リーズナブルな価格と性能の両立が魅力のスマートロック「セサミ」シリーズの最新モデル「SESAME5(セサミ5)」と、指紋認証に加えApple Watchやおサイフケータイ、交通系ICカードなどで解錠できるオプション「SESAMEタッチ」をセットで購入してしばらく使ってみたので使用感をお伝えしていきます。
この記事の目次
社長のプレゼンに惹かれて購入
SESAME5を購入するきっかけになったのは、たまたまTwitterで見かけてリアルタイムで視聴したセサミの社長がYouTubeでライブ配信していた新製品発表会。「指紋・IC認証のため家のスマートロックを5年使ったQrio LockからSESAME5に買い換えてみた」という記事で書いたとおり、社長のパフォーマンスや開発に対する姿勢、製品のポテンシャルを感じて購入に踏み切りました。
実際かなり面白い発表なので、時間がある方は是非見て欲しい内容です。
SESAME5の競合製品との価格比較
SESAME5の最大のインパクトはその価格。競合製品との比較表は以下のとおり。
SESAME5 | SwitchBotロック | Qrio Lock | |
---|---|---|---|
本体価格 | 6,480円 | 11,980円 | 25,300円 |
指紋認証 | 4,750円 | 9,980円 | – |
WiFi接続 | 3,278円 | 5,480円 | 9,680円 |
開閉センサー | 1,078円 | 0円(同梱) | 0円(同梱) |
セサミは歴代モデルで年々コスト削減を重ねており、今回のモデルではSESAME5はAmazonでの販売価格で本体6,480円、SESAMEタッチが4,750円という圧倒的な安さを実現しています。2018年の発売から年数が経過して割高感が目立ってきたQrio Lockと比較して5分の1以下と圧倒的に安いのは勿論、昨年の2022年に発売されたSwitchBotと比べても3分の1に迫る価格でかなり割安感があるのが特徴。
指紋認証用のパッドやWiFi接続用のモジュールなどの追加アクセサリも低価格で、フルセットで揃えるとなるとかなりの価格差に。価格だけ比較するとかなり圧倒的なので、この中で最も高額なQrio Lockを約5年ほど運用した目線から使ってみてどうなのか、実際に導入して検証してみました。
SESAME5を開封→設置
今回購入したのはメインの「SESAME5」本体と、指紋認証・ICカードによる解錠機能を追加する「SESAMEタッチ」の2つ。いずれも無駄の無さそうなパッケージに入っており、コストを抑える姿勢が感じられる外観です。
まずはSESAME5本体を開封。本体+調整用スペーサー、設置用両面テープ×2(スペーサー使用時用)、スペーサー用ネジ+ドライバー、冊子類が含まれます。
電池はQrio Lockで使用されているのと同じCR-123Aを採用しており、本体がかなり割安ながら別売という事もなくしっかりと同梱されています。セットアップ時には一旦電池の蓋を開け、この絶縁を外す必要があるので注意。
外した後はiPhone/Androidのセサミアプリをインストールし、初期設定を行います。
絶縁を外した後もそのままだとアプリから認識されなかったため、説明書の手順に従ってリセットボタンでリセットする必要がありました。
こちらがSESAME5の外観。今回はブラックを選んでみましたが、本製品は3色展開でホワイト・シルバーも選択可能。ドアの外観に合わせて選ぶ事ができます。
背面は箱から出した状態で両面テープが貼られており、高さの調整が不要な場合はこれを剥がしてそのまま設置できます。ただ調整用スペーサーを使う場合はこの両面テープは未使用で使い道の無いままここに残ってしまうので、初期状態から貼り付けない状態で予備として残して欲しいと思いました。
サムターン回転部分は今回の設置では特に何もせずそのまま装着できる組み合わせでしたが、側面のボタンを押しながら回すタイプなどの特殊なサムターンには特殊アダプターがラインナップされており、+600円で対応する事ができます。
今回取り付けるドアには初期状態では高さが合わなかったので、付属のスペーサーを取り付けていきます。一旦ドアのサムターン部分に合わせて高さを確認し、ねじ止めしていきます。
ねじ止めしたところ。先述したとおり、未使用の両面テープが内側に残ってしまうのでここは出荷状態では貼り付けないでほしかったところ。
実際に玄関に設置したところ。ブラックの本体は黒い取っ手のドアに馴染みます。側面のネジの銀色が目立つのが惜しいところ。
続いてSESAMEタッチを開封していきます。箱はかなりコンパクト。
予備の両面テープが2枚付属します。
こちらがSESAMEタッチ本体。数字パッドのついた上位モデルのSESAMEタッチProと比べるとIC・指紋のみの認証となっているため、かなりシンプルかつコンパクトな筐体になっています。
最初の難関は裏蓋を外すところ。中の絶縁シートを抜かなければセットアップができないのですが、そこにアクセスするためにはこの裏蓋を外す必要があります。両面テープでほぼ全体が覆われている蓋をネジを緩めて結構強めに引かないといけないので、コツが必要です。
開けると電池が2本入っているので、絶縁シートを引き抜いて起動します。なお電池はSESAME5よりもコンパクトなCR2を採用しています。
実際に玄関の外側に設置したところ。後付け感が少なく、かなりナチュラルに収まっていると感じます。
SESAME5の使用感
それでは、実際にSESAME5を導入してしばらく使ってみた使用感を紹介していきます。
ロック解除は非常に快適な速度
SESAME5を導入してみて感じたのは、ロック解除が非常に高速だという点。スマートフォンと接続後のセサミアプリからの解錠はもちろん、ドアに設置したSESAMEタッチを使った指紋認証も十分な精度・速度を兼ね備えていてストレスフリー。
SESAMEタッチ+Apple Watchを使ったIC認証の解錠は指紋よりも更に高速で、スマートロック最安の価格帯の製品とは思えない快適性でした。
大型の指紋センサーは成功率はほぼ100%
スマートフォンよりも大型である事が売りのの指紋センサーですが、実際の使用感としては非常にストレスフリー。失敗する事がほぼ無く、体感としてはTouch ID搭載のiPhone SEシリーズのロック解除よりも快適に解錠できています。
ロック解除速度としてはICをかざしたロック解除よりは時間は掛かるものの、普段使いの中で指を当ててドアノブを引く流れで解錠ができていなくてストレスを感じるといった事は無く、十分な速度が出ていると感じました。
SESAME5の弱点・気になったところ
続いて、SESAME5の弱点だと感じた点を順に取り上げていきます。
セサミアプリが全体的に荒削り
Qrio Lockから乗り換えて真っ先に感じたのが、セサミアプリが全体的に荒削りな事。
一般的な市販製品のアプリと比べるとUIの外観が開発中のテスト版の段階ような見栄えで、「readyToRegister」「Ble Connecting」のように製品のステータスが適切に日本語にローカライズされた文面では無くプログラム内部での呼称のまま出ているような箇所が見受けられたり、ファームウェア(SesameOS)アップデートでバージョン名ではなくダウンロードされるファイル名が表示されたり、日本語訳が不適切な部分があったり、細かいバグが特定のボタンが表示されたりされない事があったりと、家の鍵を扱うアプリとしてはやや不安になる出来だと感じました。
ただ一度SESAME5+SESAMEタッチをセットアップしてしまえばアプリは基本的に使う事は無いので、実際の運用の中では実害は無く気にならなくなるところではあります。
「手ぶら解錠」の位置がまるで隠し機能、かつ正常に機能しない
セサミアプリの入ったスマートフォンを持ったまま指定したエリア内に入ったことをGPSで検知し、かつSESAMEのBluetooth通信圏内に入ると自動的に解錠してくれる「手ぶら解錠」が何も無い部分を追加でスクロールしないと出てこない、隠し機能と言っても良いほど分かりにくい位置に隠れており、かつ設定で有効化しても正常に機能せず解錠できませんでした。
2018年Qrio Lockでも100%では無いもののそれなりの精度で自動ロック解除してくれていたので、この辺りのソフトウェア側の完成度には不安が残るところです。
Bluetoothの接続までに時間が掛かる
今回はWiFiモジュール無しでSESAME5単体で運用してみましたが、SESAME5本体に近づいてアプリを起動したまま待たないと繋がらない事が多く、WiFiモジュールあるいは解錠のためのSESAMEタッチなどのアクセサリは必須だと感じました。
また内側からの手動解錠や外側からのSESAMEタッチ解錠で玄関を通過する際にBluetoothが繋がらないまま通過する事が多いので、たまに玄関前に長く滞在するとBluetoothが1週間以上ぶりに繋がって一気に何十件も施錠・解錠通知が来るといった煩わしい現象もありました。この辺りはWiFiモジュールの導入で解決する点ではありそうですが、WiFiモジュールはSESAME5の発売にあたって販売を一時中止しているため、できるだけ早く販売を再開してほしいところです。
オートロックの一時停止が無い
以前導入していたQrio Lockで愛用していた機能の一つが、オートロックの一時停止。
サムターンで解錠→施錠→解錠の操作を行うと「オートロックの一時停止」が行え、ちょっと郵便受けを確認しに出たりといった用事で毎度解錠をしなくても良かったため大変重宝していましたが、SESAMEにはこの機能がありません。
SESAMEタッチを導入していれば帰りに指紋で楽に解錠できるので鍵を持たずに外に出てしまい閉め出されるといったリスクは低いのが救いではありますが、Qrio Lockからの乗り換えで少し不便に感じた部分ではあります。
SESAME5の周辺機器の必要性を考える
SESAME5にはいくつかの周辺機器が別売で用意されており、必要に応じて買い足して機能を強化する事ができます。先述した実際に使った使用感を加味して、それぞれの必要性を検討してみました。
SESAMEタッチは必要?
SESAMEタッチを実際に使ってみた感想としては、SESAME5を買うなら絶対一緒に買ったほうが良いアクセサリです。
SESAMEタッチは、指紋リーダーとFeliCa・MIFAREのリーダーを組み合わせたSESAME用の認証デバイス。
SESAME単体で使える解錠方法としてはスマートフォン・Apple Watchアプリからの手動の解錠か、スマートフォンアプリでGPSの位置情報が指定のエリア内に入った際にBluetoothでSESAMEを検知すると自動で解錠する「手ぶら解錠」の2種類。
このうち「手ぶら解錠」は今回試した環境のSESAME5+iPhone 14 Plusでは実用的な精度で稼働せず、またSESAME5自体のBluetoothの届く範囲が想像以上に狭い事から、手動(IC・指紋・アプリ)で解錠するほうが早いというシーンも多く、結局はSESAMEタッチに頼りきりの運用になりました。
そのためSESAME5単体で運用する場合は「アプリを開いて解錠」をメインに使う事になりますが、実際「スマホを出してアプリを起動してBluetoothの接続を待って解錠ボタンを押す」といった手順を踏むのであれば極論元々の物理的な鍵を使ったほうが楽だったりします。
SESAMEタッチがあれば複雑な手順無しに指を乗せるだけで高速に認識して解錠してくれるので、アプリと比べると解錠の快適性は雲泥の差。更にApple Watchなど交通系ICカードに対応したスマートウォッチであればIC鍵として登録できる上に指紋よりも更に高速で読み取ってくれるので、買い物などの荷物で手が埋まっていても解錠しやすいのが便利です。
またIC解錠に関してはApple Watchが無い方やAndroidユーザーの方であれば充電不要の指輪型決済デバイスEVERINGが公式に対応を表明しているので、解錠用デバイスとして導入するのもおすすめです。
SESAMEタッチProは必要?
SESAMEタッチの上位モデルとして用意されているのがこのSESAMEタッチPro。
16桁までの暗証番号で解錠できるので来客を招く際には便利なSESAMEタッチProですが、通常の自宅の玄関のスマートロック化であれば通常モデルのSESAMEタッチで十分だと感じました。また、見栄えに関しても通常モデルの方が数字ボタンが無くミニマルでクリーンだと感じます。
ただ電池持ちの面で見ればProは大きな優位点があり、通常のSESAMEタッチがコンパクトなCR2電池2本で約365日稼働するところ、SESAMEタッチProはSESAME5と同じCR-123Aを採用して2本で約550日、4本で約1100日の長期間の稼働が可能。
通常のSESAMEタッチは毎年電池交換が必要ですが、Proであれば丸3年持つため次期モデルの登場&買い替えまで一度も電池交換しないユーザーも出てきそうなほど長持ち。両面テープで設置する製品の性質上、交換のたびに剥がす必要もあるのはあまり好ましくない事も加味するとProを選択した方がスマートかもしれません。
オープンセンサーは必要?
オープンセンサーはドアの開閉と連動し、ドアが閉じられた時に適切なタイミングでSESAMEがオートロックできるようタイミングを教えてくれるセンサー。
これ無しで運用するとオートロックはタイマー式で「解錠の1分後に自動で施錠」といった設定になりますが、この場合だと家に入った後にオートロックされるまでにタイムラグがあったり、逆にドアが閉まる前にオートロックが作動して解錠→施錠の操作が再度必要になったりと、無いと動作が少しぎこちない感じになってしまう場合があります。
税込1,078円の追加アクセサリですが、この価格であれば快適にオートロックを使いたいのであれば積極的に導入するべきアイテムだと感じました。ただ後から欲しくなって直販のサイトで単品で追加しようとしても702円の送料が掛かってしまうので、本体価格に対して送料が高額になるのが残念なところ。是非SESAME本体同様、Amazonなど外部ECサイトでの取り扱いをしてほしいところです。
WiFiモジュールは必要?
SESAME5と常時接続して開閉通知をセサミアプリにリアルタイムで届けてくれたり、Bluetooth接続範囲外からSESAMEを操作できるようになるWiFiモジュールですが、先述したとおりSESAME5はBluetooth接続をいざしようとするとタイムラグがあったり、家の中からでも中々Bluetoothが届かなかったり、それらのせいでたまに開閉通知がアプリに一気に届いたりするため、遠隔操作する予定が無くともアプリからのスムーズな使用のためにはWiFiモジュールはあった方がいいと感じました。
追記:実際にWiFiモジュールを導入してみた記事を公開しました。アプリからの解錠がスムーズになり快適になりますが、SESAMEタッチがある方は優先度が下がります。遠隔操作やスマートスピーカー連携まで欲しい方にはおすすめ。
追記2:WiFiモジュールは終売し、後継となる「Hub3」が2024年5月に発売しています。
荒削りながら中核の体験の品質は非常に高いスマートロック
SESAME5は全体を見るとアプリ周りのソフトウェア側の荒削り感は否めない製品ですが、中核となる解錠体験だけで見れば非常に完成度の高いハードウェアだと感じました。特にSESAMEタッチの指紋・ICを使ったロック解除は高速かつストレスフリーで、セサミアプリからの解錠も解錠ボタンに指が触れた瞬間に本体のモーターが回り始めるのが分かるほど速く、ハードウェア部分の高性能と低価格の両立は他のメーカーの追随を許さない尖った製品でした。
一方でセサミのスマートフォンアプリは未成熟な箇所が多く、Bluetoothに繋がりに行くまでは時間が掛かり、手ぶら解錠も上手く機能せず、ハードウェアの足を引っ張っている部分に感じました。WiFiモジュールを追加すれば快適になる部分はあれど、そのWiFiモジュールも現在は入手困難なため中々SESAME5の持つポテンシャルが出しきれていないのも残念なところ。
5年前に登場して本体価格が2.5万円以上したQrio Lockから乗り換えた身からすると凄まじい価格破壊に感じましたが、実際に使ってみた感想としてはもう少し値上げしてもいいのでソフトウェア開発費に充ててほしいなというところでした。今後のアップデートに期待です。
ただやはり、SwitchBotやQrioなど他社のスマートロックのIC認証は専用カードを使っている一方で、スマートフォンやApple Watchなどに入っている交通系ICを鍵として使える快適性はSESAME5+SESAMEタッチの特権。他に気になる所はあれど、ここの使い勝手の良さだけでSESAMEを選ぶ理由になると言っても良い製品でした。
今回のSESAME5をSwitchBotスマートロック、Qrio Lockと比較した「賃貸におすすめのスマートロック3選」も公開しているので、検討中の方は是非参考にしてみてください。