理想のデスク環境のためのモニター選定をする中で、クラウドファンディングサイトGREEN FUNDINGで公開されていたTCLのウルトラワイドモニター「57R94」が非常に理想的なスペックだったので支援(購入)してみました。今回はその選定の経緯を紹介したいと思います。
目次
57インチウルトラワイドモニター「TCL 57R94」とは

57R94はTCLが発売予定の57インチウルトラワイドモニターで、発売に先駆けて2025年8月17日までクラウドファンディングサイトのGREEN FUNDINGにてプロジェクトが公開されています。
量子ドットMini LEDを採用したアスペクト比32:9のウルトラワイド型の57インチディスプレイで、32インチ4Kモニターを2枚横に並べたのと同等の7680×2160の解像度となっています。1000Rの湾曲率で、HDR1000対応。リフレッシュレートは120Hz。
現在日本国内で入手可能なウルトラワイドモニターはLGやDELLの40インチ前後の5K2K(5120×2160)の物がフラッグシップモデルに位置付けられていますが、このTCL 57R94はそれら5K2Kの21:9のウルトラワイドを更に横に拡張して32:9まで広げたサイズ感となっており、従来モデルに無かったスケールの製品となっています。
なお同じ57インチのデュアル4K解像度のモニターとしてはSamsung Odyssey Neo G9 G95NCがグローバル市場では先行して発売されていますが、残念ながら日本市場には入ってきておらず、今回のTCL 57R94で初めてこのサイズ感のウルトラワイドが上陸する格好となっています。
モニターを新調しようと思った経緯

私は今まで色々なデスク環境を試行錯誤してきており、デュアル5Kモニターのアイランド型デスクやトリプルMateView、iMacのトリプル5K環境など今まで試したパターンを記事として紹介しています。
それら試行錯誤の中で一貫して目指してきたのが、モニターだけが空間に浮いているミニマルなデスク。2020年に作った上記写真のトリプルモニターアームを用いたデスクがそのコンセプトに一番近く、デスク側に過剰な負荷が掛かって天板が歪んでしまい失敗に終わったものの、いつかこのコンセプトを完成に近づけたいと考えていました。
この失敗から天板に負荷を掛けず、更にモニターだけが浮いていてアームすら見えない状態を実現するにはモニターを壁掛けするのがベストだという結論に至り、賃貸から持ち家に移行するタイミングで実現させてみようと計画を温めていました。
あれから5年が経過した2025年現在。関東から北海道へ移住して2年近くが経とうとしており、念願の家の設計を進める中で「理想の書斎」も計画しており、かつて思い描いたモニターだけが浮いているミニマルなデスクのコンセプトを実現させるタイミングが到来したのです。
なるべく画面外のノイズは排除したミニマルなビジュアルにしながらも、画面内のデジタルな情報量は最大限確保したかった自分の用途にはTCL 57R94は最適な製品でした。
57R94は32インチ×2と等しい情報量で、27インチ×3に近い
今までの私のモニター構成は27インチ×3枚のトリプルモニターや、32インチ×2枚のデュアルモニターが中心で、物理的な作業領域としてはこの辺りが作業効率のスイートスポットなのだと感じてきました。
解像度に関しては6K解像度のAppleのPro Display XDRや5K解像度のStudio Displayなどの218ppiの物をぴったり200%のスケーリングで使うのがMacを使う環境としては理想ではあるものの、これらのモニターは入力が1本のThunderboltケーブルのみとなっており、仕事とプライベートのMac、あるいはWindowsを使い分けるには不便なものなので、実運用を考えると現実的ではありません(Pro Display XDRやStudio Displayは2枚〜3枚揃えると非常に高額なのも勿論大きな理由です)。
ただ「200%ぴったりのスケーリングは本当に必要なのか?」と考えた時に、27インチ4Kのモニターの擬似5KではiMac 5KやUltraFine 5Kの27インチ5Kと比べて精細感が欠けるのが少しだけ気になってはいたものの、現在使っている32インチ4Kの32M2Vや32Q1UではPro Display XDRと同じ物理擬似6K(3008×1692のスケーリング設定)で使っていても大きな不満は無く、このサイズ感のモニターであれば画面からの物理的な距離のお陰でスケーリングを許容できる事に気付きました。
となると実解像度はある程度スケーリングで吸収できるため、スケーリングできるある程度の解像度を有していれば後は必要な物理的面積が正しいレイアウトで分布されている事が重要になってきます。

TCL 57R94はデュアルUHD(7680×2160)の57インチモニターとなっており、32インチ4Kモニターを横に2枚並べたのと同等の物理サイズとなっています。
32インチモニター2枚は27インチモニター3枚のおよそ93%ほどの物理面積となっていますが、縦に長い事から一つのアプリケーションで表示できる縦の情報量は増えて実質的に有効的に使える面積が広い事も多いため、32インチ×2と27インチ×3はおおよそ同程度の生産性を有していると感じています。
私が27インチ×3から32インチ×2に移行したのは昨年から新しい仕事のマシンが外部モニターの接続台数の上限が2台までのM3 Proチップ搭載のものとなったため、接続できる範囲内で検討したところ32インチ×2という構成に辿り着きました。
ただ27インチ×3から32インチ×2に移行して不満に感じているのが、作業領域の真ん中に画面枠のベゼル部分が来てしまうこと。27インチ×3の場合は中央のモニターでメインの作業をしつつ左右をサブ的に使うにあたってベゼルが良い区切りになっていると感じていましたが、32インチ×2の場合は中央で区切られてしまうのでメインのウィンドウを左右どちらかに振る必要があるのが気になっていました。
TCL 57R94はこの中央のベゼル問題を解消しつつも32インチモニター2枚と同等の表示領域を実現しており、ウルトラワイドモニターとして初めて求める情報量を表示できるモデルというのが購入の決め手になる大きな要素だったと言えます。
ウルトラワイドモニターは過去に49インチ5KのU4919を購入したものの湾曲率の不足で作業用には不向きな上、そもそもの作業領域として49インチの5,120×1,440だとWQHDの27インチモニター2枚分の作業領域しか無く、作業領域を増やすためのスケーリングが出来るほどの解像度も無かったといった所ですぐに手放してしまいました。
その後も縦方向の解像度不足を克服した5K2Kのウルトラワイドモニターがいくつか発売され話題にはなっていたものの、27インチ×3のトリプルモニター環境と比べると40インチ級で約60%、大きめの45インチ級でも75%の作業領域しか確保できず、自分の環境には合わないと感じていました。
現在実際に使っている32インチ×2枚であれば先述のとおり求める作業領域を十分に満たしてくれる面積なので、それら2枚を1枚のウルトラワイドとしてまとめたTCL 57R94は自分の求めるワークスペースの最適解に限りなく近いと感じ、導入を決めるに至りました。
120Hzは文字を読む作業にこそ重宝する
TCL 57R94はデュアルUHDの高い解像度なだけでなく、120Hzとリフレッシュレートも通常の60Hzモニターよりも高くなっています。ゲーミングモニターとして見ると控えめなスペックではありますが、この120Hzというのは作業用モニターとして適したスペックだと個人的に感じています。
現在デュアルモニターの片面に最大144Hzの32M2Vを使っていますが、これを120Hz以上の設定で使うとスクロールが非常に滑らかになる事から、文字を読む事務的な作業にこそ120Hzが活きると日々の業務の中で感じています。
スクロールが滑らかになる事で長いドキュメントでもMagic Trackpadで流しながら読む事ができるため実質的に縦解像度が増したような生産性向上効果が感じられており、横断的に様々な仕様を確認しながら要件を元に画面設計を起こすUI/UXデザインの仕事でも非常に重宝しています。
57R94は32インチモニター2枚分の広大な領域を全て120Hzの滑らかなスクロールで活用できるため、横断的に様々な文書を確認する用途には大きな強みを発揮しそうです。
壁掛けモニターアームはエルゴトロンHXを検討中

TCL 57R94はスタンド無しの重量が14kgと重ため、かつ湾曲ウルトラワイドで手前に重量が寄っているため、壁掛けするにあたっては耐荷重に余裕のあるモニターアームが必要。エルゴトロンHXの耐荷重は9.1〜19.1kgと重量級のモニターに対応しており、更に海外でTCL 57R94と同形状のSamsung Odyssey Neo G9 G95NCで使われている実績があるため、今回の第一候補です。
またそういった前例を見ると湾曲ウルトラワイドで荷重が手前に寄るため、標準のマウントでは耐えられずヘビーデューティーチルトピボットのオプション導入が必要との事。それでも1000Rの強い湾曲だとギリギリなようなので、アームによる可動域を捨てて大型テレビをマウントするような壁掛けステーにするのも手かもしれません。
アームによる調整の必要性の有無は実際にモニターを使ってみた後に最適な距離感を照らし合わせて改めて検討していく予定ですが、アームがある事による浮遊感も捨てがたいポイントなので、アームありの方向になりそうな気がします。
理想のシングルモニターの最適解なるか

過去のモニター遍歴を見てもMacの作業環境のためのモニターは今まではマルチモニターが中心で、必要な作業領域を台数で解決してきました。今後も当然のようにマルチモニター環境を続けていくだろうなと思っていた矢先に登場したTCL 57R94は、初めて「1台で全てが完結させられそう」と感じさせてくれる製品でした。このモニターを使って新たな作業環境を作るのがとても楽しみです。
長年マルチモニター派だった事もあり今年の前半まではCES 2025で情報公開されたLG UltraFine 6Kが次期モニターとして有力候補ではありましたが、32インチは1枚だと面積が足りず、2枚だと中央にベゼルが来てしまい、3枚だとオーバースペックかつ6Kだと予算も大幅に膨れ上がってしまうのが悩ましい所でした。それらの問題を解決できる答えが今回のTCL 57R94だったというわけです。
クラウドファンディングの初期ロット最終枠の約35万円は過去に購入したモニターの中でもぶっちぎりに最高額にはなってしまいましたが、1台で完結する事を考えると高性能な32インチを2〜3枚揃えるよりは実は安上がりになりそうです。
順調に事が進めば来年の春には家が完成してこのモニターを中心に据えた書斎も出来上がるので、是非とも新しいデスクツアーにまとめたいと思っています。このモニターの壁掛けだけでなくPCや配線が見えなくなるケーブルの壁裏配線や造作の大型天板など賃貸では実現が難しかった要素を実現した書斎を計画しているので、これから頑張って完成に近づけていこうと思います。
なおTCL 57R94のGREEN FUNDINGのクラウドファンディングは2025年8月17日までとなっているので、滑り込みで欲しい方はお早めに。