家の玄関のサムターンに装着する事で、オートロックに対応したりスマホアプリ・指紋・ICカードなどで解錠できるようにしたりと機能強化できるスマートロック。2018年に最初に導入してからいくつかのメーカーに乗り換えて実際に運用してみたので、それぞれの製品の強みやおすすめポイントなどを整理してみました。
この記事の目次
賃貸にも工事不要で後付け設置できるスマートロック
エントランスの電子的なロックは従来日常的に触れるところではオフィスの入退室管理などに用いられる製品が多く、個人が導入するにはハードルの高いものでしたが、近年は賃貸住宅にも後付けで設置できる個人向けの製品が出揃ってきており、参入メーカー数も増えてきたことから価格面でもハードルが下がってきました。
こういった個人向けスマートロックの製品は玄関のサムターンの上に覆い被せるように玄関の面に両面テープで固定するため、工事不要で導入でき、賃貸でも取り入れやすくなっています。
玄関の施錠・解錠は誰もが日常生活を行う中で頻繁に行う事なので、この部分をスマートロック製品で効率化できると非常に便利。様々な製品が出揃ってきた個人向けスマートホーム製品の中でもスマートロックは利便性を感じやすい製品なので、スマートホーム化で生活を便利にしたい方は是非優先的に導入したいアイテムです。
今回は実際に2018年に導入したQrio Lockをはじめいくつかのメーカーの製品を使った中から、それぞれのメーカーのメリット・デメリットを整理し、どの製品がどういった用途におすすめなのかを解説していきます。
おすすめのスマートロック3選
まずは、実際に使った中でのおすすめの順にそれぞれの特色とおすすめな理由と共に3つの製品を紹介します。
1位:セサミ(SESAME5)
価格面でもAmazonでの販売価格が6,480円とリーズナブルな上、動作も高速なのが2023年に登場したSESAME5。オプションのSESAMEタッチを導入することで指紋認証での解錠や交通系ICカード(Apple WatchやモバイルSuica含む)での解錠ができ、解錠のスピード・快適性において優れた製品となっています。
遠隔での操作・通知を可能にするWiFiモジュールが新機種の発売に伴い完売して入手困難になったり、レビュー記事で書いたとおりアプリはバグが目立つなど生産体制・開発体制に不安が残るところですが、ハードウェア的な快適性は抜群。
SESAMEタッチによる指紋認証のスピードは非常に高速で、後述するSwitchBotロックの指紋認証パッドと両方設置して使ってみた上でも差が明らかに分かるほどの快適性です。
WiFiモジュールは供給不足で入手が難しいものの、実際にWiFiモジュールを導入してみた感想としてはSESAME5+SESAMEタッチで快適な解錠体験が完結するため、特段スマートホームのトリガーにしたいなどの理由が無ければWiFiによる常時接続の必要性の低い製品だと感じました。
また指紋認証以上にApple Watchをかざした交通系IC解錠はアプリ操作不要&圧倒的スピードで快適なので、Apple Watch(あるいは交通系IC対応スマートウォッチ)ユーザーには特に強くおすすめしたい一台です。
2位:SwitchBotロック
自動化や外部サービス連携に圧倒的な強みを持ったスマートホーム系メーカー「SwitchBot」から販売されているSwitchBotロックは、指紋認証やMIFARE Classic 1K規格の汎用NFCカードによるロック解除ができる他、ドアの施錠・解錠・開閉をトリガーに外部サービスや他のデバイスを動かす起点にできたりと、スマートロックとしての機能にとどまらず、スマートホームの自動化のセンサーとしても活用できる製品です。
SwitchBotは1つのアプリで様々なスマートホーム製品を管理・連携させられ、外部サービスとの連携も可能。ロボット掃除機などもラインナップされているので、家から出たら自動で部屋を掃除といった自動化も構築できたりと、発想力次第でスマートホームの利便性をどんどん拡張する事ができます。
防犯対策にも力が入れられており、玄関の外側に設置する指紋認証パッドは取り外されるとアラームが鳴りアプリに通知が飛ぶ構造になっていたりと、ハードウェア面・ソフトウェア面ともに気配りが感じられます。
アップデートでスマートホームの標準規格「Matter」にも対応し、AppleのHomeKit連携によってSiriからの解錠やAppleホームアプリから「帰宅時に自動で解錠」といったオートメーションの設定が可能になりました。
Apple HomePodのSiri、Google Assistant、Alexaなどのスマートスピーカーからの声での解錠、IFTTT連携による外部サービスとの連動など拡張性にも優れているため、スマートホーム化を存分に楽しみたい方にはぴったりの一台です。
3位:Qrio Lock
Qrio Lockはソニー子会社のQrioのスマートロック。2018年に発売されてから時間が経っているロングセラーながら完成度が高く、2021年には新色のブラウンが追加され、その心地良いプロダクトデザインは周辺アクセサリと共に2022年にはグッドデザイン賞を受賞。また実際発売から5年ほど使っても故障しておらず、信頼性も感じられる製品です。
解錠方法としてはアプリによる手動解錠のほかスマホのGPSによるハンズフリー解錠、Apple Watchアプリからの解錠、リモコンのQrio Keyからの解錠、Qrio Padを使った暗証番号・Qrio Card解錠が用意されており、スマートフォンを持たない家族でも便利に使えるのが特徴。
バッテリーに関しても安心感のある構造で、CR-123Aを2本+2本でA面・B面と分けて運用する多重構造のため、片面の電池残量低下のアラートがアプリに通知されてから万が一電池が切れたとしてももう片面で稼働し始めるためバッテリー交換の猶予が非常に長く、片面の寿命である約6ヶ月間アラートを無視し続けでもしなければ電池切れにはならないため、電池切れで締め出される心配が極めて少ないのが大きなメリットです。
またQrioの体制に関するトピックとして、2015年登場の先代モデルQrio Smart Lock(Q-SL1)が2023年10月に新規登録を終了する事がアナウンスされています。
本体代を原資にアプリのアップデートとインフラを無償で提供し続けるという製品の性質上、販売終了した旧モデルの維持費は後継モデルの販売収益から出す必要がありますが、Qrio Smart LockとQrio Lockは全く別のアプリが用意されており、互換性がありません。もしここで同じアプリ・インフラを共用していたのであれば、サービス終了という話にはならなかったかもしれません(この辺りは多角的に製品を展開し続けながら1つのアプリにまとめるSwitchBotのモデルに分があると感じます)。
ただ過去にQrio Smart LockからQrio Lockに家族の玄関のスマートロックを差し替えた際、アプリごと刷新されたことで大幅に使い勝手が良くなっていたのを感じたので、最初期モデルのQrio Smart Lockを切り離して開発したからこその現行のQrio Lockの完成度だとも言えます。2021年にはリモコンや認証パッド、2022年には法人向けビルトイン版や法人向け管理システムもリリースされており、完成度の高いQrio Lockを長く主軸にして商品展開していきたい方向性が見て取れるので、当面は安心して使えると見ています(実際家族の家で今でも使っています)。
指紋認証に対応していない点、まだスマートロックが比較的高価な時代に設計された製品ということもあり他社製品と比べると価格が高めというデメリットはあるものの、スマートフォンを持たない子供や年配の方に使いやすいリモコンキーを持たせたいという家族ユーザーの方にはおすすめできる製品です。
セサミ・SwitchBot・Qrio Lockの機能・価格の比較表
続いて、おすすめの3機種の機能・価格の比較を表にしたのが以下のとおり。
SESAME5 |
SwitchBotロック |
Qrio Lock |
|
---|---|---|---|
本体価格 | 6,480円 | 11,980円 | 25,300円 |
WiFiハブ | 3,278円(完売中) | 5,480円 | 9,680円 |
解錠パッド | 4,780円 | 9,980円 | 22,000円 |
指紋認証 | 対応 | 対応 | – |
暗証番号解錠 | 対応 | 対応 | 対応 |
ICカード解錠 | FeliCa/MIFARE | NFCカード | Qrio Card(専用) |
リモコンキー | – | – | 対応(4,950円) |
Apple Watch | 対応 | 対応 | 対応 |
開閉センサー | 別売 | 付属 | 付属 |
ダブルロック | 対応 | 対応 | 対応 |
帰宅時の解錠の体験に限定して関して言えばSESAME5は高速な指紋認証や汎用の交通系IC(スマートフォンやApple WatchのSuica含む)が使えて最も快適かつ高速に解錠できると感じ、逆にQrio Lockはカード・リモコンともに専用品が必要かつ指紋認証に対応した解錠パッドも用意されていないため、近年の競合製品には遅れを取っているように感じます。
一方で本体のモノとしての質感はQrio Lock>SwitchBotロック>SESAME5の順でQrio Lockが最も高い質感に感じ、この辺りは本体価格が直に反映されていると感じる部分でした。特にSESAME5は黒い筐体に銀のネジが剥き出しだったりと、質感はチープ。また細かい点ですが、家を出る際に毎回触るサムターン回しの触感はQrioが最も良く、乗り換えて恋しくなった部分です。
WiFi連携部分に着目するとSESAME5とQrio Lockはそれぞれスマートロック専用品のWiFi中継機が必要ですが、SwitchBotは中継機に使えるデバイスがシーリングライト一体型や赤外線リモコン一体型など様々な選択肢があり、複数の機能を兼ねている上にお手頃なのが個人的に良いなと思った部分。スマートロック用に玄関近くの貴重なコンセント口を一つ潰す必要もなく、スマートに導入する事ができます。
SESAMEのWiFiモジュールは現状入手困難で、Qrio Lockの中継機であるQrio Hubは(代替として使えるNature Remo 3含めて)他の製品と比べて高額なので、WiFi連携を重視するのであればSwitchBotが良い選択肢になってきます。
まとめ
2014年に初代Qrio、2015年に初代SESAMEがクラウドファンディングに登場して以来、個人向けスマートロック製品の市場は成熟し、動作は安定化・高速化され、解錠の手段も幅広くなり、価格もこなれてきて初期の頃と比べると実用性は大きくアップしています。
スマートロックは他のスマートホーム系の製品と比べても「家の玄関の解錠が楽になる」という利便性を実感しやすい価値を提供している製品なので、スマートホーム化の中も是非導入をおすすめしたいカテゴリ。
実際の解錠体験にフォーカスするとSESAME5+SESAMEタッチの組み合わせが最も安く、最も快適な解錠体験が実現するので、現時点で最もおすすめできる製品。次点ではSwitchBotロックで、玄関の施錠・解錠・開閉に対するスマートホームの連携を組みたい方にはより使い勝手の良い製品となっています。今回の比較を通して、用途に合った最適な製品を選ぶ参考になれば幸いです。