2021年9月15日に発表されたiPhone 13 Pro Maxのシエラブルーを無事発売日の24日に購入できたので、実際に使ってみたレビューを書いていきます。
2022年モデルのiPhone 14 Pro Maxのレビューはこちら。
この記事の目次
iPhone 13 Pro Maxは9月15日に発表24日に発売された「iPhone 13」シリーズの最上位モデル。
ラインナップとしては通常モデルの「iPhone 13」とその小型モデルの「iPhone 13 mini」、カメラとディスプレイを強化した上位モデルの「iPhone 13 Pro」とその大画面モデルの「iPhone 13 Pro Max」が揃っており、今回レビューするiPhone 13 Pro Maxはその名の通り上位モデルの「Pro」の画面サイズをアップさせた「Max」の最も本格的な機種となっています。
今回の筆者の購入の経緯としては昨年iPhone 12・iPhone 12 mini・iPhone 12 Pro Maxの3機種を購入し、前半をMaxメイン、後半をminiメインにサイズダウンして複数台持ちして使ってきており、最終的にiPhone 12 miniがメイン・iPhone 12 Pro Maxがカメラ&ゲーム用のサブ機としてポジションに落ち着いたので、その後者の用途が両方とも進化したためMaxのみ新型に入れ替える形で購入しました。
一年間使ってきたiPhone 12 Pro Maxとの比較を踏まえ、進化したポイントなどを実際に使いながらチェックしていきます。
iPhone 13 Pro Maxの性能をチェック
iPhone 13 Pro Maxのスペックシート
まずはiPhone 13 Pro Maxの主なスペックをおさらいしていきます。
iPhone 13 Pro Max |
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---|---|
チップ | A15 Bionic |
GPU | 5コア |
ストレージ | 128GB 256GB 512GB 1TB |
重量 | 238g |
寸法 | 幅:78.1 mm 高さ:160.8 mm 厚さ:7.65 mm |
画面サイズ | 6.7インチ |
解像度 | 2,778 x 1,284 |
リフレッシュレート | 最大120Hz(ProMotion) |
最大輝度 | 1,000ニト(標準) 1,200ニト(HDR) |
防沫性能 耐水性能 防塵性能 |
IP68等級 (最大水深6メートルで最大30分間) |
生体認証 | Face ID(顔) |
カメラ | 望遠:ƒ/2.8(3倍) 広角:ƒ/1.5(1倍) 超広角:ƒ/1.8(0.5倍) |
LiDAR スキャナ |
搭載 |
新撮影機能 | マクロ写真撮影 シネマティックモード フォトグラフスタイル |
SIMスロット | nano SIM+eSIM デュアルeSIM対応 |
5G | 対応(sub6) |
接続端子 | Lightning |
ワイヤレス 充電 |
Qi(最大7.5W) MagSafe(15W) |
価格 | 128GB:134,800円 256GB:146,800円 512GB:170,800円 1TB:194,800円 |
今回の主な目玉としては「最大120Hzの可変リフレッシュレート」「3倍の望遠レンズ」の2つ。
2017年の10.5インチiPad Proで初めてApple製品に導入された最大120HzのProMotionがついにiPhoneにも採用。従来の60Hzの2倍なめらかに動くディスプレイとなっています。
望遠レンズは昨年はiPhone 12 Proが2倍、iPhone 12 Pro Maxが2.5倍でしたが、今年はiPhone 13 ProもiPhone 13 Pro Maxも同じ3倍の望遠レンズを搭載。より遠くの被写体を切り抜くことが可能となっています。広角レンズ側のセンサーサイズの差も無くなり、今年のProのラインナップ2台は画面・バッテリーサイズの差のみとなっています。
iPhone 13 Pro Maxの先代iPhone 12 Pro Maxからの進化
続いて、先代モデルのiPhone 12 Pro Maxから変わった更新点を比較表にてまとめていきます。
iPhone 13 Pro Max |
iPhone 12 Pro Max |
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発売年 | 2021年 | 2020年 |
チップ | A15 Bionic | A14 Bionic |
GPU | 5コア | 4コア |
カメラ | 望遠:ƒ/2.8 広角:ƒ/1.5 超広角:ƒ/1.8 |
望遠:ƒ/2.2 広角:ƒ/1.6 超広角:ƒ/2.4 |
望遠倍率 | 3倍 | 2.5倍 |
最大リフレッシュレート | 120Hz | 60Hz |
公称電池持ち | 最大28時間のビデオ再生 | 最大20時間のビデオ再生 |
容量 | 128GB 256GB 512GB 1TB |
128GB 256GB 512GB – |
重量 | 238g | 226g |
厚さ | 7.65 mm | 7.4 mm |
デュアルeSIM | 対応 | 非対応 |
昨年のiPhone 12 Pro Maxから外観こそは大きく変わらないものの、カメラ・ディスプレイを中心に性能はiPhone 13 Pro Maxでは大きく進化。
カメラは望遠レンズが2.5倍から3倍に変更されたほか、望遠・広角・超広角全てのレンズがF値の小さい、明るいレンズに。最短2cmのマクロ撮影にも新たに対応しています。
ディスプレイは従来からサイズ・解像度は変わらないものの、従来60HzだったリフレッシュレートはProMotionの可変リフレッシュレートで最大120Hzに。
重量は226gから238gに重量化しているほか、厚みも7.4mm→7.65mmと従来より分厚くなっています。
重量像の分はバッテリー持ちにも反映されており、最大20時間だったビデオ再生は最大28時間まで増加。
eSIMは従来のシングルからデュアルeSIMに進化しており、物理SIM無しで2つのキャリアのeSIMを使うといった用途にも今回新たに対応しました。
性能のベンチマークテストで12 Pro Maxからの進化をチェック
処理性能をチェックするため、まずはGeekbench 5をインストールして先代のiPhone 12 Pro Maxからの処理性能の向上をチェックしてみました。
デバイスの基本性能の情報を比較。まだGeekbenchのデータベースに登録されていないため機種名とプロセッサ名は表示されていませんが、左がiPhone 13 Pro Maxとなっています。2.99GHzのA14 Bionicから3.23GHzのA15 Bionicになり、クロック数は上昇。RAM(メモリ)は約6GBのままとなっています。
CPU処理性能はシングルコアが1596→1726、マルチコアが4178→4779と共に向上。
グラフィック性能を示すComputeスコアは9301→14346と大幅に向上。ゲームをプレイするユーザーに嬉しいのは勿論、最大120Hzになったリフレッシュレートもしっかり動かしてくれそうです。
「原神」の最高設定でiPhone 12/13 Pro Maxを比較
実際のグラフィック性能を試すために3Dグラフィックの負荷が高いゲーム「原神」を高負荷な設定で動かし、フレームレートの落ち具合を試してみました。
設定の「画面」の中からグラフィックスの「最高」プリセットを選び、さらにフレームレートを30→60に変更。最も負荷の高い高画質な設定で試します。
30分間実際にプレイをして端末が温まってきた頃に同じ環境でiPhone 13 Pro MaxとiPhone 12 Pro Maxでの動きを比較したところ。
9月下旬で気温も20度前後と下がってきている事もあり、夏の間は最高設定でプレイし続けるのが厳しかったiPhone 12 Pro Maxも殆どフレーム落ちが無く快適に動いてしまってやや企画倒れ感はありますが、実際色々なシーンでプレイしてみた感想としてはiPhone 13 Pro Maxは現在の気温ではフレームレートの低下が非常に少なくなったように感じました。
というわけで、更にiPhone 13 Pro Maxを追い込むために最高設定+60fps+画面収録を行ってみました。3Dゲームの画面収録はゲーム自体を動かしつつ録画処理も行うため、スマートフォンにとってはかなり負荷のかかる過酷な用途。
実際に録画したデータは以下のとおり。
ボス戦のエフェクトが重くなる部分(45秒〜など)では瞬間的にはフレーム落ちが発生していますが、継続的にフレームレートが落ち続ける箇所は特に無し。プレイにも大きな問題はなく、設定をある程度落とせば実用的な実況プレイ動画のキャプチャー用端末として使えそうです。
iPhone 13 Pro Maxのシエラブルーの外観をチェック
続いて、iPhone 13 Pro Maxの外観をパッケージからチェックしていきます。
今年のiPhoneのパッケージの例年からの変更点としては、環境に配慮して外装のフィルムが撤廃されたポイント。例年までのiPhoneの開封の儀だった透明のフィルムを剥がす工程が無くなっています。
代わりに紙の箱の上下がテープ留めされており、これを剥がす事で箱の蓋が外せるギミックになっています。
箱を開くとこのようにiPhoneの背面が出迎えてくれます。指紋がつきやすいフレームなので、ケースを即つけたいユーザーにとっては画面保護シート一体型のタブがついているのもありがたいポイント。
iPhone本体には画面側にボタンの説明が記載されたシートが装着されており、本体の下にはUSB type C – Lightningケーブルが格納されています。
こちらがiPhone 13 Pro Max本体。色は新色のシエラブルーを選択してみました。
端子は引き続きLightningを採用。
フレーム形状は昨年に引き続きフラットになっていますが、今年はフレームの面部分だけ塗り分けられており、ディスプレイとバックパネルとの継ぎ目部分とのツートンカラーになっております。
右側面は引き続きサイドボタンを搭載。
左側面もボタン配置は同じ。
画面サイズはiPhone 12 Pro Maxから変化は無いものの、上部のインカメラのノッチ部分は小型化しています。
スピーカーがノッチ中央から画面端に移動しており、造形としても整った印象を受けます。
シエラブルーは昨年のパシフィックブルーと比べると淡い色になりましたが、個人的にはかなり好み。より中性的な色に近づいた印象を受けました。
進化したカメラ性能を試す
続いて、iPhone 13 Pro Maxのカメラ性能を試していきます。
iPhone 13 Proシリーズは昨年iPhone 12 Pro Maxのみに搭載されていた大型センサーを両方のモデルに採用し、3つのカメラ全てのレンズが明るくなっています。
超広角側のカメラはマクロ撮影が可能になり、最短2cmまで被写体まで寄る事が可能に。望遠側はiPhone 12 Proが2倍、12 Pro Maxが2.5倍だったものが今年は2機種とも3倍(77mm)に統一。
ソフトウェア的にはiPhone 13シリーズに共通して撮影の際の調整傾向を肌のトーンに影響を及ばさずに変更できる「フォトグラフスタイル」や、動画版ポートレートモードとも言える「シネマティックモード」が新たに搭載。シネマティックモードはiPhone 13・13 miniでは1倍広角レンズのみでの撮影になりますが、Proシリーズでは1倍・3倍の2種類の画角を使い分けることができるなど差別化されています。
フォトグラフスタイルは他社スマホからの乗り換えにも嬉しい機能
フォトグラフスタイルはiPhone 13シリーズからの新機能。iPhoneの撮影の際の自動調整に介入して自分好みの傾向に調整できる機能で、一度設定すると次から同じ設定を引き継いで撮影してくれます。
一般的なカメラアプリのフィルターと違い、被写体全体に同じ処理をかけるのではなく、肌のトーンは維持したまま影の明るさを調整したり、空を鮮やかにしたりといった被写体に応じて調整をかけるのが特徴。
なお、このフォトグラフスタイルは撮影時の決め打ちで不可逆となっており、撮影後に変更する事は不可。
スマートフォンのカメラはメーカーによって味付けが異なり、例えばGalaxyシリーズだとSNS映えするコントラスト強めの写真であったりとメーカーの特色が出ています。
今回のフォトグラフスタイルは一度設定するとずっとその傾向で撮影するという点からそういったメーカー間の味付けの好みの差を埋める機能といった印象が強く、鮮やかに撮るメーカーのスマホや寒色系で撮るメーカーのスマホからの乗り換えであっても前のメーカーの好みに近い状態で撮影できるための機能といった意図を感じる機能でした。
マクロモードは今までに無い楽しみ方ができるカメラ
今回新たに搭載されたマクロモードは他社のAndroidスマートフォンによくあるマクロ専用レンズを別途搭載するという方法ではなく、超広角カメラにオートフォーカス機能を搭載する事によって最短2cmまでのピント合わせを可能にする事で実装しています。
実際撮影してみると被写体に近づくだけで自動でマクロモードに移行し、マクロ撮影が可能。
アイスティーの水面をマクロ撮影したところ。自分が触ってきた中では従来の一般的なスマートフォンのマクロカメラと比較すると精細感が高く、実用度も高いと感じました。
ただし従来通常の1倍の広角カメラで撮影していたような近さでも超広角のマクロ撮影に移行してしまう事もあったため、超広角ではなく最も性能の高い広角で撮影したい場合に不便だと感じました。個人的には自動切り替えではなく別途マクロモードを用意してほしかったところ。
カフェで食事を撮影
1倍の広角カメラでカフェの食事を撮影したところ。ピントが合っているアボカド部分はディテール感があり、背後はしっかりボケています。
3倍望遠でも同じ写真を撮影。広角と望遠でも雰囲気が大きく変わらずカメラの傾向に統一感を感じます。ただF2.8と広角側のF1.5と比べると暗めのレンズで、ボケもマイルド。
時間帯や環境光の差はありますが、同じメニューを以前Xperia 1 IIIのレビューで70mm F2.3の望遠レンズで撮影したものと比べるとやはり望遠レンズの静止画撮影の性能は見劣りすると感じました。
シネマティックモードを江ノ島Vlogで試す
続いて、iPhone 13シリーズの目玉機能であるシネマティックモードを実際に試してみました。
シネマティックモードはカメラアプリから「シネマティック」を選ぶと撮影できる専用のモードで、解像度・フレームレートは1080pの30fpsに制限されてしまうものの、撮影中に自動で被写体を認識して背景をぼかしたり、撮影後にピントを合わせる被写体を選択し直したりといった事ができるポートレートモードの動画版。
シネマティックモードは「写真」アプリで編集できるほか、Appleの動画編集アプリ「iMovie」でも編集可能。AirDropでApple製品間でシェアする際は上部の「オプション」から「すべての写真データ」にチェックを入れることでシネマティックモードの被写界深度情報を動画と一緒に転送してiPhone・iPadなどの別デバイスで編集することも可能です。
iPad miniのiMovieに取り込んだところ。シネマティックモードで撮影した素材に関しては「シネマティック」というボタンが出現し、タップしてピントを合わせる位置を変更、スライダーでF値の調整が可能です。
実際にiMovieで繋げたシネマティックモードの作例がは以下のとおり。
試しにF値低めでボケを大きくしているため不自然な部分も多いですが、後から調整できるという性質上、ボケの量を抑えてより自然な映像にする事も後から可能。作り込みによってはかなり違和感を減らしてナチュラルに仕上げられそうです。
撮影時の自動追従もそれなりに精度が高く、普段使いでも動画に関しては「とりあえずシネマティックモードで撮影」しておいて後でボケは好みによって足したり削ったりできるのは良いなと思いました。
シネマティックモードはiPhone 13とiPhone 13 miniが1倍のみ、iPhone 13 ProとiPhone 13 Pro Maxが1倍と3倍で撮影可能ですが、実際に使ってみるとシネマティックモード目当てならProを買うべきだと感じました。
やはり1倍の広角で撮った映像にボケが加わるより、3倍の望遠で撮った映像でボケを調整したほうが圧倒的にドラマティックなカットが撮影できるというのが理由で、これが1倍だけだと比較的「普通の映像」になちがち。Proであれば複数の画角+ダイナミックなボケでバリエーションが出せるので、映像の幅は大幅に広がります。
iPhone 12 Pro Maxとカメラ性能を比較
続いてiPhone 12 Pro Maxと並行して同じ被写体を撮影し、変化を見ていきます。
まずは料理撮影。傾向は似ていますが、色味はiPhone 12 Pro Maxの方が個人的に好み。
別の料理。こちらもiPhone 12 Pro Maxの方が美味しそうに感じます。
1倍の広角で夜景を撮影したところ。夜景撮影はやや改善している印象です。
超広角での夜景撮影。こちらは全体的に周囲の木の形などがくっきりディテールが出るようになっており、進化を感じられる部分。超広角で暗所撮影したい場合は13 Proシリーズは活躍しそうです。
望遠レンズもチェック。2.5倍から3倍になったことでより遠くの被写体を切り取れるようになりました。ただし色味に関しては不自然に感じる調整となっており、iPhone 12 Pro Maxの方がより肉眼に近い空の色でした。
全体的に見てiPhone 13 Pro MaxのカメラはiPhone 12 Pro Maxからハードウェアのスペックこそは進化しているものの、色味などの調整はiPhone 12 Pro Maxの方が自然で完成度が高いのではないかと感じるシーンも多い印象。またピントが合わせられないと望遠から、広角、広角から超広角(マクロ)に自動切り替えする挙動も使いにくいと感じるシーンが少なくなく、総評としてはソフトウェアの作り込みが不足していると感じるカメラでした。
最大120HzのProMotionディスプレイは大画面と相性抜群
2017年のiPad Proでの採用から約4年、今回ようやくiPhoneにも搭載されたProMotionディスプレイ。スクロールなど動きがあるシーンでは120Hzディスプレイをフルに活かして120Hzで滑らかに動かしつつ、止まっている間は10Hzに抑えてバッテリーを節約するといったものとなっています。
秒間120フレームで撮影してスローモーションにした上記の動画のとおり、左のiPhone 13 Pro MaxはiPhone 12 Pro Maxと比べてスクロールが非常に滑らか。この差は肉眼でもはっきり感じられ、ロック解除の瞬間から気持ちよく感じられるものとなっています。
iPhone 13 Pro Maxのように大画面で多くのコンテンツを俯瞰して読める端末との相性は抜群で、本記事のような長めのレビューを読む際には読みやすさが格段にアップ。ハイエンドAndroidスマートフォンでは当たり前の機能となりつつあった高フレームレートがようやくiPhoneにも来てくれたのは嬉しい限り。
ただし120Hzに対応したゲームなどは今のところ皆無で、グラフィック性能的にも難しいのか4年間ProMotionを提供しているiPad Proに関しても対応タイトルは限定的。ゲーム用途で120HzのiPhoneを買う事は現時点では全くおすすめできないものの、今回のiPhone 13 Proシリーズが登場したことで今後120Hzを活かすタイトルが増える可能性は期待できるのではないでしょうか。
現時点でこの120Hzが最も活きるのはTwitterやブログなどスクロールを多用する媒体を読む時で、スクロールを止めなくてもある程度目で追えるようになるのは快適そのもの。必須ではないけれどもあると非常に嬉しいといった位置付けの機能に感じます。
「Max」は必要?
6.7インチのiPhoneとしては最大の画面サイズを搭載したiPhone 13 Pro Max。その代償に238gというタブレットの世界に一歩踏み込んだような重量になっています。
今年のモデルはiPhone 13 ProもiPhone 13 Pro Maxも同等のカメラを搭載されており、性能でMaxを選ぶ理由も無し。選ぶ理由は画面サイズとバッテリー容量だけになるのですが、iPhone XS Maxから4世代「Max」を買い続けてきた身としてもMaxには買い続けさせる魔力があると感じます。
個人的な用途としてはやはり「ゲーム」と「写真編集」の2点の用途でMaxの卓越した処理性能と画面サイズの組み合わせが唯一無二の価値になっているところがあり、これは他の端末では代替できないもの。
まずゲーム機として、6.1インチと6.7インチは雲泥の差。物理的な画面サイズは3D空間で索敵する必要がある類のゲームでは視界に入る限り大きければ大きいほど有利で、対人ゲームになってくると勝率に直結する要素です。また物理的な筐体サイズは放熱面積にも繋がるため、長時間プレイにも最適。iPad miniなどのタブレットと比べても両手で握りやすい絶妙なサイズ感が画面上の操作パッドの操作性が抜群に良く、やはり「勝てるゲーム機」は必然的にMaxになってきます。
続いてフォトレタッチ。最近はGalaxy Z Fold2やiPad miniなどの小型フォルダブル・タブレットに出番を奪われ気味ではあるものの、やはりAdobe LightroomなどのフォトレタッチツールをiPhoneの高品質・大画面で動かせるのは他には無い価値だと感じます。
正直カメラとしての性能が同じであれば機動力に長けた通常の「Pro」にすれば良いのではないかと今回かなり悩みました。DJI Osmoシリーズなどのジンバルに載せて撮影するにもコンパクトな方が都合が良く、単にカメラとして見ればProの方が適任です。しかし、120Hzのポテンシャルを最大限活かせる大画面、撮影後の「編集」部分の快適性、ゲーム機としての強さといったところで今回もMaxに落ち着く形になりました。
まだLightning端子な事について
近年iPhoneの新型のたびに話題になるLightning端子。今回も例にも出ず続投でUSB type Cは採用されず。USB type Cに充電環境を統一したいといった声も多く端子形状の変更が叫ばれていますが、これに関しても思うところはあります。
個人的にiPhone 12シリーズを丸一年使った中で、Lightningケーブルで有線充電した回数は片手で数えるほど。Qiのワイヤレス充電ができる事に加え、12からはMagSafeが新登場。車載ホルダーはマグネット車載&充電になり元に戻れないほど便利になり、自宅の充電環境も卓上のおしゃれなMagSafe充電ブロックで15W充電できるようになり、モバイルバッテリーはMagSafe装着の物になり家からLightningケーブルを持ち出す事がなくなりました。一度環境さえ整えれば二度と有線ケーブルで充電する日々に戻れない快適性が実現できるのを実感しています。
そのため充電方法としてのUSB type C採用は個人的に一切不要。ケーブル自体、使わない物となりました。
一方で、拡張性という意味ではLightningには不満あり。既にApple製品はMacBookに続いてiPadもAir、mini、ProがUSB type Cを採用しており、USB type C接続のSDカードリーダーやケーブルでカメラからデータを取り込んだりSSDにデータを保存したりといったことが可能。そういった拡張性は、今回のiPhone 13 Proシリーズには必要なものだと感じます。
Lightningケーブルは理論値として480Mbpsしか転送速度が出ないUSB 2.0を採用しており、2021年に「Pro」を冠して動画撮影に注力して発売され「1TB」も最大容量が選べるスマートフォンとしてはありえないボトルネックなのではないでしょうか。WiFi 6、5Gといったワイヤレスの新規格をいかに導入しようとも、現実的には有線で転送して編集したいユーザーが多いはず。
「Pro」を冠するのであれば、相応の拡張性を提供してほしいところだとは常々思います。
Face IDは個人的に困ってはいないが、困らない人は限定的
マスク社会になってから特に言及される事が多いのが、iPhoneの生体認証がFace ID(顔)のみという問題。iPhone単体ではマスクを外さなければロック解除できず、現金の手渡しを避けてレジ前でiPhoneでApple Payの非接触決済するためにマスクを外すという本末転倒な光景も良く見ます。
現在はApple Watchを身につけてロック解除していればiPhoneもFace ID無しでロック解除できるという機能があり、Apple WatchでApple Payの決済もできるお陰で個人的には困っていませんが、やはりApple Watchを使わなければこのマスク×顔認証の問題は解決できないのはiPhoneの弱点となっています。
今回iPhoneと同時に購入したiPad miniは側面にTouch IDの指紋認証が付いていますが、逆に今の生活で自宅中心で使うiPadは指紋認証だと顔認証よりも指を当てる手間があって手間。iPhoneは側面指紋認証、iPadは顔認証の方が現在のライフスタイルには合っているだろうなとは感じます。マスク社会になって2年目の製品にも関わらず、世界の生活様式に反している生体認証のままなのは気になるポイントです。
iPhone 13 Pro Max総評:動画撮影、ゲーム用途では唯一無二
昨年のiPhone 12 Pro Maxの時点で「最強のモバイルゲーミングマシン」だと感じていましたが、今回のiPhone 13 Pro MaxはA15 Bionicの採用によって余裕が格段にアップし、より完成度が高められました。現時点で最も重量級のゲームを最も重量級の設定で画面収録まで行えるポテンシャルはシンプルに素晴らしく、プレイだけでなくゲーム配信などにも安心して使えるパワフルなスマートフォンです。
カメラに関しては以前からiPhoneの強みであった手ブレ補正がシネマティックモードと組み合わさり、動画撮影の面白みは格段にアップ。シネマティックモードは1080p/30fpsという制約があるものの思ったより破綻が少なく、しっかり作り込めばとても印象的な映像がiPhoneだけで撮れる高いポテンシャルを感じました。
一方で写真撮影はマクロという武器は手に入れたものの、正直あまり楽しくないカメラでした。望遠→広角、広角→超広角マクロと被写体との距離で勝手にレンズが切り替わって思った通りの写真が撮れず、画像処理も違和感があり、自分の期待する動作とiPhoneの実際の動作に乖離がある印象を強く受けました。これは先日レビューしたXperia 1 IIIの真逆の感想で、4つの画角を手動でキッチリ切り替えて作り込んでいくXperiaの人馬一体感と比べるとiPhoneは開発途上の自動運転のよう。
「iPhoneが賢く判断して最適な画を出していく」という方向性は動画も写真も共通して感じましたが、なんとかうまく噛み合ったのが動画撮影、理想に届かなかったのが写真撮影といったところでしょうか。動画に関しては、シネマティックモードに「後から手動で編集できる」という人間の手が入れられる余地がちゃんとあったのが大きいですが。
余裕たっぷりのA15 Bionicの性能、感想を書く事も忘れそうなほど減る気配の無い巨大なバッテリー、最高峰の120Hzの6.7インチディスプレイ、ハードウェアとしては卓越した最強マシーンに仕上がっています。求める物が「全部スマホ任せでいい感じに」であれば適任かもしれませんが、個人的には愛用中のパープルのiPhone 12 miniの愛機としての一体感には及ばず。
ロック画面からさっと起動できる純正カメラアプリに難があるためしばらくは「ポケットから最初に出せるメイン機」の座に就けそうにはないですが、主にレンズの切り替えが意図せぬタイミングで介入する所に起因するため、秋に予定されていると噂のカメラ改善のソフトウェアアップデートまではサードパーティのカメラアプリで乗り切る機種になりそうです。
契約無しのSIMフリーモデルはApple直販やAmazon、家電量販店のオンラインストアなどでも購入可能です。
今回紹介したiPhone 13 Pro Maxを含む各モデルを比較したiPhoneのモデルの選び方は別記事にてまとめています。