありませんでした。
またタッチ&トライイベントでのメーカーの話によればXperia Z4 Tabletは面積が広いため、スマートフォンよりも放熱に余裕があるとの事だったので、そういった裏付けもあっての事なのではないかと思います。
総評:10インチAndroidとしては最強タブレットか
Xperia Z4 TabletはAndroidタブレットのハードウェアとしても極限まで薄く、軽く、しかも防水となっており、比べるライバル機種が見当たらないほどの出来。さらに今回専用のキーボードも開発され、トラックパッド搭載によってより一層他社に真似できない使い勝手の良さに仕上がっています。
ソフトウェア的にもスモールアプリ搭載によって他のAndroidタブレットでは難しいマルチウィンドウを駆使した使い方が可能となっており、こちらも一般的なAndroidタブレットと比べると一歩リード。スモールアプリのラインナップ自体が満足と言えるほど充実していないのが惜しいところですが、Android上で複数のタスクをこなすにあたって計算機やブラウザ、メモアプリといった基本的なところはカバーしているので便利に使う事ができます。
競合としては少し世代を遡るものの以前レビューしたGALAXY Tab S 10.5辺りがあり、こちらはマルチウィンドウによってスモールアプリのようなミニアプリではなく、通常のフル機能のアプリを(対応していれば)画面分割やポップアップ表示して使う事ができるのが魅力。また、プリインストールされているファイラーアプリはスマートフォンを接続してドラッグ&ドロップでファイル操作なども可能。Xperia Z4 Tabletのように突き詰められた軽量化や防水などはありませんが、ソフトウェア的に非常に作り込まれています。また、タブレット系としては王者のiPadシリーズも、次期バージョンのiOS 9で画面分割機能を搭載予定となっており、タブレット上でのマルチタスク機能の争いは今後激化しそうです。XperiaもPCライクな生産性を謳うのであれば、今後もそういった他社に負けないソフトウェアの作り込みが求められそうです。また、これらの2台に搭載されている指紋認証もXperiaにはないので、あるとより有利になりそうです。
Androidの壁
また、「本当にPCの代わりになるのか?Xperia Z4 Tabletで江ノ島レポートブログ記事を書いてみた」の記事でこのブログを書くツールとして使ってみましたが、PCのように一括でドラッグ&ドロップでファイル操作できない点など、写真ファイルを開いてブログにアップロードする手際の悪さにはやはりAndroidの限界を感じました。PCであれば一括でフォトレタッチを行い、フォルダに一括出力し、そのフォルダをブラウザにドラッグ&ドロップすればすべての写真を一括でブログにアップロードできたりするのですが、Android自体そういったヘビー級の操作を求めるのは難しいのかもしれません。せめてトラックパッドを搭載しているので、一括でファイルを選択してマルチウィンドウで他のフォルダに移動したりといったファイル管理ができるファイラーが入っていれば多少PCライクになるかもしれません。ここまで完成度の高いハードウェアなので、多少重くなっても良いのでXperia Z4 Tablet for Windows 10なんて製品があれば理想のタブレットかもしれませんね。防水、薄型、キーボードあり、トラックパッドあり、LTE回線あり。言うこと無しです。同じ価格帯でLTE回線付きのWindowsタブレットといえばSurface 3 LTEがありますが、膝上で使いやすいノートPCスタイルで通話機能や防水性能を搭載しているXperiaであればOSが同じなら勝てそうですね。
今回モニターしていて感じた不満はXperia Z4 Tabletに関する不満というよりもAndroidに対しての不満なので、逆にXperia Z4 Tabletはハードウェアとしてそこまで高いレベルまで到達している製品なのではないかと思います。特にマルチタッチトラックパッド付きキーボードが今回新たに搭載された事によって操作性が大幅に向上しており、2本指スクロールなどの機能をXperia Z4 Tabletに独自に実装する事でPCライクな快適な操作感を実現しているのは他社製品と比べた際の大きなメリット。実際専用キーボードBKB50を他社製品に接続してみた記事ではマルチタッチ機能が利用できなかったため、専用開発のドライバが入ったXperia Z4 Tabletでないと活用できない独自の強みであることがわかります。
数あるAndroidタブレットの中でも完成度が高く、10インチのサイズのAndroidタブレットを探しているようであればXperia Z4 Tabletは今年のモデルの中では決定打と言っても良いかもしれません。薄型軽量で取り回しやすいので、是非LTE搭載モデルで外に持ち出してアクティブに使いこなしたい一台です。また、レビュー内で取り上げているとおり専用キーボードのBKB50はXperia Z4 Tabletを100%満喫するには必須のアクセサリです。やや高いですが、Xperia Z4 Tabletを買うのであれば是非セットで揃えたいですね。
Xperia Z4 TabletはPCの代わりにはなりきれませんが、現状最強のAndroidタブレットだと思います。