Appleが7月に発売した「MagSafeバッテリーパック」を実際に購入してしばらく使ってみたので、使用感を掲載していきます。
MagSafeバッテリーパックはApple公式の「MagSafe」対応の充電アクセサリ。iPhone 12シリーズで採用されたMagSafeによりiPhone本体の背面に吸着し、内蔵バッテリー及びLightningケーブルでiPhoneをワイヤレス充電できるというもの。
価格は11,800円と割高感がありますが、実際に使って価格に見合う価値があるか手持ちのiPhone 12 miniで試してみました。
この記事の目次
パッケージ・外観
パッケージはApple製品らしいミニマルな箱で、背面には「iPhoneバッテリーパック」との説明が各言語で記載されています。
開封したところ。MagSafeバッテリーパック本体はフィルムに覆われています。
冊子類はiPhone本体のパッケージのようにスリーブにまとめられています。
こちらがMagSafeバッテリーパック本体。丸みを帯びた白いプラスチックの筐体にAppleロゴが添えられています。
こちらがiPhone装着側。丸と棒のMagSafeマグネットが象徴的です。
滑りにくいラバー系の素材となっており、マグネットの磁力による押さえつけとスライドして外れにくい適度なグリップの二重構造で外れにくいよう工夫されています。磁石による吸着はまっすぐ離そうとすると外れにくく、横にスライドすると外れやすいという特性を上手く利用した素材の使い方に感じます。
事前に製品画像で判明していたとおり「1460mAh (7.62V 11.13Wh)」との容量表記がされています。一般的なリチウムイオン電池に採用されている3.7Vの約2倍の電圧となっており、他の3.7Vの市販のモバイルバッテリーと比べた場合約3,000mAh相当となっています。
下部はLightningポートとステータスのインジケーターを搭載。
サイズはiPhone 12 miniぴったり
MagSafeバッテリーパックはMagSafe対応のiPhone 12シリーズであればどのモデルでも使えますが、寸法は最小モデルのiPhone 12 miniにぴったり作られており、一体感があります。
厚さはiPhone 12 mini本体よりも厚めとなっています。
出力はバッテリーからは5W、有線電源からは15W出力
MagSafeバッテリーパックはMagSafe充電に対応していますが、モバイルバッテリーとして使った場合は5Wの通常のワイヤレス充電に。20W以上のUSB PD対応充電器をLightningケーブルで接続した場合のみ最大15WのMagSafeワイヤレス充電が可能になります。
iOSウィジェットで電池残量・充電状態を確認可能
MagSafeバッテリーパックは本体に単一のインジケーターしか搭載されておらず、オレンジで充電中・グリーンで充電完了の2段階でしか状態が把握できませんが、iOS側のウィジェットで残量や充電状態を確認することが可能。この辺りはApple製品らしい製品同士の連携となっています。
iPhone→MagSafeバッテリーパックのリバースチャージにも対応
LightningケーブルをMagSafeバッテリーパックに接続した場合もiPhoneを充電できますが、逆にiPhoneにLightningケーブルを接続した場合でもiPhone側からバッテリーパック側への充電も可能。iPhone本体から別の機器へのリバースチャージを採用した非常に珍しい製品となっています。
iPhoneをカーナビに有線接続しながらバッテリーパックも充電したい場合、Lightningケーブルでパソコンに写真や動画のデータを取り込みながらバッテリーパックも充電したい場合など、iPhone本体のLightningポートが他の用途にも必要な場合でも同時に充電が可能です。
満充電から約2時間でiPhone 12 miniを1%→80%まで充電可能
実際MagSafeバッテリーパックを満充電した状態から電池残量を1%まで減らしたiPhone 12 miniを充電してみたところ、約2時間でMagSafeバッテリーパックが0%になり、iPhone 12 miniが80%に。iPhone 12 miniの約8割充電できる容量となっています。
また、Appleの公式ページには各機種について以下のように掲載されています。
- iPhone 12 miniとMagSafeバッテリーパックを 組み合わせると、バッテリー駆動時間を最大70% 延長
- iPhone 12とMagSafeバッテリーパックを組み合わせると、バッテリー駆動時間を最大60%延長
- iPhone 12 ProとMagSafeバッテリーパックを 組み合わせると、バッテリー駆動時間を最大 60%延長
- iPhone 12 Pro MaxとMagSafeバッテリーパックを組み合わせると、バッテリー駆動時間を最大40%延長
iPhoneのバッテリーを最大限保護する充電仕様
MagSafeバッテリーパックは基本的にバッテリー使用時5W、20W以上のUSB PD接続時は15Wの充電を行いますが、iPhoneの内蔵バッテリーに負荷をかけないよう、充電を抑える仕様となっています。主な挙動は以下のとおり。
- バッテリーパック利用時はiPhoneは約90%までしか充電できない
- バッテリーが熱を帯びている場合iPhoneは約80%までしか充電できない
- 有線接続時、iPhoneが80%に到達するとバッテリー側を優先して充電する
そのため有線接続でもバッテリーの保護が必要と判断された場合は15Wのフルスピードで最大速度で充電できなかったりと、性能を最大限発揮するよりもiPhoneの寿命を伸ばす方向に調整されています。
また、どうしても最後まで充電したい場合は90%の充電リミッターはiPhoneを低電力モードに設定する事で回避でき100%までの充電が可能となっています。
iPhone 12 miniとの相性が抜群
MagSafeバッテリーパックはiPhone 12、iPhone 12 Pro、iPhone 12 Pro Maxユーザーには「容量が小さい」「外れやすい」といった点で不満点も多いようですが、iPhone 12 miniユーザーとしては非常に噛み合っていると感じます。
iPhone 12 miniとのサイズがぴったり、付けたまま使いやすい
MagSafeバッテリーパックをiPhone 12 miniで使う最大のメリット。先述したとおりMagSafeバッテリーパックはiPhone 12 miniのサイズに合わせて作られており、重ねて装着してそのまま片手で使えるほどの一体感。他のサイズのiPhoneでは得られない使い心地です。
iPhone 12 miniであればポケット内でも滅多に外れない
iPhone 12、12 Pro、12 Pro Maxではポケットに入れる際、ポケットの中に入れている際に外れてしまう事があるとの声もありますが、iPhone 12 miniであればジャストサイズのためポケット内で外れる事は滅多にありませんでした。
iPhone 12 miniであればバッテリー+簡易スタンドとして使える
寸法が合致しているお陰で、出先でバッテリーで充電しながら動画を見たいといった場合でも簡易スタンドとして使ってiPhoneを立てる事が可能。意外とカフェなどで「動画を流し見しながら充電したい」といったシーンはあるので、重宝しています。
単体でワイヤレス充電できないが、iPhone 12が余っていれば可能
結局iPhone 12シリーズやAirPodsシリーズがワイヤレス充電できてもMagSafeバッテリーパックだけ有線充電でLightningケーブルが手放せない、といった状況になるのはApple製品に統一していても歯がゆいところ。
iPhone 12シリーズが型落ちになっていない現在はあまり現実的ではありませんが、もし今後新型の買い替えなどで「iPhone 12が余った」という状況であれば理論上はリバースチャージで贅沢なワイヤレス充電器として使えなくもありません。
流石に現実的ではないので、MagSafeバッテリーパックをワイヤレス充電できる充電器が出てほしいところです。
Ankerと比べて高額ではあるが使い心地は抜群
Apple MagSafeバッテリーパックと引き合いに出されるのがAnker PowerCore Magnetic 5000。3,990円の低価格で5,000mAhの容量、同じくマグネット付きの5Wワイヤレス充電でUSB type Cの入出力ポートを搭載。スペックシートだけで見ればこちらの方が優位かつ汎用性の高い製品に見えますが、実際使ってみるとiPhoneとの一体感はApple製に遠く及ばず。単に磁力の位置合わせ付きのワイヤレス充電モバイルバッテリーを重ねているだけという感じで、AppleのMagSafeバッテリーパックのように付けっぱなしで使うにはイマイチに感じました。
使う対象がiPhoneだけであれば、MagSafeバッテリーパックは使い心地の面でリードしています。
iPhone 12 mini使いであれば相性ぴったりでおすすめ
定価11,800円で一番小さいiPhone 12 miniを8割しか充電できないという容量あたりの単価は高い製品ではありましたが、実際に使ってみるとその使い心地は納得の出来。出先に持っていく際はもちろん、家の中でスマホを一日中使いたい時も充電器に根を張る必要なくどこでも充電したままにでき、リビングで充電しながら動画を見たり、ポケットの中で充電しながら持ち歩いたりと「おうちバッテリー」としても活躍しています。
バッテリー使用時は5W充電どまりであったり、発熱すると充電速度が制限されてしまったり、iPhoneのバッテリー保護優先の挙動のため急ぎの充電には不向き。逆に言えば心置きなく毎日つけっぱなしで使え、iPhoneの劣化をあまり気にせず電池を一定以上に保ち続けることができるのは便利です。
パープルのiPhone 12 miniが発売されてからはメインのスマホとして気に入って愛用していますが、唯一の弱点とも言っていいバッテリー容量がMagSafeバッテリーパックによって底上げされた感覚で使えており、着脱も楽々で邪魔な時はすぐに外せ、モバイルバッテリーというよりアタッチメントに近い感覚で良く噛み合った製品に感じました。
ワンサイズ展開のためより大きいiPhoneの場合は背中に出っ張りを背負ってしまう形になってしまいますが、せっかく使い心地の良い専用品を作ったのであればしっかり3サイズ展開してほしかったように思います。面積が増せれば分厚さも抑えらたり、容量を大画面モデルに合わせて増量したりすることも可能なので、miniのサイズに合わせたが故に物理的なキャパシティの制約を強く受けてしまっているのが他モデルの事を考えると残念なところ。
iPhone 12 miniで使った際の「しっくり感」は非常に高く、このベストマッチ感のためであれば11,800円であれど良い買い物だったのではないかと思います。しかしmini以外の大型モデルであればバッテリー容量的にも戦力不足、一体感もそれほどない、といったところでAnker PowerCore Magnetic 5000の方が安価でより現実的な選択肢かもしれません。